こんにちは。本日もよろしくお願いいたします。
気づいたら2月が終わりましたね。早すぎます。
光陰矢の如しと言いますが、矢どころの話じゃありませんね。恐ろしい。
さて、今回はタイトルの通り3Dデッサンモデルについてです。
最近はデジタルイラストが主流になりつつあり、それに伴って3Dデッサンモデルを活用する人も増えてきました。かくいう自分もたまに活用しています。
ただ、SNSやネット上では度々
「3Dモデルとかズルい」
「3Dモデルを使って描いた絵は本物じゃない」
という風に、3Dモデルを使用して絵を描くことに対して強い嫌悪感・憤りを露わにしている人が見受けられます。
その感覚・心情はとてもよく分かりますし理解しております。でも、できれば誰かに攻撃する前に立ち止まってほしいものです。
そういうことで、今回は3Dデッサンモデルは果たして本当に”ズルい”のか?という点について、色々まとめていきたいと思います。
※あくまで個人的な意見・感想なので、参考程度に捉えておいてください。
そもそも3Dデッサンモデルとは?
そもそも、皆が言う”3Dデッサンモデル(人形)”とは一体何なのでしょうか?
「デッサン人形」といえば、木製のデッサン人形を思い浮かべるかと思います。
3Dデッサンモデルというのは、その木製のデッサン人形を3Dデジタル化し、自由自在に動かせるソフト・ツールです。
アナログの木製デッサン人形とは違い、より人間に近い見た目で関節の可動域も広く、柔らかで自然なポーズを取らせることができます。
前回こちらのブログで「30秒ドローイング」を紹介した際に、ポーズマニアックスなどを参考に載せましたが、あのモデル達を自分好みに自由に動かせる、とイメージしてもらえれば分かりやすいかと思います。
詳しくは下記記事を参考にしてください
現代における3Dデッサンモデルは、技術の発展に伴って比較的安価でかつポピュラーに使用できるようになっており、デジタルイラスト作成ソフトである「CLIP STUDIO」でも、3Dモデルを利用することが可能です。
ポーズに悩んだときや難しい画角の絵を描く際には、とても心強いツールとなっています。
3Dデッサンモデル=ズルい?その心境は?
より高度なイラストを描きたい!と思う人にとって、3Dデッサンモデルは便利なツールですが、使用していると「ズルい」という人が稀に出てきます。
「3Dデッサンモデル=ズルい」という人は、一体どういう感情を抱えているのでしょうか?
人は、物事やルールに対して不公平・不平等のような理不尽さを感じた際に「ズルい」と思う生き物です。
正当なルールに従わずに不正を行ったり、またはルール自体が特定の人以外を故意に排除するようなものであったりする場合は、この「ズルい」という主張が成立します。
ただ一方で、不正とは関係なく「自分が持っていない物や環境を相手が持っている」という状況に対しても「ズルい」という人もいます。
おそらく、3Dデッサンモデルに対して「ズルい」という感情を抱いている人の心理は、こちらに近いのではないでしょうか。
・自分は3Dデッサンモデルなんか使わず苦労してるのに楽しやがって
・自分は思うように描けないのに、あいつは3Dデッサンモデルを使って簡単に描いてる
こういった感情が総じて「ズルい」という批判に繋がっているのかもしれませんね。
また、これとは別に、3Dデッサンモデルを持てる・使える環境であるにも関わらず、3Dデッサンモデルを「ズルい」という人もいます。
これも憶測ではありますが、こちらに関しては「絵描きとしてのプライド」で「ズルい」と言っている傾向が強いように思います。
古来より絵描きは「人物デッサン」「静物デッサン」などの、生身でリアルな実在する被写体をモデルとしてきました。
さらに、絵を描く人の中には「上手い絵描きは便利ツールに頼らないものだ」という考え方を持つ人もたくさんいます。
実際、プロの方が資料なしにサラサラっとイラストを描く様子を見ると「絵が上手い人って何も見なくてもペン一本で上手いんだ!」って思いますよね。
そういった「理想の絵師像」のレベルが高い人からすれば、デジタルで且つ自分の思うように自由にポーズを動かせる3Dデッサンモデルというのは「ズル」…というより「バグやチート」で、それを使って描かれた絵は「偽物の功績」と感じてしまうのかもしれません。
まぁ要するに…
自分は3Dデッサンモデルなんて使わなくても上手いんだ!
そんなツールを使ってるのはただのチート!何も使ってない自分のほうがもっとすごい!
ということですね。
他にも色々な感情があるかと思いますが、
自分が頑張って積み上げてきたものを否定された
という感情が強くなって「ズルい」という言葉として表れてしまうのかもしれませんね。
とはいえ、最初以外の感情は「羨ましい」「悔しい」という自分主体の言葉に置き換えることができ、他責に近い「ズルい」とは似て非なるものです。
「ズルいな」と思うこと自体は否定しませんが、その感情を3Dデッサンモデルや、ましてそれを使用している人に対してぶつけるのは、あまりいいものではない…ということだけは覚えておいてほしいと思います。
3Dデッサンモデルのメリット・デメリット
「ズルい」という人の心理はわかりましたが、では実際3Dデッサンモデルを使ったらズルになるか…と言われたら、自分は決してズルとは思いません。
3Dデッサンモデルを利用することで、ただ自力で絵を描くよりも良い点は沢山あります。ここで、3Dデッサンモデルのメリットとデメリットを見ていきましょう。
メリット1:観察しづらい角度から人体を見ることができる
3Dデッサンモデル最大のメリットは、普段私たちが見ることができない視点や角度で人体を観察できるという点です。
例えば、真上からの視点(俯瞰)や真下からの視点(煽り)は、普段観察しようにもなかなかできませんよね。
「ちょっと絵の参考にしたいから…」といって知らない人を真下から覗こうものなら、間違いなく職質案件です。
そういった物理的に難しい視点も、3Dデッサンモデルでは容易に参考にすることができます。
メリット2:絵の先入観や違和感をなくすことができる
絵を描くとき「このポーズは確かこうだったよね?」と憶測で描くかと思いますが、描いてて「なんかおかしいな?」と思うことはありますよね。
そういう、思い込みによる描写のミスを3Dデッサンモデルを使って確認することができます。
「肩があがっていないな」「腕や手の方向がおかしいな」というのを確認できるだけでも絵の精度はグンと上がりますので、描いていて「なんか変だな?」と思ったときは、3Dデッサンモデルを参考にしたいですね。
デメリット1:モデル通りに描いても上手くはならない
一度でも3Dデッサンモデルを使って描いたことがある人ならわかるかと思いますが、3Dデッサンモデルを使ってその通りに線をなぞって描いたとしても、決して「上手い絵」はできません。
3Dデッサンモデルは自由にポーズをとらせることができるものの、本来の人間が持つ人体の柔らかさ・しなやかさ・個性までは再現できません。
そのままモデルを線でなぞっても、どこかぎこちない機械的な絵になりますし、きちんとパースや人体を理解していないと「ただの線の集合体」になって違和を感じる絵になってしまいます。
デメリット2:個々の「画風」に対応しきれない
絵描きにはそれぞれ「画風」があり、2つとして同じものはありません。
3Dデッサンモデルは、あくまでも「平均化」されたモデルデータなので、そういった魅力ある画風には対応しきれない場合があります。
上記の3Dデッサンモデルをそのまま描いても上手く見えないという違和感は、こういう自分の画風と3Dデッサンモデルのミスマッチが原因でも起きます。
デメリット3:人体を理解していないと自然なポーズを作れない
3Dデッサンモデルさえあれば自由にポーズを取らせることができる!と誰しも思うかもしれませんが、必ずしもそうではありません。
例えば「後ろから声をかけられて振り向く」というポーズを作りたいとします。
さて、身体のどこの部分を動かしてポーズを作りますか?
後ろを振り向いているからと、身体を動かさずに首だけグリッと後ろに回しますか?
…それだとただのホラー映像ですね。ホラー演出を考えているのであれば大正解です。そのまま行け。
このように、「身体のどの部分をどう動かしているか」という人体への理解がないと、作りたいポーズがあったとしても容易に作ることができません。
また、人体の関節には「可動域」があります。
例えば、腕は曲げることはできても肘より後ろに曲げることはできませんよね。このように、どんなに自由度の高い人体であっても「絶対無理」という動きが存在します。
イラストは基本フィクションなので、多少の誇張した表現や嘘は表現の一環としてあってもいいとは思いますが、こういった絶対無理の可動域を理解してないと、骨折したような違和感が強いポーズになってしまいます。
3Dデッサンモデルは便利!といっても、やはり基礎的な知識は必要だということですね。
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メリットとデメリットを改めてまとめてみると、どちらかといえばデメリットのほうが多いということが分かるかと思います。
特に、画風に関してはその人にしか生み出せない大切なものなので、画風と3Dモデルの忠実さを両立するのは、かなり難しい技術といってもいいでしょう。
ただ、うまく活用すれば絵の迷いも減らすことができますし、リアルではないとはいえ、じっくり観察すれば人体の理解も深まります。
未知の技術だからと言って毛嫌いせず、また使ってる相手に攻撃することはせず「絵を向上させるためのツール」として柔軟に考えていきたいものですね。
オススメの3Dデッサンモデルアプリ・ソフト
3Dデッサンモデルを活用したい!と思う人もいるかと思いますが、ではここで自分も使っている3Dモデルアプリを紹介したいと思います。
あくまで自分が使っている時の感想なので、参考までに見ておいてください。
Easy Pose イージーポーザー
イージーポーザーは、スマホやタブレット(iOS/Android)の他にPC(Steam版)でも利用できる基本無料のアプリです。
リアルな人間に近い等身だけでなく、漫画描写に近い3Dモデルも使用できるため、イラストを描く人にもオススメとなっています。
若干デフォルメされすぎて不安定な部分があるものの、直感的に操作できて初心者でも比較的簡単にポーズを作ることができます。
また、有料ではありますが銃や剣などの小物も多数用意されているので、物のデッサンも参考にしたいという人にもおススメです。
Design Doll デザインドール
こちらのソフトはPCのみとなっていますが、基本無料で使うことができます。
※ただし、無料版はポーズデータが保存・読込できないので注意が必要です。
無料版でありながら、モデルの等身や部位の大きさ、手の形などを細かく編集できるため、PC環境があり多少3Dモデル操作に慣れてきた人であれば、断然こちらをおススメします。
ただ、イージーポーザーと比べるとかなり操作性がクセ強なので、その辺は覚悟しておいてください。
CLIP STUDIO
お絵かきソフト最大手である「CLIP STUDIO」内でも、3Dデッサンモデルを呼び出して使用することが可能です。
また、バージョン4.0にアップデートすると自分の画風に合わせた顔モデルの編集などもできるため、自分の画風を活かしつつ3Dモデルを利用したい人にはおすすめとなっています。
ただし、クリスタを購入しなければならず、またバージョン4.0は無料アップデートの枠から外れており、クリスタユーザーで利用するには追加でバージョンを購入するか、月額課金(サブスク)に登録する必要があります。
上記が無料で使える分、有料で結構な額になっていますので、かなり人は選ぶかもしれませんね。(現に自分は4.0にはアップデートしていませんし…)
とはいえ、クリスタでは「CLIP STUDIO ASSET」で、ほかのユーザーが作った3D素材をダウンロードして利用することもできますし、素材も豊富に用意されています。
多少値が張っても、利用する価値は十分あるかと思います。
3Dモデルを使っても上手く描けない時のポイント
さて、何かと便利な3Dモデルですが「3Dモデルを使っても上手く描けない…」という問題に直面している人は多いかと思います。
先に説明したとおり、自分の画風に合わせて描くのは結構難しいのが3Dモデルのデメリットです。
ただ、上手く描けないという人は、以下のことを気を付けると、多少違和感なく描くことができるかもしれません。
3Dモデルをそのままなぞらない
3Dモデルを初めて使う人にありがちなのが、3Dモデルを丸写しするという描き方です。
3Dモデルをそのままなぞると、3Dモデルを平面的(2次元的)に捉えてしまっているため、関節の位置や膨らみなどが全く考慮されていない、平面的な印象の絵になってしまいます。
単純なポーズであれば違和感も少ないのですが、遠近感が強い複雑なポーズ(腕を手前に突き出しているなど)になると、たちまち違和感が出てきてしまうので注意したいところです。
3Dモデルは、あくまで参考にする程度に捉えておくといいでしょう。
人体の構造を意識して観察する
例えば真上から見た視点を描く際
・どの位置に肩が来るか
・他の部位に隠れて見えない部分の構造はどうなっているか
…などを意識して形を捉えないと、どんなに3Dモデルを参考にしても違和感が強い絵になってしまいがちです。
見えない部分の形や繫がりを意識して、ポーズを描いたり服を着せたりすると、かなり「それっぽい絵」になります。
そのためには、やはり人体構造に対する基本的な理解を深めないとですね。
目や口などの部分ごとの角度も意識する
3Dモデルは基本的にポーズのみとなっており、目や鼻、口などの部分的な部位に関しては詳しく描写されていないことが多い印象です。
そのため、ほかの部位をポーズに合わせるように意識して描かないと「ポーズが完璧でも他の部位が合わない」という違和感が生じてしまいます。
例えば、輪郭だけは斜め下から見た顔(煽り角度)なのに、目や口は真正面から見た角度のない描き方だと、それだけで違和感がありますよね。
違和感なく描くには、ポーズだけでなく目や口などの角度も意識して描いてみましょう。この辺りは、人体構造だけでなくパースの理解も関係してくるかと思います。
やはり日々勉強ですね…!
まとめ 3Dモデルは”ズル”ではない!
ここまで3Dデッサンモデルについて色々まとめましたが、3Dデッサンモデルは決して”ズルいツール”ではない、ということが分かるかと思います。
3Dモデルをうまく活用するには、操作・人体ともにそれなりの知識理解や技術が必要です。また、利用するにはそれなりの設備が必要になる場合もあります。
どうしても「デッサン人形=トレス」と混同しがちの人はいますが、実際使ってみればその違いが判るかと思います。
もし、3Dデッサンモデルが気になるという人は、この機会に触れてみてはいかがでしょうか。自分が紹介したソフト・アプリ以外にもたくさん用意されていますので、ぜひ自分に合ったものを探してみてください。