「ハチクマとミツバチ」-3(最強のオオミツバチ)
 
取材班は、巣の近くで撮影拠点を作ることにしました。ハチクマに警戒されないように植物でカムフラージュ。
ハチクマはどのようにオオミツバチを襲うのか、準備は万端、あとは待つだけです。
 
1週間後動きがありました。ハチクマが近づいてきたのです。巣を狙っています。
あ、巣をかすめました。いっせいに飛び回るオオミツバチ。
巣に接近したハチクマを激しく威嚇しています。その様子をうかがうハチクマ。
相手の勢いをうかがっているようです。再び行きました。狙いをつけると翼を縮め急降下。
ところが急旋回して巣とは反対方向に飛んでいきます。一体どうしたのでしょう。
ハチクマのすぐ後ろを1匹のハチが追いかけています。まさか、この1匹に恐れをなしたのでしょうか。
そのまま去っていきました。
 
「ハチクマは固い羽毛に覆われているのに、なぜミツバチに追われて簡単に逃げてしまうんでしょうか。」
 
ところがオオミツバチにはほかのハチにはない恐ろしい性質があるんです。
それを確かめるために巣に近づいてみることにしました。安全のために防護服を着用します。
小型カメラを棒の先に付けて撮影します。ハチを刺激しないように慎重に巣に近づいていきます。
 
「これなんですか?、不気味な音がしますが…。」
 
これはオオミツバチたちが体を震わせて音を出し、集団で威嚇しているんです。
音はどんどん大きくなっていきます。それでも逃げずに撮影を続けていると、一斉攻撃が始まりました。
1匹が危険を知らせる化学物質を出すと、それに反応したハチが次々に襲い掛かります。
カメらにたくさんのハチが…。いったん離れることにしました。
しかし、離れても攻撃の収まる気配がありません。取材班は逃げ続けました。
ところが100メートル離れても15分の間、攻撃は続きました。
時には2キロ以上にわたって執拗に追いかけるといいます。これほど執拗に追いかけるハチは他にいません。
毒針も特大なのでハチクマもうかうか手が出せないのです。
 
ここまでオオミツバチはなぜしつこいかというと、それはこの独特な巣と関係があります。
二ホンミツバチの巣は、木のうろの中に作り幼虫を育てたりミツを溜めたりします。
木のうろなら天敵のクマなどに巣が襲われることがないからです。
ところがオオミツバチは、木の幹にむき出しの巣を作ります。
うろを探す必要がない反面、目立ってしまうため、天敵に襲われやすい欠点があります。
そこでハタラキバチ自らが城壁になって巣を守る作戦を編み出したのです。
ハチの仲間で最強といわれる凶暴性は、むき出しの巣を守るため長い間で身につけた方法だと考えられます。
 
別の場所で撮影された映像ですが、ハチクマがオオミツバチの大群に追われています。
「オオミツバチは、ハチクマにとって最強の敵なんですね。」

 

「ハチクマとミツバチ」-2(タイ南部でオオミツバチを狙う)
 
9月、ハチクマの渡りの季節です。子育てを終え、越冬地の東南アジアに向かいます。
渡った先でハチクマはどんなハチを食べていたのかは謎でした。
その手掛かりを見つけたのは、慶応大学の樋口博士です。
ハチクマに発信機をつけ、渡りの詳細ルートを解明しました。
博士が注目したのは、春と秋との渡りの違いでした。
 
秋、日本を出発したハチクマは、休むことなく南下します。
1~2ヶ月かけて、インドネシアやフィリピンなどの越冬地に渡ります。
そこで3ヶ月ほど過ごすと渡りを再開。日本へ戻っていきます。しかし、その途中に謎がありました。
1週間から1ヶ月ほど、ハチクマが止まるところがあったのです。
ハチクマは、ここで重要なハチを食べているに違いないと博士は考えていました。
 
「そこでたらふく食べ、その後あまり食べなくても十分体力をつけているのではないかと考えました。」
 
ハチクマはどんなハチを食べているのか。3月、タイの南部を訪ねました。
春の渡りの途中、多くのハチクマが止まる場所です。
 
早速有力な情報がありました。ハチミツ農家の人が、ハチクマがハチの巣を襲う様子を目撃したのです。
「ハチクマは上からじっと様子を見ていて、オオミツバチの巣を目がけて急降下しました。」
 
オオミツバチとは、東南アジアなどに棲む世界最大級のミツバチです。
体長2センチほどで、二ホンミツバチと比べるといかに大きいかが分かります。
毒針の大きさも圧倒的で、毒の量も3倍近くになります。
 
農家の人に巣に案内してもらいました。木の幹に大きな巣がぶら下がっています。
幅は1.5メートルほど。よく見ると表面で何か動いています。
何とオオミツバチがびっしりと巣に張り付いていました。その数最大で5万匹。
巣では幼虫が育てられ、ミツがたっぷりと蓄えられています。ハチクマの獲物としては不足はありません。

 

「ハチクマとオオミツバチ」-1(ハチが主食の珍しい鳥)
 
ハチが主食という珍しい鳥ハチクマ。渡ってきたハチクマは、日本全国で子育てをします。
森の中でハチクマの巣を見つけました。ヒナが2羽います。孵化して1週間ほどでしょうか。
もう1羽の親鳥がやってきました。ハチの巣を運んできました。
親鳥は巣ごと幼虫を取ってきてヒナに与えます。幼虫はタンパク質たっぷりの栄養満点のエサ。
ある調査では、親鳥が運ぶエサのうち、3分の2がハチだったそうです。
恐ろしいハチの巣をどのように掘り出すのでしょうか。
 
地面に降りたハチクマは、足で穴を掘っています。この穴の中に目的のクロスズメバチがいます。
地中に巣をつくるハチです。たくさんのクロスズメバチがハチクマを取り囲みました。
ところがハチクマは全く気にする様子がありません。穴に体を入れて大きなハチの巣を取り出しました。
 
こちらはハチクマよりもはるかに大きなツキノワグマで、やはりクロスズメバチを襲っています。
クマはハチの巣が大好物。しかし、クマはクロスズメバチに刺されて地面に体をこすりつけ、
ハチを追い払おうとしています。ハチは攻撃をやめません。毛の間に入り込み毒針で刺し続けます。
その度にクマは転げまわります。とうとう逃げ出してしまいました。
 
一方、ハチクマは痛がる素振りを見せません。顔をよく見るとウロコのような硬い羽毛が
びっしり生えていて、簡単に毒針は通せません。
その独特な体で他の動物がまねのできない方法でハチの巣を独占しているのです。
 
たっぷりと栄養満点のハチの子を食べて育ったヒナは、孵化してから40日ほどで巣立ちを迎えます。