ウクライナ 「侵略国」ロシアのワクチンに頼れず苦慮  ベラルーシ 批判を抑え込み、改憲等も不透明 | 碧空

ウクライナ 「侵略国」ロシアのワクチンに頼れず苦慮  ベラルーシ 批判を抑え込み、改憲等も不透明

(ルカシェンコ氏は演説で大統領としての正統性を強調した(11日、ミンスク)【211日 日経】)

 

【小康状態のウクライナ東部情勢か ロシアとの対立は継続】

ウクライナ東部を実効支配する親ロシア勢力の動き・政府軍との衝突に関しては最近報道を見かけませんので、落ち着いているということなのでしょう。

 

ただ、解決した訳でもなく、RUは対ロシア制裁を継続しています。

 

****EU、対ロ経済制裁を半年延長 1月末期限切れ、ウクライナ巡り****

欧州連合(EU)は17日、2014年のウクライナ危機に絡み、来年1月末に期限が切れる金融、エネルギー、防衛分野の本格的な対ロシア経済制裁を同7月末まで半年延長することを決めた。

 

ウクライナ東部の一部を実効支配する親ロシア派勢力とウクライナ政権が15年に結んだ和平合意をロシアが完全履行するまで制裁を解かない方針。

 

一方、EUは今年8月のベラルーシ大統領選での不正や市民の弾圧を巡って新たに同国の著名経済人や企業など36個人・団体にEU渡航禁止や資産凍結の制裁を科すと発表した。即日実施する。【20201218日 共同

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ウクライナ国内においても、ロシアへの警戒が続いています。

 

****ウクライナ、ロシアから資金提供を受けている9テレビ局を閉鎖****

ウクライナ大統領府から出された声明では、国家安全保障・国防会議ウクライナ議会のタラス・コザック議員及び彼が所有するテレビ局への制裁決定が承認されたことが明らかにされた。制裁に沿ってコザック議員が所有する9テレビ局は5年間活動できなくなる。

 

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はこれに関してソーシャルメディアに投稿し、同国の報道の自由を支持しているもののウクライナを攻撃する国が資金提供しているプロパガンダは支持していないと明かした。

 

ゼレンスキー大統領のユリア・メンデル・メディア担当報道官も、これらテレビ局の資金調達がロシアによって行われていることが確認されており、これら局はウクライナに対する戦いの道具として使用されていると述べた。【23日 TRT

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【ロシア製ワクチンに頼れないウクライナ ウクライナからの水供給が止まったクリミア】

ウクライナの新型コロナ感染者総数は約130万人、死者が24千人超ということです。

日本の413220、6866という数字に比べると、人口が日本の三分の一程度ということも加味すれば、表に出ている数字だけでも10倍程度のレベルでしょうか。(感染レベルが高いのはウクライナだけでなく、欧州全体の傾向です)

 

主だった政治家も次々に感染しています。

昨年8月にティモシェンコ元首相、9月にはポロシェンコ前大統領、11月にはゼレンスキー大統領も。

 

新規感染者は昨年11月をピークに減少しており、現在は15000人弱。

 

これだけ次々に要人が感染するということは、すでに集団免疫が一定程度に獲得されるレベルにまで達しているのでは・・・とも思うのですが、そうはいってもやはりワクチン接種が急務。

 

しかし、ワクチン供給の目途はたっていないよう。

さりとて、ロシア製ワクチンに頼る訳にもいかず・・・ということで、ゼレンスキー政権も苦しい状況のようです。

 

****ワクチン調達に苦戦のウクライナ、「侵略国」ロシア製を禁止****

ウクライナは、新型コロナウイルスワクチンの調達に苦戦しているにもかかわらず、激しく対立するロシア製ワクチンの使用を禁止した。

 

ウクライナは8日、ロシア製ワクチンを禁止する決議案を可決。10日にウェブサイトに掲載された決議案は、「侵略国」で生産されたワクチンの登録を禁止するとしている。ウクライナは2015年にロシアを侵略国と認定している。

 

ウクライナの親欧米派政権は、親ロシア派議員らが求めているロシア製ワクチン「スプートニクV」の承認を再三にわたり拒否し、同ワクチンは地政学的なツールだと非難している。

 

しかし、ウクライナにはまだどのワクチンも届いておらず、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領に対しては、欧米製のワクチンを調達できていないことへの批判の声が上がっている。

 

政府は10日、自国のワクチン購入に関する調査を開始したと発表。まん延する汚職の撲滅に苦慮していることが浮き彫りになった。

 

ウクライナでは、2014年のロシアによるクリミア半島併合を受け、東部ドネツク州とルガンスク州でロシアの支援を受けた分離独立派との戦闘が続いている。分離独立派が支配する両州では、スプートニクVの接種がすでに始まっている。 【212日 AFP

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EUもロシアに制裁まで課してウクライナを支援するというなら、ウクライナへのワクチン供給があってもいいのに・・・とも思うのですが、EU自体のワクチン獲得が予定より大幅に下回り、火の車状態になっているのは周知のところ。

とても域外のウクライナまでは手が回らないのでしょう。

 

ロシアは、ここぞとばかりにクリミアや東部2州でのワクチン接種を見せつけるのでしょうが、そのクリミアでは生活に必須の水が足りないとか。

 

****クリミアで「水不足」深刻 併合のプーチン政権に不満****

ロシアが2014年に一方的に併合したウクライナ南部クリミア半島で水不足が深刻化している。もともと淡水が少ないクリミアにはウクライナ本土から水が供給されていたが、併合後は止められた。

 

今年はこれに降雨不足も重なり、半島各地で1日計6時間しか水が供給されない事態となっている。給水制限は21年末まで続くとの観測もあり、住民はプーチン露政権への不満を強めている。

 

クリミアの中心都市シンフェロポリの水道当局は8月以降、貯水池の水量低下から生活用水の供給制限を開始。制限は段階的に強化され、今月は市内各地で水の供給が午前6時〜9時と午後6時〜9時の1日計6時間に制限されている。露経済紙コメルサントによると、同様の供給制限はクリミアの約30の都市や集落で実施されている。今月14日からは保養地ヤルタでも制限が始まった。

 

併合前のクリミアでは水の85%がウクライナ本土から「北クリミア運河」を通じて供給されていたが、併合でこれが止まった。昨年までは雨量が多く、大きな問題とはなってこなかったが、今年は降雨が少なく、各地で貯水池の水量が10%台まで低下した。

 

水の供給制限に住民は不満を強めている。多数の住民がインターネット上で「生活できない」「露政府は他の事業の予算をこちらに回すべきだ」などと表明。一方、ウクライナ側からは「自業自得だ」との反応も出ている。クリミアでは水のペットボトルの買い占めも起きているという。

 

プーチン政権は、ウクライナ本土から人為的に分断されたクリミア半島の実効支配を強化しようと、ロシア南部からクリミアへ橋を架けたり、海底送電ケーブルを敷設したりしてきた。そうした中で先送りされてきたのが水の問題だ。

 

クリミア当局は各地に海水を淡水化する装置を設ける方針だが、問題の解決にはかなりの時間と費用がかかりそうだ。クリミアでの住民の不満の高まりは、半島併合を「偉業」と主張してきた露政権にとって一定の痛手だといえる。【20201218日 産経

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1日計6時間しか水が供給されない事態・・・「一定の痛手」というより「相当の痛手」のように思いますが・・・。

 

結局のところ、ワクチン供給にしても、水供給にしても、民族主義を押し立てた争いごとの不毛さを示しているようにも思えます。

 

【ベラルーシ・ルカシェンコ大統領 強権で批判を封じ込め、改憲・辞任も不透明化】

お隣ベラルーシの大統領選挙における不正疑惑からの反政府デモも、最近は報道がなくなりました。

ルカシェンコ政権の強硬姿勢に加え、寒さやコロナもあって、とりあえずは政権側が抑え込んだ形でしょうか。

 

****ベラルーシで「国民会議」=ルカシェンコ体制維持へ時間稼ぎ***
昨年8月の大統領選の結果をめぐり、混乱が広がったベラルーシで11日、政権主導の「全ベラルーシ国民会議」が開かれた。退陣要求を突き付けられたルカシェンコ大統領が譲歩案として提示した憲法改正も議題となるが、ルカシェンコ氏は問題の先送りを狙っている。大きな進展はないとの見方が強い。

 

国民会議でルカシェンコ氏は「社会発展の問題や政治で市民が果たす役割をよく検討し、憲法修正の可能性について考えなければならない」と表明。昨年の混乱は国外勢力が介入した結果との考えを示し、「われわれは国を守った」と主張した。

 

大統領選をめぐっては、1994年から実権を握るルカシェンコ氏の6選が発表されたが、選挙不正が指摘され、全土に反政権デモが拡大。首都ミンスクでは10万人規模のデモが続いた。

 

しかし、反政権運動が飛び火するのを警戒したロシアのプーチン政権がルカシェンコ氏を支持。後ろ盾を得たルカシェンコ政権は反政権派を徹底的に弾圧した。

 

抗議デモで追い込まれた際、ルカシェンコ氏は改憲による権限移譲を提案した。昨年11月には「新憲法下で大統領として働くつもりはない」とも発言していた。

 

反政権派弾圧で、すっかり巻き返しに成功した格好のルカシェンコ氏は、今は体制維持のため改憲を遅らせようとしている。年末までに憲法草案を作成し、国民投票にかけるのは来年になると語り始め、時間稼ぎに利用されかねない。【211日 時事

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自分を支持しない勢力に政権を譲る考えは全くないようです。

“「国を壊すのは許さない」と述べ、「異なる見解の持ち主が権力を握らないこと」も退任の条件として強調。「移行期の安定剤」として自身の支持者で構成される国民大会の権限を強化する考えも示し、現政権に批判的な人物が権力を握るのを阻止する考えも示唆した。”【212日 毎日

 

更には「続投」も視野に・・・

“去年11月に自らの辞任の条件としてあげた憲法改正については、来年初めには国民投票を行うとしました。ただ、抗議活動などが行われない場合にのみ辞任すると述べ、続投に含みを残しています。”【212日 日テレNEWS24

 

【ロシアに支持を強要する開き直り 「ロシアにとってベラルーシの喪失は致命的に危険だ」】

ルカシェンコ大統領が態勢を立て直せたのは、ロシアの強力な支持があったから・・・・と言うか、ロシア・プーチン大統領もルカシェンコ個人には辟易していたのでしょうが、ルカシェンコ大統領が「オレが失脚したら、次はお前だぞ!」とプーチン大統領に支持を迫ったのではないでしょうか。

 

****ベラルーシ大統領、ロシア重視を強調民主化要求は拒否****

昨年8月の大統領選の不正疑惑をめぐる抗議デモが続く旧ソ連構成国、ベラルーシのルカシェンコ大統領は11日、国家戦略の方向を定める「人民会議」で演説し、隣国ロシアとの関係を強化するとともに、反体制派による民主化要求には応じない姿勢を示した。イタル・タス通信が伝えた。

 

27年にわたり独裁統治を続けるルカシェンコ氏は演説で、欧州連合(EU)や中国との関係も重要だとした上で、「基本的な経済パートナー、戦略的同盟国はロシアだ」と指摘。デモ弾圧で国際的批判を浴びるルカシェンコ政権を支持するロシアへの配慮を示した。

 

一方、「ロシアにとってベラルーシの喪失は致命的に危険だ」と指摘。両国が将来的な創設で合意している「連合国家」に関しても「両国の主権の完全な維持を前提としている」と述べ、ロシアを牽制(けんせい)した。ロシアは連合国家創設でベラルーシの属国化を狙っているとの見方も出ている。(後略)【11日 産経

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そのロシアも、ナワリヌイ氏の事件・拘束でプーチン政権の基盤に揺らぎも出ています。

 

もちろん、ロシア・プーチン政権がこけたらベラルーシ・ルカシェンコ政権も同じ運命でしょう。

ただし、ロシアにしても、ベラルーシにしても、強権を駆使する政権はなかなかしぶとい・・・というのも現実です。