アフガニスタン  最高指導者の女性人権に関する宣言は? 日本のジェンダーギャップ状況 | 碧空

アフガニスタン  最高指導者の女性人権に関する宣言は? 日本のジェンダーギャップ状況

(記念撮影に臨む主要7カ国(G7)男女共同参画・女性活躍担当相会合の出席閣僚ら。右から4人目が小倉将信男女共同参画担当相=25日、栃木県日光市(時事)【627日 HUFFPOST】)

 

【タリバンの最高指導者  女性は「自由で尊厳のある人間」としての地位を回復し、「伝統的な抑圧」から解放される】

タリバン支配のアフガニスタンにおける教育や就労などで女性の権利が著しく侵害されていることは再三取り上げてきました。

 

タリバン内部にも女性問題で意見の対立があることも、419日ブログ“アフガニスタン 女子教育再開をめぐりタリバン政権内に意見対立も”で取り上げました。

最終的には最高指導者アクンザダ師がどのような判断をするのか・・・というところでしょう。

 

そのタリバンの最高指導者アクンザダ師が、女性は「伝統的な抑圧」から解放されると宣言したとか。

 

****女性「抑圧しない」と宣言=タリバン指導者、柔和姿勢強調アフガン****

アフガニスタンのイスラム主義組織タリバンの最高指導者アクンザダ師は25日、イスラム教に基づく統治でも、女性は「自由で尊厳のある人間」としての地位を回復し、「伝統的な抑圧」から解放されると宣言した。AFP通信が報じた。

 

女性抑圧政策を国際社会から批判される中、柔和な姿勢をアピールする狙いとみられる。

 

アクンザダ師はイスラム教の「イードアルアドハー(犠牲祭)」を前に声明を発表。「社会の半分を占める女性の地位向上に向け、必要な措置が既に取られた」と主張した。【627日 時事】 

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この宣言の意味合いについては、上記記事は柔和な姿勢をアピールとしていますが、アクンザダ師は声明で教育問題に触れず、批判を無視した形だ。 627日 共同】という評価も。

 

確かに、「必要な措置が既に取られた」ということで、「もう十分にやっている。批判される筋合いはない」という宣言にも思えます。

 

****タリバン「女性尊厳回復」声明 最高指導者、批判を無視****

(中略)タリバン暫定政権は、日本の中学・高校に当たる女子の中等教育と大学教育の停止を継続。各国は「女性への抑圧」だと懸念し、暫定政権を承認していない。アクンザダ師は声明で教育問題に触れず、批判を無視した形だ。

 

声明はイスラム教の「犠牲祭」の祝日を前に公表した。女性の地位向上のための取り組みとして、強制結婚を減らす対策や女性の相続権の保障などを挙げた。【627日 共同】

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柔和な姿勢をアピールではなく開き直り宣言と理解すべきものでしょうか。

 

【国連 「ジェンダー・アパルトヘイト」と批判 支援予算減額】

タリバンの女性への対応は、これまでも欧米・国連から厳しく批判されていますが、国連特別報告者はジェンダーのアパルトヘイトに相当する恐れがあると報告しています。

 

****タリバンの女性処遇、「ジェンダー・アパルトヘイト」の可能性=国****

アフガニスタンの人権状況に関する国連特別報告者リチャード・ベネット氏は19日、ジュネーブで行われた国連人権理事会で、同国で実権を掌握しているタリバンによる女性と少女の処遇は、ジェンダーのアパルトヘイトに相当する恐れがあると報告した。

ベネット氏は「タリバンの思想と規則の根幹には、女性に対する重大で組織的かつ制度的差別が存在する。これは、タリバンがジェンダー・アパルトヘイトに責任がある可能性を示している」と述べた。

国連は、ジェンダーまたは性別を理由に個人に対して行われる経済的・社会的性差別」をジェンダー・アパルトヘイトと定義している。

また、ベネット氏は記者団に「われわれはジェンダー・アパルトヘイトをさらに追及する必要性を強調した。現時点では国際犯罪となっていないが、そうなる可能性がある」と指摘。「現在、アパルトヘイトは人種を対象としているが、これをアフガンの状況に当てはめて人種の代わりに性別を適用すれば、その方向に向けた強い示唆となるとみられる」と述べた。

2021年8月に実権を掌握したタリバンは、高校や大学通学の阻止など、女性の権利と自由を極度に制限している。【620日 ロイター

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アフガニスタンは世界でも最も国際支援を必要としている国のひとつですが、女性人権に関するこのような厳しい見方を背景に、アフガニスタンへの支援も削減される事態になっています。

 

****国連、アフガン支援予算を減額 女性出勤停止で、需要増も****

国連は6日までに、アフガニスタンでの今年の人道支援予算を46億ドル(約6400億円)から32億ドルに減額したと発表した。支援の需要は増しているが、イスラム主義組織タリバン暫定政権が国連で働く女性職員の出勤停止を命じ、十分な活動ができなくなったため。女性への抑圧的な政策が人道支援に悪影響を与えた。

 

国連人道問題調整室によると、アフガンで支援を必要とする人の数は今年初めの推定2830万人から、2880万人に増えた。国民の約7割に当たる。

 

アフガンでは女性が家族以外の男性と接触を避ける慣習があり、出勤停止命令によって女性や子どもに支援を行き渡らせることが難しくなった。【66日 共同】

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国連支援だけでなく、各国の個別の支援においても、タリバンの女性に対する頑なな姿勢はその障害となっています。タリバンの圧政と人道支援は切り離して・・・とは言っても、現実にはなかなか。

 

【タリバンも国際孤立を回避したい思いがあるのか・・・・】

最高指導者アクンザダ師は普段は表にほとんど出てこない人物なので、外部の人間にはその考えはわかりません。(おそらくタリバン内部でも、よくわからないのでは?)(絶対的権威を有した初代の最高指導者オマル師などは生きてるのか死んでるのか、それさえ長年わかりませんでした)

 

その最高指導者アクンザダ師がカタール首相と極秘会談したとか。

 

****タリバン指導者、カタール首相と極秘会談か=外国首脳と初、孤立回避狙う****

アフガニスタンのイスラム主義組織タリバンの最高指導者アクンザダ師が5月、カタールのムハンマド首相と極秘で会談した。ロイター通信が31日、消息筋の話として伝えた。

 

タリバンはアフガン女性の人権を侵害していると国際社会から批判されており、会談は孤立回避が狙いとみられる。

 

ロイターによると、会談は5月12日にアフガン南部カンダハルで行われた。タリバンが2021年8月に実権を掌握して以降、アクンザダ師が外国首脳と会談したのは初めてとみられる。同師が公の場に出ることはほとんどなく、メディアの前に姿を見せたこともない。【61日 時事】 

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やはり、タリバンとしても「このままの孤立状態ではまずい」という判断があるのでしょうか。そうであれば女性に関する施策も多少は期待できるのですが・・・。

 

【小池都知事ならずとも、ため息がでる日本のジェンダーギャップ】

アフガニスタンの女性問題に関して、毎回とやかく言っていますが、国際的に見ると日本にそんなことを言う資格があるのか・・・という話にもなります。

 

例年の調査結果が公表されました。いつにも増して日本の女性の地位は“良くない”ようです。

 

****「ジェンダーギャップ指数2023」日本は過去最低の125位に後退、G7で最下位****

2023621日、世界経済フォーラム(以下、WEF)が、世界各国の男女平等の度合いを数値化した「ジェンダーギャップ指数」の2023年版報告書を発表しました。

 

今回の調査では、男女が完全に平等な状態を100%とした場合の全世界の達成率は68.4%で、昨年度より0.3ポイントの改善が見られました。

「経済」「教育」「健康」「政治」の4つの分野のデータから成るこの指数、日本は国別のランキングで対象146カ国中125位(64.7%)と、過去最低の結果となっています。

 

世界全体の男女平等が達成されるまでには「131年」が必要

WEFは今回の報告書のなかで、現在の進捗速度では、世界の男女格差が解消されるまでに131年かかると推測しています。また、ジェンダー公正(Gender Parity)はコロナ禍以前の水準に回復しつつあるものの進展は鈍化しており、「経済活動への参加と機会」の分野は2022年よりも後退したと指摘しています。

 

日本の順位は過去最低の125

日本は146カ国のうち125位で、昨年の116位から大きく後退し、依然として主要先進国(G7)のなかで最下位となっています。

 

また、地域別の結果を見ても、東アジア・太平洋地域の指数は8地域中5番目に高いスコアを示している一方で、日本はフィジー、ミャンマーと並ぶ最下位に位置し、現在の進捗率では、この地域がジェンダー平等を達成するには189年かかると試算されています。特に政治と経済の分野で格差解消が進んでいない状況です。(後略)【622日 PLAN INTERNATINAL

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日本の評価が低いのは、特に「政治」(138位)と「経済」(123位)

政治では、衆院議員の女性比率が10%にとどまり、女性閣僚も少ないことが、経済でも、企業で役員・管理職への女性登用が進まないことなどが低い評価の原因となっています。

 

単に低いだけでなく、年々順位が後退していることが問題。(調査国が増えているせいなのかも。それにしても改善が図られたいないということには変わりありません)

 

もちろん、このような簡単な数値化でどれだけのものが示せるのか・・・という話はありますが、一面の真実を示す数値ではあるでしょう。

 

毎年取り上げられる調査報告であり、「相変わらずだね・・・」といった印象もありますが、現在日本で影響力が大きい数少ない女性政治家の一人、小池東京都知事もため息を禁じ得ないようです。

 

****男女平等指数ランキング、出るたびに「ため息」=小池都知事****

東京都の小池百合子知事は23日の記者会見で、世界経済フォーラム(WEF)の最新の「ジェンダー・ギャップ指数」で日本が対象146カ国中125位と前年の116位から後退したことについて「これに限らず、ランキングが出るたびにため息をついている」と述べた。男女格差の問題は「日本が抱えている大きな課題だ」との見解を示した。

日本を巡る状況について、小池知事は世界の国々との比較においてスピード感が違うと指摘。男女格差の解消について「本質から覚悟を持って進めていく」必要性を訴えた。【623日 ロイター

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【本気度・スピード感が問われていますが、最終的には国民、女性の意識に依る面も】

「日本の常識 世界の非常識」を端的に示すのが冒頭の写真。

 

****G7女性活躍相会合にたった1人の男性閣僚。米誌「日本は男性を送り込んだ」と皮肉****

栃木県日光市で2日間にわたり開催されていたG7(主要7カ国)男女共同参画・女性活躍相会合が、625日に閉幕した。

 

そんな今注目を集めているのが、ジェンダーギャップに悩む日本の現状を表しているかのような、同会合の記念写真だ。

 

写真を見ると一目瞭然だが、他の出席閣僚は全て女性なのに対し、議長国である日本だけ、男性の小倉将信・男女共同参画担当大臣が写っている。

 

アメリカのTime誌はこの状況を「気まずい記念撮影」と皮肉り、「G7女性活躍相会合の議長に日本は男性の大臣を送り込んだ(Japan Sends Male Minister to Lead G7 Meeting on Women’s Empowerment)」と題した記事を掲載。日本の抱えるジェンダー問題に言及した。

 

この記事は印象的なタイトルと写真と共にSNSで広がり、ネット上では「恥ずかしい」「写真が全てを物語っている」など、国内外から多くの反応が寄せられた。

 

つい先日発表された世界経済フォーラム(WEF)の「ジェンダーギャップ指数2023」では、日本は146カ国中125位。特に政治参加分野では「世界最低レベル」の138位だった。

 

この記念写真を見て、改めてそのランキングに納得する人も多かったようだ。【627日 HUFFPOST

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本気度・スピード感が問われていますが、先日の日本の難民対策でも述べたように、単に政府や企業の姿勢だけでなく、最終的には国民の意識、特に女性の意識に依る部分が小さくないでしょう。

 

極論すれば、「日本の女性は家庭に入って、良妻賢母として生きることを望んでいる。だから、ジェンダーギャップなんて意味ない」ということであれば、余計なお世話でしょう。

 

確かに、一部女性にそういう意識が見られるのも事実であり、そのことを男女平等を是とする価値観のなかにどのように位置づけるのかはひとつの問題でしょう。

 

ただ、もっと社会参加を望んでいるにもかかわらず、いろんな事情でそれが果たせない女性も少なくないでしょう。

そうした面を考えれば、日本社会の現状は変革を要するところが多々あると思われます。