ペルー  中国への接近 中国資本で建設が進むチャガタイ港 アメリカの「裏庭」に変化 | 碧空

ペルー  中国への接近 中国資本で建設が進むチャガタイ港 アメリカの「裏庭」に変化

(中国企業による建設が進むペルー・チャンカイ港は水深が約18メートルあり、南米の太平洋側では初の大型船受け入れが可能な港となる【619日 WSJ】)

 

【政治混乱】

南米ペルーは日本でニュースになるのは日系人フジモリ元大統領の動向などで、あまり馴染みが深い国ではありません。

 

政情はいささか混乱しています。

議会を解散しようとした前大統領が公共事業の不正疑惑で議会によって解任され、副大統領だったボルアルテ氏が女性大統領となっていますが、前大統領解任について南米左派政権はボルアルテ氏を「右翼的なクーデター勢力」として非難しています。

 

また、ボルアルテ大統領にも収賄疑惑が。

 

****ペルー大統領を収賄告訴、議会で罷免決議も****

南米ペルーのボルアルテ大統領が高価な腕時計などを受け取るなど収賄を行ったとして最高検は27日、憲法に基づく告訴状を提出した。国家的スキャンダルで、議会審議が進めば罷免決議につながる可能性がある。

疑惑を巡って大統領は既に、控えめな公務員給与に見合わないと思われるロレックスの時計や宝飾品を数個使用したとして、事情聴取や強制捜査を受けている。ただ、大統領は、ある地方知事から借りたものだと主張し、不正行為を否定している。

世論調査で大統領支持率が一段と下がる中での正式な告訴状提出となった。政権発足から2年たたないが、憲法に基づく告訴は2度目。

 

前回は、不法な議会解散を試みたカスティジョ前大統領が罷免され身柄を拘束された後の混乱で少なくとも40人が死亡した際、当時副大統領だったボルアルテ氏の対応が問題視され、最高検が昨年11月に告訴に踏み切っていた。

こうしたことからペルーでは過去数年間、政治が一段と混乱している。【528日 ロイター

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ロレックスの腕時計は推定数百万円とか。

 

【中国への接近 アメリカは懸念】

上記のような政治混乱はありますが、ボルアルテ大統領は積極的な対中国外交を今も行っています。

 

****ペルー大統領が今月訪中、習主席と会談 港湾などの企業幹部とも****

ペルーのボルアルテ大統領は6月中に中国を訪問し、習近平国家主席と会談する。鉱業、ハイテク、港湾運営などの企業幹部らとも面会する。

 

習氏とは6月28日に会談する。ペルーは今年のアジア太平洋経済協力(APEC)議長国。11月にリマで開く首脳会議に先駆け、習氏と会うことになる。

 

ボルアルテ氏は華為技術(ファーウェイ)、比亜迪(BYD)、中遠海運港口の幹部らとも面会する。【66日 ロイター

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こうしたペルーの対中国接近にアメリカなどは懸念を示しています。

 

****ペルーによる中国投資呼び込み、米国の反感は予想せず=首相*****

ペルーのアドリアンセン首相は17日、近く予定されているボルアルテ大統領の中国訪問や、中国企業によるペルー向け投資拡大が、米国の「恨み」を買うことはないとの見方を示した。

 

ボルアルテ氏は今月末に訪中し、習近平国家主席と会談するほか、通信機器ファーウェイ(華為技術)や電気自動車BYD(比亜迪)といった中国企業の幹部と面会する。

 

特に南米とアジアの主要貿易拠点として期待されるペルーのチャンカイ港の各種設備建設を主導している中遠海運港口有限公司(コスコ・シッピング・ポーツ)の幹部とは、真っ先に会うことになっている。

 

ペルーで近年、中国企業の投資が増加の一途をたどっていることは西側諸国の懸念要素となっており、中でもチャンカイ港整備計画は中国に対抗して南米投資を進めたい米国や欧州にとって「目の上のこぶ」的存在と言える。

 

しかしアドリアンセン氏は「米国などの我が国の友人たちが、中国勢の(ペルー向け)投資を呼び込んだからといって憤慨するとは考えていない」と語った。【618日 ロイター

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【チャンカイ港 アメリカが長年裏庭と考えていた資源豊かな地域で、その影響力に変化が生じる可能性】

チャンカイ港整備計画・・・・中国の南米進出の橋頭堡となるような事業で、アメリカは神経をとがらせています。

 

****中国の巨大港、米国の「裏庭」で建設進む****

中南米とアジアの貿易が加速し、米国の鼻先に中国の旗が立つ可能性も

 

南米の太平洋岸の静かな町に、中国が巨大港を建設している。米国が長年裏庭と考えていた資源豊かな地域で、その影響力に変化が生じる可能性がある。

 

水深が深いチャンカイ港の周りには、木製の小舟で釣りをする漁師やペリカンの姿がある。中国の習近平国家主席は年末に予定されている同港の落成式に出席するとみられており、実現すれば新型コロナウイルス流行後では初の南米訪問となる。中国がこの港をいかに重要視しているかがうかがえる。

 

中国の国有海運最大手、中国遠洋海運集団(コスコ・グループ)が過半の権益を握るチャンカイ港が開港すれば、アジア・南米間の貿易は加速し、ブルーベリーや銅など、あらゆる品目の太平洋横断にかかる日数が短縮され、いずれは遠くブラジルの顧客にも恩恵が及ぶだろう。

 

世界各国が中国製の安価な工業製品の大量流入に身構える中、同港の開港により電気自動車(EV)などの輸出品の新たな市場が生まれる可能性がある。中国は大半の南米諸国にとって最大の貿易相手国だ。

 

米国は、南米初の本格的な世界的商業拠点となり得る港を中国が掌握すれば、同国がこの地域の資源に対する支配力を一段と強めるのみならず、米国の近隣諸国への影響力を深め、いずれ米国のひざ元に軍を駐留させかねないと警戒する。

 

「(チャンカイ港を掌握することで)中国はこの地域から資源を根こそぎ手に入れるのが一層容易になる。これは懸念すべきことだ」。米南方軍を率いるローラ・リチャードソン陸軍大将は5月、フロリダ国際大学で開かれた安全保障会議でこう語っていた。

 

元米政府関係者は同港について、米国がウクライナや中東などへ資源を集中させている隙に中南米に外交的空白が生じたことを裏付けていると指摘する。

 

元米国務省高官で、現在はシンクタンク「米州評議会(COA)」のワシントン事務所責任者のエリック・ファーンズワース氏は「状況が一変する」とし、「これまでにない大規模なやり方で、中国が南米で世界市場への玄関口になる。そうなれば単に商業上ではなく戦略上の問題にもなる」と述べた。

 

ペルー首都リマの約80キロメートル北に位置する35億ドル(約5500億円)規模のチャンカイ港は、中国の銀行融資で資金を賄っている。水深が約18メートルあり、南米の太平洋側では初の大型船受け入れが可能な港となる。

 

この地域には大規模なコンテナ取り扱い能力のある港がある。企業はペルー・中国間を直接行き来する大型船で貨物を送れるようになり、メキシコや米カリフォルニアで積み替える必要がなくなる。

 

コスコはチャンカイ港について、純粋に貿易を促進するためのものだと主張している。

同社のペルー副ゼネラルマネジャー、ゴンサロ・リオス氏は「これは開発を促進するための商業プロジェクトだ」とし、「隠すことは何もない」と述べた。

 

2019年に港湾建設が合意に至ると、中国国営メディアは早々に、ペルーが中国・南米間の貿易拠点になり、海底ケーブルの敷設といった中国の他の重要課題でも協力を得られるかもしれないと大々的に報じた。

 

ペルーは米国の心配は無用との立場だ。外国軍を駐留させるには、港湾運営者ではなく議会の承認が必要となる。

ペルーのハビエル・ゴンサレスオラエチェア外相は、同国で中国の存在感が増すことを懸念しているなら米国も投資を増やすべきだとし、投資する人は「誰でも歓迎する」と述べた。

 

同氏はインタビューで、「米国はほぼ世界中で存在感を示し、大きな主導権を握っているが、中南米ではそうでもない」と指摘。「いわば非常に大切な友人なのに、めったにそばにいてくれない人だ」

 

コスコが2016年にギリシャの港湾の運営権を取得したことで、中国は欧州への足掛かりを得た。中国企業は現在、合わせて国外の港湾100カ所ほどでターミナルを管理・運営している。米バージニア州ウィリアム・アンド・メアリー大学のエイドデータ研究所によると、中国企業は200021年に少なくとも46カ国で、工費として合わせて300億ドル近くを融資した。

 

中国は港湾への投資を通じて、投資を切望する国に対して外交的な影響力を持つようになった。中国海軍の艦艇は、自国企業が所有・運営する世界各地の港の3分の1余りに寄港している。

 

ただ、こうした港湾がひそかに中国の軍事拠点化しているわけではなく、艦艇の寄港は式典の意味合いが強い。

 

また、新たな市場で貿易拠点を確立するには何年もかかるため、中国が進める港湾建設の商業上の費用対効果が判明するのはまだ先だろう。中国の港湾を巡る喫緊の懸念は、モザンビークの債務やケニアの環境破壊の兆候などで顕在化している。欧州でも、現地の利益が後回しにされていることが明らかになりつつある。

 

米国は、チャンカイなどの重要インフラを中国が掌握することへの懸念について、ペルー政府高官と話し合ってきた。協議の内容を知る両国の元政府高官が明らかにした。米国が懸念しているのは、中国の民間企業と政府、特に軍との関係だ。港湾やその設備は民生用と軍用の両方に使用できる。

 

カーネギー国際平和財団のアイザック・カードン上級研究員によると、中国の国内法は自国企業に対し、事業をする上で国防の必要性を考慮することを義務付けている。これは港湾ターミナルで艦艇に利用を譲り、有用そうな情報があれば共有し、防衛や動員を支援することを意味するという。

 

元米外交官でペルーの著名実業家でもあるジョン・ユール氏は「米国人は少し眠っていた」が、「突然目を覚ました」と話す。

 

11月中旬にはその様子を目の当たりにすることになるかもしれない。アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席するため、習氏がペルーを訪問するとみられている。米大統領選挙の直後に予定されているこの会議にジョー・バイデン大統領が出席しようとしまいと、西半球で中国の影響力を拡大するためのプロジェクトを引っ提げた習氏の独壇場になる公算が大きい。

 

ペルーはチャンカイ港をきっかけに、南米を舞台にした二大超大国の対立に巻き込まれることになった。

 

中南米最大の経済国であるブラジルは、自国の5G(第5世代移動通信システム)網から中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)を排除するよう米国から求められたものの、これをはねつけ、中国との半導体開発に期待をかけている。

 

コロンビアの首都ボゴタでは中国企業が地下鉄を建設中だ。ホンジュラスは中国からの積極的な投資を期待して台湾と断交した。アルゼンチンでは、EVに不可欠なリチウムの鉱山を中国が買い占めている。

 

ペルーは、港湾や銅の採掘、電力などあらゆる分野で中国の投資を進んで受け入れた。いずれリマの電力供給の大半を中国企業が握ることになる。

 

中国・中南米関係に詳しいフロリダ国際大学のリーランド・ラザルス氏は「ペルーは中国への経済依存を強めており、その経済支配を受けやすくなっている」と指摘した。

 

中国政府に批判的な立場を取る団体「ダブルシンク・ラボ」と「チャイナ・イン・ザ・ワールド・ネットワーク」が作成した指標によると、中国の影響を最も受けている国のランキングでペルーは5位。国内では中国製の自動車が目につく。

 

リマの緑豊かなミラフローレス地区では自治体が、ジョン・F・ケネディ元米大統領にちなんで名づけられた公園の近くに、太平洋を見下ろす「チャイナ・パーク」を設置した。両国の絆の深化を祝して中国から持ち込まれたパーゴラとライオン像が置かれている。

 

チャンカイ港にはスペイン語と中国語の標識が立ち並ぶ。長さ約1.6キロメートルのトンネルが完成すれば、貨物トラックが町を迂回(うかい)できるようになる。自動クレーンや無人車両を導入し、エンパイアステートビルほどの高さがある世界最大級の船に貨物を運搬する予定だ。(中略)

 

中国にとって特に魅力的なのは、ブラジルにこの港を利用してもらうことだ。中国は09年に米国を抜き、ブラジル最大の貿易相手国になった。だが大きな障害がある。ブラジルが別の海に面していることだ。

 

中国はブラジルの鉄鉱石と大豆の約3分の2を購入しているが、輸送するには東回りで大西洋を渡るか、北上してパナマ運河から太平洋に出る必要がある。

 

チャンカイ港を利用すれば、熱帯雨林地帯にあるマナウス市から中国への輸送時間を半分に短縮できる。ペルーの太平洋大学の経済学者オマール・ナレア氏はこう指摘する。

 

ただ、アマゾンの熱帯雨林とアンデス山脈を越えるには難関がある。ペルーとブラジルを結ぶ幹線道路は1本あるが、はるか南に位置している。ペルーはそこからチャンカイまで幹線道路と鉄道を引く計画だとしている。

 

ブラジルのレナン・フィーリョ運輸相は「これは全員が勝者になれるプロジェクトだ」とした上で、「ただし非常に複雑な部分もある」と話した。【619日 WSJ

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“中国企業は現在、合わせて国外の港湾100カ所ほどでターミナルを管理・運営している。米バージニア州ウィリアム・アンド・メアリー大学のエイドデータ研究所によると、中国企業は200021年に少なくとも46カ国で、工費として合わせて300億ドル近くを融資した。”・・・・・中国の海外進出には目を見張るものがあるのは認めない訳にはいきません。

 

【競争力低下の日本】

一方、日本は・・・・

 

****世界競争力ランキングで「日本は過去最低」と中国メディア、日本人の反応も紹介****

スイスに本部を置くビジネススクール・国際経営開発研究所(IMD)が18日に発表した世界競争力ランキング(2024年版)について、中国メディアの環球時報は19日、「日本は38位で過去最低だった」と報じた。

 

同ランキングは「経済パフォーマンス」「政府の効率性」「ビジネスの効率性」「インフラ」の4項目を基に競争力を算出したもので、今回は67の国と地域が対象となった。

 

1位は三つ順位を上げたシンガポールで4年ぶりの首位。2位はスイス(前回3位)、3位はデンマーク(同1位)、4位はアイルランド(同2位)、5位は香港(同7位)、6位はスウェーデン(同8位)、7位はUAE(同10位)、8位は台湾(同6位)、9位はオランダ(同5位)、10位はノルウェー(同14位)だった。日本は前回から三つ順位を下げて過去最低の38位だった。

 

環球時報の記事は日本の報道を引用し、「日本はG7の中では後ろの方(イタリアに次いで2番目に低い)であり、『ビジネスの効率性』に関する項目が全面的に低評価だった。特に『起業家精神』と『企業の俊敏性』では最下位だった」とした上で、IMDが「歴史的な円安が日本国内の年金受給者の購買力低下や財政不均衡などの問題を引き起こしている」と指摘したことを伝えた。

 

そして、日本のネットユーザーの反応として「国際通貨基金(IMF)の1人当たりGDPを見るに、日本の没落度合いは尋常ではない」「『起業家精神』と『企業の俊敏性』が低いことがすべてを物語っている。失敗を恐れるなと言いながら、いかなる失敗も許されない」「この30年の日本の基幹産業が崩壊しようとしており、世界をリードしてきた製品やサービスを失いつつある。明らかに衰退しているのに、政治家らは数字のマジックで成長しているように見せかけている」などのコメントを取り上げて紹介した。

 

なお、その他の国では米国が12位(前回9位)、オーストラリアが13位(同19位)、中国が14位(同21位)、カナダが19位(同15位)、韓国が20位(同28位)、ドイツが24位(同22位)、インドが39位(同40位)などとなっている。【619日 レコードチャイナ

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安心安全を呪文のように唱え「いかなる失敗も許されない」内向き姿勢・・・・長期衰退は否めません。もちろん

多くの国民がそこそこの生活を営める安定感はありますが・・・・それもいつまで持続できるのか・・・・。