「宮脇昭先生」-11(終)(本物とは厳しい環境に耐えて長持ちするもの)
 
最近港区の街路樹にアメリカハナミズキを植えているんですよ。
 
「あれはアメリカではドッグウッドというんです。イヌとかネコとか名の付く木はろくな木ではない。」
 
見かけはまっすぐできれいな花が咲くんです。でもあんな木はニセアカシアと同じで、
照葉樹を植えてくれたらどんなにいいか。
 
「いざというときは、深根直根に根が延びて災害から守ってくれる木を、
  人間しか持っていない知性と感性で見極め、偽物とわかって使うならまだしも、
  間違って使うからいろいろと問題が出てくる。」
 
ニセアカシアというのは、ロッキー山脈に生えているのをヨーロッパ人が見つけ植えたんですけど、
アメリカハナミズキにしても、見かけだけいい木を植えた公園や町の緑化をしている人たちは、
芝生の公園が美しいと思っている人たちと同じなんです。
むかしの森に棲んでいた人たちのことを考えて街路樹だとか公園を作って欲しいと思います。
 
「しかし、むかしに戻って、これから9000年持つ、次の大氷河期が来る時まで持つような、
  現在の潜在自然植生の木を、明日も明後日も、温暖化がやってきても
  十分耐える本物の森を作っていただきたい。
  これはぜひ行政が命を守る責任を持ってやっていただきたい。
  やるかやらないかそれが非常に重要なことで、1億人以上の命を守ること。
  これは世界の観光資源にもなることです。多くの人たちの手で植えてきたアマゾンやボルネオや
  ケニアの森の人々が参考にできるような森づくりをしたい。
  日本は、世界に誇る資源は少ないですが、この不幸な東日本大震災を機に、
  何100キロメートルにもわたる命の森。森の万里の長城が出来たら、
  日本からアジアへ、そして世界へと発信出来たら。
  災害国日本、これからもやってくるであろう大災害のために、日本が今1番できること。
  1番誇れること。今やらなかったら後世にどう言い訳するのか。
  これは行政、それから社会も、私たち一人ひとりが、明日のために今できる命の森づくりに
  ぜひ参加していただきたい。久米さん、これからも繰り返し言ってください。」
 
持ってきていただいたムギワラボウシ。これはお百姓さんが作ったもので、
先生はこれをかぶって世界中を回られたんですね。
横浜国大の名誉教授生態学者の宮脇昭先生のお話しをお聞きました。
 
(おわり)

 

「宮脇昭先生」-10(芝生の公園は荒野の景観)
 
里山のことを言いますけれど、里山というのは薪を作るために人間が作ったものですから、
次々に木を刈らないと…。
 
「20年たつと伐採。当時化学肥料がないですから、木の葉や下草を集めて田んぼに入れた。
  そのようにして人が手を入れて持続していったのが里山の雑木林で、
  管理が出来れば、これも多様性に富んだ森となりますけど、管理が出来なけらば、
  草ぼうぼうの大変荒れた山になります。」
 
もう一つ貴重な話をうかがいたいと思うんですけど、先ほどのお話しでヨーロッパなどで、
ヒツジなどの放牧で、みんな下草を食べちゃって木も枯れてしまって、
イギリスのヒースが広がっている。それで日本の公園を作ったときに、芝生の公園を作る。
木がポツンと植わっているような…。それはだめになった森の残骸を真似て公園に取り入れたりする。
 
「あれは荒野景観なんです。本来のアーバンフォレスト、緑豊かな森の公園。日本人はこの方4000年、
  森を開発してきたけど、人々の住める場所に必ず木を植え、故郷の森を作ってきたわけです。
  偽物を植えたかもしれないけれど、台風や地震や害虫によって淘汰されていった。」
 
日本は芝生の公園をすぐに作っちゃう。あれはだめになった森の残骸を見本にして
作っているといっていい。
 
「しかも永遠に管理がいりますし、緑の表面積は、森の30分の1でしかない。防音機能も、
  集塵機能も空気の浄化も水質浄化機能もない。
  いわゆる炭素の固定機能は、何100分の1しかないわけです。」

 

「宮脇昭先生」-9(自然界から学んだ宮脇方式)
 
「競争しながら、ミスト効果といいますが、少し我慢しながら共に生きる。
  それは植物社会のおきてなんです。まず根が出てミスト効果で共に生きます。
  次に自然淘汰が起きます。高木、亜高木、低木、下草、これがワンセット。
  密植混植で枯れるのではないか。これが大事なんです。無駄はありません。
  負けたものは倒れ、分解されて養分になる。これは森を支える養分となるのであって、
  この自然界には邪魔者はないんです。」
 
この宮脇方式は何かというと、密植するとみんなが競争するんです。僕はテレビを見ていて、
こんなに近づけて植えたらだめだろうと思ったんです。でもくっつけて植えるとみんな競争する。
勝った負けたで、負けた方は肥やしになるんですけど…。
 
「負けたといわないでください。それは役目をはたして肥やしになっているんですから…。」
 
宮脇方式は何がいいかというと、2~3年はちょっと手入れがいるんですが、
後は放っておけばいいんです。そうすれば木は必死に競争して共生していくんです。
 
「手入れはいらないんですか?。」
「手入れがいるのは偽物で、土地に適したものではないんです。化粧はいらないんです。」
「だってむかしは人間がいなかったんだから。」
「ああそうか。」
「森に生きている人間は、かえっていない方がいいんですよ。」
「木を植えて3~5年と管理が必要なものは偽物で、土地にあったものではないんです。」