「宮脇昭先生」-5(森とは競争、共生、我慢の社会)
 
「森から出てきたんですよ。むかし人間は獣に追われて森の中を逃げ回っていたんです。
  例えば、スペインもイギリスも大航海時代があって、船を作るために木を切り尽くしたんです。」
 
あるいは家畜の放牧によって?。
「ヒツジやブタなどはみんな下草を食べてしまう。話はどんどん複雑になるんですが、
  森というのは非常に複雑な構成をしていて、下の方に下草も低木も生えています。
  で、下草は必要ないかというと、下草があるから低木があって、そして高い木があるんです。
  1番高い木も下草がないとだめなんです。」
 
ドイツでは森の下にもう一つの森があるといいますね。
一見邪魔者に見える下草や低木は高木を支えています。森とは高木、亜高木、低木、下草、土、
そして地中にはバクテリアがすみ、いろいろな生き物が、いがみ合いながらも我慢しながら生きている。
これが本当の生物社会の本当の姿です。
 
「本当の森とはいがみ合いながら、競争しながら、皆少しずつ我慢しながらともに生きているのが
  本当の自然の姿です。旦那ともそんな関係がいいですよ。いろんな試練が混ざり合いながら…。」
 
それが自然だという、その自然がどんなところに残っているかというと、
先生が先ほどチラッといわれましたが、日本では鎮守の森が1番残っている可能性が高いんです。

 

「宮脇昭先生」-4(本来の森が0.06%に)
 
ここにこういう資料があるんですが、東日本復興会議御中ということで宮脇さんが
『津波から命を守る森のプロジェクト』というのを提出されました。
この宮脇方式による植樹というのは一種独特の方式で、数年前には学会からも市民からも
冷たくあしらわれたんですけれど、それはどういうことかというと、
その土地には土地に最も適している木があるはずだ。
これを潜在自然植生と言い、これはドイツのチクセン先生に学んだものですが、
もしこの土地で人間が活動をやめたとしたら、その土地が持っている力、一番合っている植生、
どんな草や木々が生えてくるか決まっているはずである。
もし人間がいなかったら、最も繁茂している草木があるはずだ。と訴えたのはチクセン先生なのですが、
それで森を作れば強い森ができるということなんですね。
 
「そうなんですよ、大学の生態学者よりもよくご存じで…。上っ面なことはみんな分かりますけど、
  本当のことが分からない。化粧も大事だけれど中身が大事なんですね。
  自然の森、もし人間が危機に瀕した時、自然の森が支えてくれる。
  日本の国土を支えてくれる98%の森が地域の森だったんです。
  今1憶2000万人が暮らしている92.8%の土地が、シイ、タブ、カシの照葉樹林からなる土地なんです。
  それは60年足で調べた結果で、その森は0.06%しか本来の森が残っていなかったんです。」
 
その本来の森は消え、人間が勝手に作った植林の森で、本来そこに生えるべき森ではない。
先生がおっしゃるには、オランウータンなどから人間に分岐したのは、
500万年前が定説になっているけど、そのうち499万年は、森の中で生きてきた。
 
「わ~、久米さん、よく読んでくれてますね。」
僕は読むのが趣味ですから。残りの1万年はなんなんですか?。

 

「宮脇昭先生」-3(命を守ったシイ、タブ、カシ)
 
六輔さんが下町大空襲の話しをされていて、被服廠跡地辺りへ逃げた人々は、ほとんど亡くならたようですね。
 
「4万人逃げて3万8000人がなくなったようです。国会図書館にはその記録があります。
  一方2~3キロ離れた今の清澄公園を調査しましたが、わずか2~3メートルの幅でシイ、タブ、
  カシが植えられていましたが、ここへ逃げ込んだ2万人の人々は誰一人死なずにすんだ。
  この木々の壁が守ってくれたんです。」
 
ほんの少ししか離れていなかったのに、シイ、タブ、カシの植え込みがあったために、
1人も亡くなっていなかったんですね。いかに強い木かということが分かります。
 
「あの阪神淡路大震災の時も調査しましたが…。」
あの木、ああ、カシの木ですか。あの木のお陰で火の手を免れた。
 
「はい、東日本大震災の時、ちょうどインドネシアの森づくりの植樹祭に行っていたんですが、
  ローカルの町のテレビであの惨事を見ていて、どこの国かと思ったらヤパンと聞いてびっくり。」
 
あの映像をインドネシアでご覧になったんですか。
「はい、すぐに帰ってきて現地調査を3回行いましたが、新日鉄釜石の建物はだいぶ破壊されたけど、
  シイ、タブ、カシの森が共に残っていた。南三陸町の町長も大変熱心ですが、
  その斜面は大津波が襲ってだめになっていました。役場もみんな破壊されているわけですが、
  大きなタブノキはちゃんと残っていて、ここで津波が止まっていたわけです。」
 
針葉樹というのがありますね。マツとかスギとか。この針葉樹というのは根が浅いそうですね。
シイ、タブ、カシという照葉樹は深根性という性質がある。直根性で深く真っすぐ根を伸ばす。
マツ林が意外にだめなのは、根が浅いからなんです。
先の新日鉄とかイオンとかは、宮脇方式の森づくりにずっと参加しておられたので無事でした。