「もう一つの人類」-11(終)(フローレス島を襲った大噴火)
 
フローレス島にひっそりと暮らしていたホモフロレシエンシス。
その痕跡はある時点でぷっつりと途絶えます。洞窟の地下4メートルに白い層が見えます。
分厚い火山灰の層です。1万6000年前に大規模な火山の噴火があったのです。
この層の上からは、ホモフロレシエンシスに関する痕跡は何も見つかりません。
この時の火山の噴火で、ホモフロレシエンシスは全滅したものと考えられています。
そして今長い眠りから覚めたホモフロレシエンシス。人類がいかに多様な進化を歩んできたのか。
私たちに少しづつ語りかけてきているのです。
 
「人類学の発掘だって何十年もあちこちでやってきているけど、分からなかったわけですよね。
  だから長く続けることが大事で、結果が1~2年で出なくても、何十年と続けていくことで、
  大発見につながるということは充分あると思います。人類学や科学の知識というのは、
  まだまだ発展していく可能性があります。
  これからもどんどん出てくる可能性もあるかもしれません。そういうことを感じました。」
 
リアン・ブアの洞窟では、今でも発掘が続いています。
この日、ステゴドンの大きな骨の塊が発見されました。
研究チームはフローレス島だけではなく、周辺の島にも研究の範囲を広げようとしています。
ホモフロレシエンシスとはいったい何者か。謎の追及はこれからも続いていくようです。
 
(おわり)

 

「もう一つの人類」-10(脳のサイズと優れた能力との関係)
 
「あんな小さな脳であんな精巧な石器を作っていたんですね。これはどういうことなんですかね。」
「もちろんホモサピエンスが作る石器よりも原始的なわけですが、
  かなり計画的に一定の方向に作って、鋭いエッジを作っていくわけですよね。
  それまでの人類学の常識からすれば考えられないわけです。
  ですからあれだけの脳のサイズで持って石器を作るには、素晴らしい能力を発揮する。
  そのシステムがあったんだと思うですが、それが分からないんです。」
「これから分かってくるんですか?。脳が小さいけれども作ってしまうことを。」
「それは大きな謎です。私たちは何のために脳が大きくなったのか。そういう大きな問題があるわけです。
  石器を作るためには、大きな脳容積は必要ではないかもしれない。
  我々は悪知恵を働かすためには、大きな脳が必要なのかもしれない。でも別な要素かもしれないですね。
  根本的なことを考え直す大きなヒントを与えてくれたということですね。」
 
「とても優秀なハンターだったんですね。でも脳はとても小さいのにハンターとしての能力が
  優れていたということに疑問を感じませんか。」
「私たちの祖先も縄文時代が始まる前は、ホモフロレシエンシスと同じ生活をしていたわけですよね。
  でもホモサピエンスは3倍も脳が大きかった。なんでなんだろうと思いますね。」
「私たち人間は何で脳を大きくしてきたのか。大問題が持ち上がるわけです。」
「馬場先生も私たちが脳を大きくしたのは、悪知恵を働かせるためだけではなく、
  他に何かあるのではないかとおっしゃっていましたが、
  今のところはっきり答えがないということですが、そんなところにちょっぴりロマンを感じます。」

 

「もう一つの人類」-9(小さな脳に秘められた驚異の脳)
 
ホモフロレシエンシスの次なる謎、それは小さな脳に秘められた驚異の脳です。
500ミリリットルという小さな脳では考えられない、
驚異的な能力を持っていたことが分かってきたのです。
1万7000年前の地層から、ホモフロレシエンシスの骨と一緒に、たくさんの石器が見つかりました。
これらの石器は明らかに目的をもって石を割ったものだと分かります。
中にはナイフのような鋭利なものまであります。
リアン・ブアでは、こうした精巧な石器が数多く見つかっています。
 
「この石器は、石を細かく割って尖らせています。これは獲物、例えばステゴドンやコモドドラゴン、
  ネズミなどの皮をはぎ、肉を食べた石器だと思われます。」
 
写真の中にV字型の溝のある骨が写っています。
これはステゴドンのあごの骨ですが絶滅したゾウです。
フローレス島にはかつてウシほどの小型のステゴドンが生息していました。
ステゴドンの背骨には何本もの傷が残っています。石器で肉をそぎ落した時に付いた傷だと思われます。
こちらはコモドドラゴンの骨や歯です。やはり石器と同じ地層から見つかっています。
体長は3メートルにもなるどう猛なコモドドラゴン。ホモフロレシエンシスは、その肉を食べていたと思われます。
石器を作って器用に使いこなし、狩りをして動物の肉を食べていました。
ホモフロレシエンシスは、チンパンジーほどの小さな脳しか持たない彼らが、
いわば優秀なハンターであったと考えられます。