ミャンマー  脱走・投降相次ぐ国軍 徴兵を実施で若者に動揺・反発 “軍政崩壊”の可能性も? | 碧空

ミャンマー  脱走・投降相次ぐ国軍 徴兵を実施で若者に動揺・反発 “軍政崩壊”の可能性も?

(「国軍記念日」のパレードに参加したミャンマー兵ら=2023年3月 【215日 TBS NEWS DIG】)

 

【クーデターから3年 軍を離脱し投降する兵士急増 市民は“沈黙のストライキ”】

国軍がクーデターによって全権を掌握してから3年が経過したミャンマーでは、昨年10月に攻勢を開始した北部シャン州の少数民族武装勢力と国軍の戦闘は中国仲介で停戦合意したことになっていますが、少数民族武装勢力及び民主派武装組織と国軍の戦闘状態という基本構図は続いています。

 

その戦いの構図において、国軍側の劣勢が伝えられています。

 

****ミャンマー国軍が劣勢、少数民族武装勢力の攻勢で500か所の拠点陥落か国土の7割に戦闘広がる****

ミャンマーで国軍がクーデターを強行し、アウン・サン・スー・チー氏の民主派政権を倒してから2月1日で3年になる。軍事政権の打倒を目指す少数民族武装勢力などが昨年10月、国軍に本格的な攻撃を仕掛け、国軍は劣勢に立たされている。国軍の空爆強化で国民の犠牲も拡大し続けており、国軍の強権統治が混乱に拍車をかけている。

兵士半減

 

「国軍は村を一つ一つ訪問し、若い男5人を兵士として差し出すよう命令した。実現できない村は燃やしていた。兵士不足は深刻だ」

元国軍兵士(22)は読売新聞の取材に国軍の実態を証言した。この元兵士自身、民主派デモに参加して国軍に拘束され、無理やり兵士にさせられていた。

 

昨年11月、「もう人を殺したくない」と武装勢力に投降した。民主派勢力などへの激しい弾圧に嫌気がさし、脱走や投降する国軍兵士が増えているという。

 

ミャンマーの人権団体「政治犯支援協会」によると、クーデター以降少なくとも約4500人が国軍に殺害され、約2万6000人が拘束された。汚職防止法違反などの罪で有罪判決を受けたアウン・サン・スー・チー氏の拘束は続いている。民主派兵士に食事を提供したため、村全体が銃撃されたとの証言もある。

 

米国平和研究所は昨年5月、かつて30万〜40万人とされた国軍の兵員数は半分程度にとどまると分析した。

 

少数民族の攻撃

これまでも自治権拡大を求めて国軍と戦ってきた北東部シャン州の少数民族武装勢力らは、国軍の弱体化を見透かすように昨年10月27日、国軍拠点への本格的な攻撃を開始した。西部や東部など他地域の少数民族武装勢力や、クーデター以来、国軍との戦闘を続けていた民主派勢力の一部も合流した。国軍は今月26日までに500か所以上の拠点を失ったとの報道がある。

 

戦闘地域も広がっている。調査研究機関「ミャンマー戦略政策研究所」は昨年末、クーデター以降に全土の約67%で戦闘が行われたと発表した。

 

国軍の対応は空爆主体になっている。民主派勢力が樹立した「国民統一政府(NUG)」によると、15日時点で国軍による空爆回数は580回を超えた。

 

首都ネピドーと最大都市ヤンゴンを結ぶ幹線道路沿いの村を12日に脱出した女性(30)は「国軍は空爆と銃撃で村を破壊した。父が亡くなり3歳の娘は今も集中治療室にいる」と涙をこらえながら話した。

 

国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、避難民は230万人に達している。避難民の増加や道路封鎖に伴う物流網の寸断などで経済も苦境が深まっている。

 

中国が仲介

東南アジア諸国連合(ASEAN)が国軍の抑止策を打ち出せずにいる中、中国は今月中旬、シャン州北部での一時停戦に関する合意を仲介するなど存在感を示そうとしている。中国はシャン州などと国境を接しており、情勢悪化に伴う経済低迷や自国民の安全を懸念している。

 

国軍トップのミン・アウン・フライン最高司令官は26日の会合で、武装勢力との戦闘を念頭に「行政と治安当局が団結すれば成功する」と述べるなど強気な姿勢を崩していない。

 

京都大の中西嘉宏准教授(ミャンマー政治)は「ミン・アウン・フライン氏は戦闘での勝利以外、現状打破は不可能だと思っている。だが、国軍が劣勢を挽回する要因も見当たらない。都市部は国軍が支配しているため、戦闘は長期化する」と分析している。【128日 読売

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“民主派勢力などへの激しい弾圧に嫌気がさし、脱走や投降する国軍兵士が増えている”“かつて30万〜40万人とされた国軍の兵員数は半分程度にとどまる”・・・・実際の数字はよくわかりませんが、本当に半分程度に兵士が減少しているなら国軍にとっては危機的状況です。

 

****ミャンマーのクーデターからきょうで3年 軍を離脱し投降する兵士急増****

(中略)こうした中、軍を離脱して投降する兵士が急増しています。

 

投降兵士(軍歴32年)「軍の国民に対する迫害、望んでいないことの強制など、軍がやってきたことが許せなかった」

 

地元メディアなどによりますと、クーデター以降、およそ16000人の兵士らが投降したということです。

投降兵士(軍歴32年)「軍を離脱し、安全な場所に来たがっている指揮官もいる。しかし、彼らは軍を出るチャンスがない」(後略)【21日 日テレnews

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国軍側も“引き締め”に躍起になっているようで、北東部シャン州の中国国境に近い主要都市ラウカイの地域司令官ら3人に軍法会議で死刑判決が下されたと現地メディアは報じています。

 

シャン州北部の戦闘では、司令官を含む兵士2千人以上が少数民族武装勢力側に投降し、その後一部がネピドーに移送されたと伝えられていました。

 

こうした異例の死刑判決に国軍関係者の間にも衝撃が広がっているとも。

 

国民の多くは軍政に批判的ですが、強権的な軍政のもとでは批判を口にすることはできません。そこで「沈黙のストライキ」

 

****ミャンマー各地「沈黙のストライキ」で閑散、市民らが日中の外出控える国軍は開店命令し圧力****

ミャンマーで国軍がクーデターによって全権を掌握してから、1日で3年となった。軍政による民主派勢力の弾圧が続いており、市民生活は困窮している。少数民族武装勢力と国軍の戦闘も続いている。

 

国軍は同日、非常事態宣言を6か月延長した。1月31日に首都ネピドーで開かれた国防治安評議会で、国軍トップのミン・アウン・フライン最高司令官は少数民族武装勢力などの攻撃を受けていることを理由に挙げ、「今は通常の状態ではない」として宣言の延長を決めた。

 

民主派勢力がクーデター後に樹立した「国民統一政府(NUG)」は、「国軍に対し政治的、軍事的圧力をかけ続ける」との声明を発表した。

 

ミャンマーの人権団体によると、クーデター以降に少なくとも約4500人が国軍に殺害され、約2万6000人が拘束された。

 

ミャンマー各地では、市民らが1日午前10時から午後4時にかけて外出を控える「沈黙のストライキ」を行った。

 

国軍は商店主などに開店を命令して圧力をかけたが、最大都市ヤンゴンや中部マンダレーなどの街の一部は人通りが絶え、閑散とした。【22日 読売

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こうした状況は“軍政崩壊の足音”のようにも見えますが、一方で、“都市部は国軍が支配しているため、戦闘は長期化する”【前出 読売】“軍には長い歴史があり、抵抗勢力が短期間で軍を倒すことは難しいでしょう”【下記】との見方も。

 

****クーデターから3年、ミャンマー軍事政権に崩壊の足音? “逃亡兵”激白「軍は勝てない」****

ミャンマーの軍事クーデターからあすで3年。圧政を続ける軍ですが、実は逃亡兵の急増を背景に、追い込まれつつあります。先月、逃亡してきたばかりの兵士がJNNの取材に内情を明かしました。

20212月のクーデター以降、軍に対する武装闘争が全土に拡大しているミャンマー。軍と少数民族や民主派勢力との間で激しい戦闘が続いていますが、ある異変が。

敷地に集められた兵士たち。うなだれた様子で座り込む人もいます。現地メディアによると、北東部シャン州ではこの数か月間で6000人を超えるミャンマー兵が抵抗勢力側に投降。

インド軍司令官 「これまでに416人のミャンマー軍兵士が徒歩で国境を渡りました」 インドやタイなど近隣国に逃亡する兵士も急増しているというのです。

JNNは、タイの国境地帯に先月逃げてきたばかりの兵士に話を聞くことができました。北部の州の部隊に所属し、前線で戦っていたという男性。

ミャンマー軍逃亡兵 

「私は軍人としての生き方に嫌気が差しました。国民に銃を向けて戦うことを申し訳なく思い、普通の人間に戻りたかったのです」

軍は空爆などで集落を焼き払う無差別攻撃を繰り返し、民間人の死者は少なくとも4400人にのぼります。男性も村を標的にロケット弾を発射するよう命令されたと話しました。

ミャンマー軍逃亡兵
「上官からの命令に逆らうことは絶対に許されない。でも、戦闘が終わって一息ついたとき、自分のことがとても情けなくなったんです。本当は撃ちたくなかった」

情勢が変わったのは去年10月。抵抗勢力側が各地で一斉攻撃を開始し、前線基地など500か所以上を占拠しました。徹底抗戦を指示していた指揮官でさえ、相次いで投降しているといいます。

ミャンマー軍逃亡兵
「今の軍にはこれまでのように戦う力はなく、兵士たちの間で恐怖心が広がっています。軍に対する国民の敵対心も強くなっているので、軍は勝てないと思います」

軍は追い込まれているのか。専門家は「非常に脆弱な状態だ」と指摘しますが。

ミャンマー戦略・政策研究所 アウン・トゥ・ネイン氏
「国民の支持を得られず兵士は(戦闘長期化で)過度のストレスを抱えている。軍は非常に脆弱な状態です。しかし、軍には長い歴史があり、抵抗勢力が短期間で軍を倒すことは難しいでしょう」

ミャンマー軍トップはきょう、抵抗勢力の制圧を目的に「非常事態宣言」を延長するとみられますが、“政治的な解決”として対話の余地もほのめかしていて、次の出方が注目されます。【131日 TBS NEWS DIG

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【国軍側 徴兵実施で権力維持図る】

少なくとも現段階では国軍側には権力を手放す意思はないようです。

 

****少数民族攻勢、続く戦闘=国軍は権力固執、深まる人道危機クーデターから3年・ミャンマー****

ミャンマーで2021年、国軍がクーデターで実権を握ってから2月1日で3年。昨年以降、抵抗する少数民族武装勢力が攻勢を強め、国軍は一部地域の支配を失ったが、権力を手放す姿勢は示さない。民主化指導者アウンサンスーチー氏の拘束も続き、混乱収束の道筋が見えない中、戦禍に苦しむ市民の人道危機が深刻化している。

 

国軍は31日、クーデター時に発令した非常事態宣言を6カ月延長すると発表した。延長は5回目で、国軍トップのミンアウンフライン総司令官が全権を握る状態が続く。

 

昨年10月、北東部シャン州などで三つの少数民族武装勢力が国軍への一斉攻撃を開始。独立系メディアによると、国軍は500以上の拠点を奪われ、多数の兵士が投降した。特に地域司令部からの撤退は「国軍史上最大の敗北」とされる。

 

3勢力と国軍は今年1月、中国の仲介で一時停戦に合意したが、一部の勢力や別の少数民族、民主派との戦闘が各地で続く。国軍は空爆などで応戦し、市民が巻き添えになっている。

 

ミンアウンフライン氏は1月、「総選挙に勝利した政権に役割を引き継ぐ」と強調した。ただ、紛争で選挙の実施は見通せない上、「選挙が行われた場合も民主派は排除される可能性が高い」(外交筋)とされる。

 

民主派は、スーチー氏の拘束が解かれない中で、国軍との対話を拒否している。国軍が21年4月に東南アジア諸国連合(ASEAN)と合意した「暴力の即時停止」など5項目も、大半が履行されていない。

 

ミャンマーの人権団体、政治犯支援協会によると、クーデター後に国軍によって殺害された市民や民主活動家は今年1月30日時点で4400人以上、拘束者は2万人近くに達する。国連人道問題調整事務所(OCHA)の報告書では、23年末時点で約260万人が避難を強いられている。

 

経済面の影響も深刻で、世界銀行は物価高などで24年のミャンマーの国内総生産(GDP)は19年より約1割減少すると予測した。ミャンマー政治の専門家は「忘れられた紛争国にしてはならない」と国際社会の関与を訴えている。【131日 時事】 

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死傷・脱走兵による戦力減少を補うため、国軍側は従来から制度としてはあった徴兵制を実際に行うことを発表して徹底抗戦の構えです。

 

****ミャンマー国軍が徴兵実施へ 投降続き、戦力確保を目指す****

民主派や少数民族武装勢力との戦闘を続けるミャンマー国軍が、国民に兵役を課す徴兵の実施を10日に国営テレビを通じて発表した。徴兵制は2010年に導入が決定されたが、運用せずに志願制を維持していた。国軍兵の投降が相次ぎ、戦力を強制的に確保する必要性に迫られた。

 

ミャンマー軍事政権は1月にラオスで開かれたASEAN外相会議に約3年ぶりに外務省高官を派遣。人道支援計画を受け入れ、212月のクーデター以降続けた孤立主義を修正したばかり。

 

徴兵の実施決定は、戦闘継続の意思は変更しない姿勢の表れとみられる。兵役は2年で、1835歳の男性と1827歳の女性が対象。【211日 共同

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13日には退役した軍人を5年間、予備兵として登録する予備役法も施行しました

 

当然ながら徴兵の対象となる若者には反発・不安・動揺が広がっています。

 

****【ミャンマー】国軍による徴兵制導入、若者が反発****

ミャンマーで、国軍が導入した徴兵制に若者が反発している。国軍に加わることを断固拒否する、抵抗軍に加わる、徴兵を逃れるために出国するなどといった声が上がっている。独立系メディアのミャンマー・ナウなどが13日伝えた。  

 

クーデター後に辞職した28歳の元教師は、「ニュースを聞いてとても不安になった。追い詰められて逃げ場を失ったと感じている」と話した。  

 

20代の男性は、海外で就労する妻の元へ行くことを考えていると語った。国軍は、徴兵した市民を荷役労働者や「人間の盾」として使うつもりなのだろうともコメント。市民に殺し合いをさせようとしているのだから本当に恐ろしいとも述べた。  

 

26歳の学生は、「どうせ死ぬなら、国民防衛隊(PDF)の一員として闘って死んだ方がましだ」とし、民主派の抵抗組織に加わる可能性を示唆した。「ほかに選択肢がないなら、PDFに加わって国軍兵士を皆殺しにしたい」と怒りをあらわにした教師もいた。  

 

22歳の女性は、「国民同士に戦いを強いる法律の施行に怒りを覚えた」と話した。PDFへの参加を考えているとした上で、「(民主派による)革命を支持し、軍の独裁を終わらせなければならない」と訴えた。(後略) 【214日 NNA

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【若者の反発・不安・動揺 むしろ体制を揺るがす要因に】

実際、出国を希望する人も多いようです。

 

****【独自】ミャンマーで出国希望者が殺到 突然の徴兵制開始で不安拡大 兵士不足のミャンマー軍は戦力確保急ぐ****

3年前のクーデターでミャンマーの実権を握った軍は、武装抵抗を続ける勢力を抑え込むため徴兵制を導入しました。市民には動揺が広がり、出国を希望する人が急増しています。

(中略)ミャンマーにあるタイ大使館には、徴兵から逃れようと出国を希望しビザを申請する市民が殺到しました。
周辺国への航空券を買い求める人も急増していて、動揺と不安が広がっています。【215日 TBS NEWS DIG

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出国だけでなく、「徴兵されれば死ぬことを意味する。(もし召集されたら)少数民族武装勢力が支配する解放区に逃亡するしかない」(ヤンゴン在住の若者)【215日 MYANMAR JAPON ONLINE】といった動きも増えるでしょう。

 

戦う意思のない兵士をいくら増やしても戦力としては期待できないでしょう。

ましてや、少数民族武装勢力・民主派側に走る者が増加して、敵勢力が増強されるとなったらますます国軍の苦境は深まります。

 

“都市部は国軍が支配している・・・”“軍には長い歴史があり・・・・”というのが常識的見方でしょうが、国民の憎悪の対象になっている国軍の力が弱まれば、思いのほか“崩壊”という事態の可能性も否定できないようにも見えます。

 

アフガニスタン政権の崩壊もあっという間でした。 アフガニスタン政権と軍そのもののミャンマー軍政では異なると言えばそうなんでしょうが・・・。