夫と私の母との
すごく楽しかった旅行の事を
書こうとしたのに、
なぜ昔の事を
書いているのか
我ながら謎です。


お盆も近いので
このブログを読んでいる
誰かの為に、
きっと私は今これを書く
流れなのでしょうね。


夫の母は五人姉妹です。
一番上の姉は
ポリオの後遺症で
少し手足に麻痺があり、
婚期が遅れましたが
新聞記者の方の後添いとして
東京に嫁ぎ、
先妻の二人のお子さんと
自分の子供とを育てました。


夫の母は
習い事の講師として
上京すると
一番上の姉の家を
訪問するので、
私も時々ご一緒していました。
伯母がお歳を召して
入院した時も
二人でお見舞いに行きました。


その方が亡くなったとの
知らせを受けて、
夫の母と
夫の母の二番目の姉の配偶者
(夫の叔父)が
我が家に泊まる事に
なりました。


夫の父と
夫の母の二番目の姉は
仮病ではなく、
その時は本当に足腰が悪くて
欠席しました。


夫の叔父と夫の母を
同じ和室に寝せる訳には
いかないので、
夫と夫の叔父が和室に寝て
私と夫の母が私達の寝室で
寝ることになりました。


夫の母が我が家で
荷物を解いた時に
ハンガーを渡すと、
母はちゃんとした喪服を出して
ハンガーに掛けました。
「喪服持ってるんだ…。
あれはやっぱり
夫の父の妹達への
嫌がらせだったのかなぁ…。」と
私は思いましたが
ほっとしました。


母を見ると、
ごつい宝石のついた指輪を
たくさんつけていました。


私はみんなの前で
「あ❗️お母さん、
お葬式で指輪を外すのを
忘れたら大変❗️
帰るときに
うちに忘れて帰らないように
これに入れて、
今のうちから
鞄にしまっておいた方が
いいですよ❗️

私も今のうちに
外しておかなくちゃ❗️」

と言って、
アクセサリーを入れる布の袋を
母に渡し、
自分もその場で
アクセサリーを外して
宝石箱にしまいました。


母は「そうね。」と
素直に従って、
あっさり指輪を全部外して
鞄にしまいました。


長年の問題が
秒で解決した~❗️
やった~❗️と
その時は思いました。
爆笑

当日は皆で早く起きて、
夫の叔父と夫の母と
私達夫婦の四人で
電車に乗って
葬儀場に向かいました。


平日なので
電車は混んでいました。
母と叔父を座らせて
私と夫が吊り革に
掴まった時、
大粒のダイヤのピアスが
母の耳についているのが
髪の間から見えました。


前に見たダイヤのピアスとは
違うものでした。
周囲に黒い漆塗りのような
太い縁取りがあるものでした。


ダイヤの透明な清らかさが台無しな
禍禍しいデザインで、
「黒なら何でもいいと
思ってるのかな…。」と
落胆しました。


私はなんとも言えない
気持ちになり、
かぁっと
頭に血が上りました。
「お母さん、
どうしてなの…❔」と
その場にしゃがみたくなりました。


でも気を取り直して
また明るい調子で
「あ❗️お母さん、
ピアス外すの
忘れてるよ❗️」と
声を掛けました。


夫の母は、
「あ、これはいいのよ。
私は全然気にしないから。」と
答えました。


「あんたが気にしなくても、
一緒に行くこっちは
大いに気にするんじゃー❗️」と
私は冷静さを失いそうに
なりました。ムキー


私は夫の母の目を見ながら
今度は小さい声で
他の人に聞こえないように、
ゆっくり言いました。


「お母さんは気にしなくても、
そんなに派手な宝石をつけて
伯母さんのお葬式に行ったら、
伯父さんの親戚の方達に
『○子さん(伯母)の
妹さんは
一体どういうつもりかしら❔』と
思われて、
●●さん(伯父の先妻の息子)や
○○君(伯母の実の息子)を
困らせてしまいますよ。
そのピアスは外しませんか❔」と
私はなおも
食い下がりました。


しばらく沈黙が続いた後、
夫の母は
「そうね。」と言って
ピアスを外して
電車の中で
袋にしまいました。


夫と夫の叔父は
この一連のやり取りの間
一言も話さず、
その後もこの事について
何も言いませんでした。


葬儀場に着くと、
伯父の親族達の女性は
年配の方も若い方も
洋装の喪服で揃え、
お揃いで誂えたような
同じ粒の大きさ、同じ色味の
真珠のネックレスを
一様につけていました。
弔問客を迎える為に
遺族が門前に並んでいる様子は
皆が整っていて、
清々しくて
学校の卒業式のようでした。


伯母と母は10歳以上
歳が離れていました。
伯父は既に亡くなっており
伯母は入院が長く
大往生でした。
遺族の方々は
心の準備もすべて
整っていたのでしょう。
「伯父さんの親族達は
ドレスコードの相談が
行き届いてるんだな。
誰もばたばたしていない。
きちんとした方達なんだな。」と
思いました。


「お母さんにピアスを外してもらえて
本当によかった…。」と
胸を撫で下ろしました。


その後、夫の両親と
冠婚葬祭に出る機会は
まだありませんが、
もし今後も何かあったら
大仰にならず
さらっと指摘しようと
思います。