「食虫植物ウツボカズラ」-5(ウツボカズラご飯)
 
次に変わり者のアリとウツボカズラの関係を見てみます。
ウツボカズラの全てを知りたい山口さんは、新しいツボを見つけると、
消化液の成分を自分の舌でも確かめたいと飲んでしまいました。大丈夫なんでしょうか。
 
「味はほとんどないですね。」
 
フタが開く前のウツボカズラなら消化液を飲んでも、ほとんど大丈夫だといいます。
その昔、ジャングルの探検家たちは、貴重な水分として飲まれていたようです。
今でも地元では、ウツボカズラが料理に使われていると聞き、山口さんは訪ねてみることにしました。
料理自慢のシェフ、バレンさんです。
 
「ウツボカズラの鮮度が大切なの。」
 
ウツボカズラのほかに用意されたものは、モチゴメとココナツミルク、砂糖。
これらをウツボカズラの中に入れ、蒸し器に並べて蒸すこと1時間。
ふっくらとウツボカズラご飯の出来上がりです。
 
「すごく美味しい、さっぱり感があって…。」
「ウツボカズラを使うとココナツの水分がうまく回ってすごく美味しくできます。」
 
お祭りやお祝いに振舞われるご馳走なのだそうです。

 

「食虫植物ウツボカズラ」-4(貧栄養地に生き延びる作戦)
 
「虫を取ったりトイレになったり、彼らってすごいですね。
  しかし、どうしてこんなに手の込んだことをしなければいけないんですか?。
  植物なんだから、普通に根っこから栄養を取っていればいいじゃないですか。」
 
そう思いますよね。ところがそうはいかないんです。こちらは山口さんが訪れたボルネオ西部の森です。
地元の人たちはイネが育たないほど栄養分の乏しい場所といっています。
 
「ジャングルだし、そうは見えないんですけど。」
 
ではこのウツボカズラの生えている場所をちょっと掘ってみましょう。
 
「なんだか白っぽいですね。」
 
ほとんど砂なんです。土の中に砂が多いと落ち葉が落ちて分解された栄養が、
簡単に地中深くに流されてしまいます。とてもやせた土地になってしまうんです。
生えている木を見てください。ほとんどが細い木ばかりでしょ。
ボルネオの一般的な熱帯雨林と比べてみると、木の太さは段違いです。
ウツボカズラは、こうした栄養の乏しい土地に生えるために、
あの手この手を使って、栄養を取る方法を発達させたのです。
 
「栄養が乏しい土地でもツボを使って大繁栄したんですね。」

 

「食虫植物ウツボカズラ」-3(ツボは葉っぱの先が変化したもの)
 
それにしてもウツボカズラって変な形をしていますが、このツボは一体何なのでしょうか。
ツボの下から延びる部分をたどってみると、葉っぱにつながっていました。
実はウツボカズラのツボは、葉っぱの先が変化してできたものなのです。
こちらの葉っぱは、先端にツボがついていませんが、葉の延びたところに小さなコブがあります。
これがツボの元です。数週間か数カ月かけて膨らみ、ツボの形になっていきます。
充分膨らみ、虫をつかまえる準備ができるとフタが開きます。
葉の先からこんなに複雑なものができるとは、植物って不思議です。
獲物をつかまえるためにウツボカズラは、実に多彩な作戦を繰り広げます。
 
こちらは「グラシリス」という種類です。特徴は細長いツボをふさぐ大きなフタです。
これが狩りで重要な働きをします。アリがやってきまいた。
でもフタの方には行かず、盛んにフタの裏を探っています。この種類はフタの裏から多くのミツが出るのです。
夢中でミツをなめているアリは、もう「グラシリス」の作戦にはまっています。
「グラシリス」が待っていたのは雨でした。フタに雨粒がポトリ。あ、アリが消えました。
フタに雨粒が当たる衝撃で、アリをツボに落とす仕掛けなのです。
獲物を捕るのに雨まで利用していたのです。
 
直径5センチ程の丸いツボ「アンプラリア」のフタは随分小さいです。
真上に向けてツボを大きく開いています。何かが落ちてきました。またポトリ。
ツボに入ったのは落ち葉です。落ち葉は「アンプラリア」の大好物。
口を開けて受け止めやすくしています。虫だけではなく他の植物まで取り込む作戦です。
 
少し標高の高いところには、さらに変わった作戦を持つものがいます。
世界最大のウツボカズラ「ラジャ」です。ツボの大きさは40センチにも達します。
やってきたのはボルネオ島にだけ棲む小動物ツパイです。お目当てはフタのミツで夢中でなめています。
と、その時、ツパイはウツボカズラをトイレに使ってしまいました。
でも大丈夫、それこそは「ラジャ」の作戦です。栄養豊富な動物の排泄物を利用出来るのです。
 
個性的なウツボカズラたちですが、ボルネオ島には世界最多の36種類が見られます。
ここは植物が作り出す知恵を観察できる特別な場所なのです。