カンボジア  新首相のもとでも悪化する強権支配 親中国路線継続 | 碧空

カンボジア  新首相のもとでも悪化する強権支配 親中国路線継続

【「カンボジアの民主主義は死に向かいつつある」】

カンボジアでは、野党勢力を排除したフン・セン首相による独裁・強権支配が進行していましたが、昨年8月には息子のフン・マネット氏へ事実上の世襲がおこなわれました。

 

首相だけでなく、政権有力者も子供に代替わりするという、政権丸ごとの世襲でもありました。

 

野党勢力が選挙から排除されるだけでなく、国内においては政権が困難な状況にもなっています。

 

****独裁の圧力には屈しない 祖国の民主化求める在日カンボジア人インフルエンサー*****

カンボジアの独裁体制に反対する同国出身者ら約500人が17日、日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の特別首脳会議のためフン・マネット首相が来日しているのに合わせ、東京都内で祖国の民主化を求めるデモ活動を行った。

 

カンボジア人民党政権への抗議動画をSNSに投稿しているワン・レアケナーさん(27)も、参加者の一人。有形無形の圧力を受けているが「独裁に黙っているわけにはいかない」と力を込める。

 

ワン・レアケナーさんは首都プノンペンから車で1時間ほどというコンポンチャム州の出身。2019年4月に観光ビザで来日し、夫と1歳になる娘の3人で暮らしている。現在は難民認定申請が認められないまま、入管施設への収容を一時的に解かれた「仮放免」の状態にある。日本にとどまる理由は、帰国すれば当局に拘束される恐れがあるからだ。

 

昨年4月以降、人民党政権の強権姿勢をTikTokやフェイスブックで非難。視聴回数が100万回を超える動画も珍しくない。民主化を求める国内外のカンボジア人にとって影響力が大きなインフルエンサーといえる存在で、人民党政権から「社会を扇動した」などと出頭が命じられているという。

 

今回のデモも12月8日にSNSで告知したところ、その後、カンボジアの実家では深夜にドアがたたかれ、石を投げられる被害が続いている。ワン・レアケナーさんは人民党政権の関係者による嫌がらせだと考えている。

 

そもそも来日した理由も、カンボジアでの生活に危険を感じたからだった。夫が民主化デモに関わると、自宅に車が衝突し、建て直した後も投石が繰り返された。

 

カンボジアではフン・マネット氏の父で40年近く首相を務めたフン・セン氏が事実上の独裁体制を敷き、2017年の地方選で与党・人民党に肉薄した野党・カンボジア救国党の党首を国家反逆容疑で逮捕し、解党。救国党に代わり有力野党となったキャンドルライト党に対しても党幹部を拘束し、今年7月の総選挙では「書類の不備」を理由に政党登録を認めなかった。

 

実家には母親と、カンボジアに残してきた6歳の息子が暮らしている。ワン・レアケナーさんは「独裁体制に声を上げないのは楽だけど、いつか自分たちが被害者になる」と訴える。その上で、こう本音を漏らした。「人権が尊重され弾圧されないカンボジアになればすぐに帰りたい。息子に会いたい」【20231218日 産経】

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先日、有力野党キャンドルライト党のティアウ・バンノル党首が来日し、日本が同国の内戦の和平交渉を主導し民主化を後押しした経緯を挙げて「カンボジアの民主主義は死に向かいつつある。民主主義の生みの親である日本に力を貸してほしい」と訴えています。

 

****「日本は民主主義の生みの親、力を貸して」政権から迫害受けるカンボジア野党党首が訴え*****

有力野党キャンドルライト党のティアウ・バンノル党首が来日し、東京都内で産経新聞の単独インタビューに応じた。

 

同国で野党は政治的迫害に直面しており、同党も昨年7月の下院総選挙で参加資格が剝奪された。バンノル氏は日本が同国の内戦の和平交渉を主導し民主化を後押しした経緯を挙げて「カンボジアの民主主義は死に向かいつつある。民主主義の生みの親である日本に力を貸してほしい」と訴える。

 

──来日の目的は

「日本政府や与野党の関係者にカンボジアの現状を伝えるためだ。カンボジアでは野党の活動が妨害され、野党を支援すれば暴行されるなど迫害を受けている。これでは民主主義国家とはいえない。キャンドルライト党が選挙に参加できるように日本政府に後押しをしてほしい」

 

《昨年7月の総選挙は与党カンボジア人民党の圧勝に終わった。フン・セン前政権の影響下にある選挙管理委員会は「書類の不備」を理由にキャンドルライト党の政党登録を認めず、同党は選挙に参加できなかった。前々回の2018年の総選挙でも最大野党の救国党が直前に解党させられた》

 

──日本に頼る理由とは

「(ポル・ポト政権崩壊に伴う内戦状態を終結させた1991年の)パリ和平協定の策定で、日本はリーダーとして大いに活躍してくれた。カンボジアの民主主義の生みの親といっていい。

 

カンボジアの民主主義は小さな苗から育てて、どんどん大きくなると思っていたら、切られてしまった。カンボジアの民主主義は死に向かっている。日本が当時頑張ってくれた時間や労力を無駄にしたくない」

 

「日本は投票箱の提供や開票の計測技術など選挙支援に加え、道路や橋などインフラ整備でカンボジアの発展に貢献してくれている。民主主義の根幹である選挙が公平に行われるためにはどうしたらいいか一緒に考えてほしい」

 

《カンボジアは昨年8月、40年近く首相を務めたフン・セン氏が退任し、後任には長男のフン・マネット氏が就いた。閣僚の多くがフン・セン氏や側近といった人民党の有力者の子供で、世襲による政権の私物化批判がくすぶる》

 

──フン・マネット政権になり変化はあるか

「フン・セン政権時代よりひどくなっていると感じる。今月2、3日には海外を含めて野党関係者6人が捕まった。以前は逮捕状が提示されて拘束されたが、今は理由も示されずに捕まっている」

 

──バンノル氏と同じように令和4年12月に来日し、カンボジアの選挙が公平に実施されるように訴えた同党副党首のタッチ・セター氏は帰国後の翌年1月、カンボジア当局に拘束された

 

「政治的理由による不当な逮捕だ。副党首はカンボジアで人気がある政治家で、総選挙を前に党の影響力をそぐ狙いがあったのだろう」

 

──バンノル氏も日本での活動を理由にカンボジアで拘束される恐れは

「怖いけどやるしかない」(後略)【25日 産経】

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こうした批判を許さない独裁体制は必然的に腐敗します。

 

****【カンボジア】腐敗認識指数、8ランク後退の158****

世界の汚職や腐敗を監視する非政府組織(NGO)のトランスペアレンシー・インターナショナル(TI)が公表した2023年版「腐敗認識指数(CPI)」で、カンボジアの順位は世界180カ国・地域中158位となり、前年から8ランク後退した。

 

腐敗認識指数は国際機関やシンクタンクのデータを基に腐敗認識度を100点満点で数値化したもので、数値が高くなるほど汚職や腐敗が少ないとされる。  

 

カンボジアの23年の指数は2222年の2421年の23から悪化した。  TIカンボジアのペク・ピセイ事務局長は、説明責任と監視の強化、法律の改正などを通し、汚職の撲滅に向けた改革を加速させるよう政府に要請した。  

 

1月31日の地元紙クメール・タイムズ(電子版)によると、政府の汚職防止組織(ACU)の広報官はTIの調査結果について、「カンボジアの実情を正確に反映していない」と批判。カンボジアは「腐敗の防止に関する国際連合条約(国連腐敗防止条約=UNCAC)」の批准国として、国連の指針を順守してきたと述べた。   

 

TIによると、23年のCPIは世界平均が43、アジア太平洋地域の平均が45だった。  

東南アジア9カ国では、ミャンマーが最低の20で前年から3ポイント悪化。ベトナムは41、タイは35、ラオスは28と、いずれも前年から悪化した。  

 

一方、マレーシアは50、フィリピンは34と、それぞれ改善。インドネシアは前年と同じ34だった。  域内指数の最高はシンガポールの83。同国の世界順位は前年と同じ5位だった。【25日】

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【フン・マネット首相も親中国路線継続 懸念するアメリカ】

外交面では、フン・マネット首相はフン・セン首相時代の親中国路線を引き継いでいます。

****中国、カンボジアとの友好確認=習氏が新首相と会談****

中国の習近平国家主席は15日、カンボジアのフン・マネット首相と北京で会談した。習氏は「国際・地域情勢がいかに変化しても、中国はカンボジアの最も信頼できる友人だ」と強調。経済分野に加え、国境を越えた通信犯罪など治安面での協力を呼び掛けた。

 

習氏は、父親のフン・セン前首相について、両国の友好に「歴史的な貢献をした」と評価。フン・マネット氏が就任後初の個別訪問国として中国を選んだことを歓迎した。

 

フン・マネット氏は経済支援に謝意を示し、中国主導の巨大経済圏構想「一帯一路」への協力深化を表明した。【2023915日 時事】

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カンボジアと中国は経済面だけでなく、安全保障面でも関係を強めてきました。


 

カンボジア南部のリアム海軍基地は中国の援助で拡張工事が行われ、その見返りに中国が基地を軍事利用する「密約」疑惑も指摘されており、アメリカはこの動きを警戒しています。

****中国艦船のカンボジア基地入港報道、米国が注視****

米国務省の報道官は(12月)6日、中国の戦艦がカンボジアに入港しているとの報告を注視しており、主要海軍基地の一部を独占管理する計画に重大な懸念を抱いていると述べた。

ラジオ・フリー・アジア(RFA)は5日、複数の中国軍艦がカンボジアのリアム海軍基地に入港したと報道。カンボジアのティア・セイハ国防相は3日、同国海軍の「訓練の準備」とフェイスブックに投稿した。また、4日にはカンボジア指導者らと中国の軍制服組トップがプノンペンで会談したという。

米国務省の報道官は「この特定の事象にはコメントしないが、リアム基地の一部を中国が独占管理する計画に重大な懸念を抱いている」と述べた。

RFAは、入港した艦船の数は不明としたが、セイハ国防相の投稿には少なくとも2隻が映っている。【2023127日 ロイター】

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【中国資金による新シェムリアップ空港は遠くて不評】

中国の「一帯一路」資金援助で建設されたのがアンコールワット観光など、観光面の玄関口シェムリアップの新空港です。


 

****中国支援の新空港、運用開始 カンボジア遺跡群の玄関口に****

カンボジア北西部の世界遺産アンコール遺跡群など観光地への新たな空の玄関口となる空港「シエムレアプ・アンコール国際空港」の運用が(2310月)16日始まった。

 

整備費は巨大経済圏構想「一帯一路」を提唱する中国が拠出し、総額は約11億ドル(約1644億円)。

 

17日に始まる一帯一路の国際会議の直前に新空港の運用を開始し、両国関係強化の弾みにしたい狙いだ。

 

カンボジア政府高官は16日の式典で両国の「鉄壁の友好」を強調した。

 

中国はカンボジアで高速道路など主要インフラ整備に相次いで投資しており、カンボジアの中国傾斜は一層鮮明になっている。【20231016日 共同

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ただ、この新空港は市街地から遠くて不便。評判はよくありません。

 

****カンボジアの“中国製”新空港が大不評 「遠すぎ」「飲食店が一軒もない」…「習近平」も来ない?****

1016日にプレオープンしたカンボジアの「シェムリアップ・アンコール国際空港」の評判がよくない。この空港はアンコールワット観光の基点になる都市シェムリアップから東へ約45キロの場所に、中国企業3社が出資し建設した。

 

総工費は11億ドル(約1,600億円)といわれ、大型機も離発着できる3,600メートルの滑走路を備え、敷地面積は北海道の新千歳空港に匹敵する。2024年には700万人が利用すると見込んでいるというのだが……

 

「とにかく遠い。以前の空港(閉鎖されたシェムリアップ国際空港)は市内まで20分ほどだったけど、新空港はバスで1時間半近くかかる。そのバスも14便しかない。バス代は8ドル(約1,200円)だけど、タクシーを使うと35ドル(約5,200円)。

 

首都のプノンペンに行こうと思ったら、誰だってバスを選びますよ。安い上に、所要時間もあまり変わらないんですから」と、シェムリアップでレストランを経営するMさん(51)はいう。(中略)

 

Wi−Fiもつながらない

関係者の怒りの矛先は、開港を主導した中国に向かっている。近隣国からのフライトはあるにはあるが、新空港になる前は週に数便あった中国からのフライトが、なぜか週に2便ほどに減っているのだ。(中略)

 

 

「新空港を運営するのは中国の会社なんですが、建物は大きいけど設備は貧弱というかなにもない。Wi−Fiもつながらないし、ラウンジもない。レストランも一軒もないんです。利用者は小さな売店で飲み物や軽食を買うしかない。

 

ホームページもほとんど更新されない。以前の中国だったら、威信をかけてドーンとやるでしょ。なにか変なんです」

 

中国からのアクションなし

(中略)カンボジア側は、習近平を呼んでお披露目をしたかったようだが、話はまとまらなかったという噂も流れている。だったら自分たちで正式オープン……という筋立てだ。

 

新空港の青写真では、空港近くにエアポートシティという名のチャイナシティ構想もあった。高級ホテルを中心にした中国人向けリゾートだという。空港周辺に工業団地のプランもあったようだ。しかし計画はすべて止まっているのか、中国側からなんのアクションもないという。

 

閉まったままの観光ホテル

シェムリアップの観光業界は中国への依存度が高く、ツアー客に支えられてきた。コロナ禍が収束し、新空港が開港し、堰を切ったように中国人団体客が姿を見せることを期待していたが、そんな動きはまったく聞こえてこない。中国人団体客を受け入れる大型ホテルは、半分近くがまだ閉まったままだという。

 

「このままいったら私たちは沈んでしまう。しかし中国は怖いほど静か。なんの情報も入ってこない」と、Lさんは胸のうちを語る。

 

空港観光でにぎわい

実はいま、シェムリアップ・アンコール国際空港は、飛行機に乗らないカンボジア人でかなりにぎわっている。農村地帯に住む人たちが新空港を、無料のテーマパークのような感覚で遊びにくるのだ。

 

生まれてはじめて乗るエスカレーターでの写真は定番らしい。水洗トイレの使い方を知らない人も多く、トイレは水浸しになっているという。週末は空港観光客の車で渋滞が起きるほど。

 

しかしその誰もが飛行機には乗らない。15ヵ所もある搭乗ゲート周辺は閑散としているという。【2023116日 下川祐治氏 デイリー新潮】

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実は、これからその新シェムリアップ空港に向かいます。

8日朝には到着予定。

 

もちろん単なる1週間ほどの観光です。

遠い新空港は個人的にも困りものです。

 

ということで、しばらくの間、ブログ更新は不定期になります。