ナイジェリア ボコ・ハラムに「赤ちゃん工場」「拷問寄宿学校」 されどナイジェリア、アフリカ | 碧空

ナイジェリア ボコ・ハラムに「赤ちゃん工場」「拷問寄宿学校」 されどナイジェリア、アフリカ


(ナイジェリアの最大都市ラゴスの世界最大規模の海上スラム「マココ」で、木製のボートをこぐ子どもたち【8月16日 GLOBE+】)

【未だ衰えていないボコ・ハラム ドローンを駆使し、政府軍より高度な武器も】
アフリカの地域大国、ナイジェリア。
しかし、ナイジェリアと聞いて思い浮かべるのは、やはりイスラム過激組織ボコ・ハラムです。

2015年のブハリ大統領就任後、国際社会からの支援を背景に掃討作戦の強化が図られ、一時はボコ・ハラムの勢力は衰弱した、支配地域も大きく狭まった・・・・とされていました。また、組織的にも分裂が起きているとも。

しかし、いまだに断続的にテロの報道が絶えないことからして、その勢力は未だ衰えていないように思われます。

国際的に大きく報じられた最近のテロとしては・・・(より小規模なものは頻発しているのでしょう)

****葬儀が襲撃され65人死亡、ボコ・ハラムが関与か ナイジェリア****
アフリカ西部ナイジェリアの北東部で葬儀の参列者らが武装集団に襲撃され、少なくとも65人が死亡した。地元当局は、イスラム過激派「ボコ・ハラム」が関与した疑いがあると見ている。

地元当局者によると、武装集団は27日、北東部ボルノ州の州都マイドゥグリ近郊で、埋葬の場に集まっていた参列者らを襲撃した。(中略)

ボコ・ハラムはナイジェリア北部の州を拠点とする武装集団で、同国全土で厳格なイスラム法(シャリア)による支
配を徹底させるという目標を掲げる。ナイジェリア北部はイスラム教徒、南部はキリスト教徒が大半を占める。

同集団はこれまでにも、教会やモスクに対する爆弾テロ、女性や子どもの誘拐、政治家や宗教指導者の暗殺などを繰り返してきた。

国連難民高等弁務官事務所によると、今年1月には衝突が激化したため2日間で3万人がナイジェリアからの脱出を強いられていた。【7月31日 CNN】
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ボコ・ハラムは、2014年4月のボルノ州女子生徒276名【ウィキペディア】を拉致した事件に代表されるように、拉致の面でも大きな被害をもたらしています。

****ナイジェリア、不明2万2千人 イスラム過激派襲撃で世界最多****
赤十字国際委員会(ICRC)は12日、イスラム過激派ボコ・ハラムによる住民への襲撃が続くナイジェリアで、行方不明者数が約2万2千人に上ったと発表した。ICRCに届け出られた国別の行方不明者数としては、世界最多となった。
 
ボコ・ハラムはナイジェリア北東部ボルノ州を拠点に、住民や軍兵士への襲撃や誘拐を繰り返している。行方不明者の約6割は未成年者。襲撃から逃げる際に、親とはぐれてしまった例が多い。北東部では推計約200万人が国内避難民になっている。【9月12日 共同】
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なお、ボコ・ハラムによる死者も2万人以上とされています。【8月1日 TRTより】

台風19号被害に関する二階発言でも問題になっているように、悲劇の程度を云々することは一概にはできませんが、数の面で見るだけでも、ナイジェリアのボコ・ハラム被害は世界最悪の状況のひとつとなっています。

戦術的な面で言うと、先のサウジアラビア石油施設攻撃事件でもドローン攻撃が注目されていますが、ボコ・ハラムもドローンを多用しているようです。

****テロ組織ボコ・ハラム、ドローンを使用か****
西アフリカにあるナイジェリアで活動するテロ組織ボコ・ハラムが、軍事作戦に対してドローンを使用していると伝えられた。

ボルノ州のババガナ・ズルム州知事は記者たちに発言し、「テロ組織ボコ・ハラムのメンバーは軍事作戦を監視するためドローンを使用している。この状況は、組織が軍事部隊よりさらに高度な技術を持っていることを示している」と述べた。

ズルム州知事はまた、テロ組織ボコ・ハラムのメンバーが軍事部隊よりさらに優れた技術的武器を持っており、これらを使用する能力があると警告した。

ナイジェリア軍の武器能力を技術戦の観点から再編する必要があると指摘したズルム州知事は、「さもなければ、テロ組織ボコ・ハラムとの戦いは終わらない。連邦政府はテロ対策目的で軍の軍事能力を高める必要がある」と述べた。(後略)【8月1日 TRT】
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こうしたドローンや高度な兵器が、いったいどこから流入しているのかが一番の問題だとは思いますが、いずれにしても、ますます政府軍の手におえない存在になっているように思われます。

【相次ぐ「拷問寄宿学校」「赤ちゃん工場」摘発】
今日取り上げたかったのは、ボコ・ハラムの話ではなく、それ以外のナイジェリア状況の話です。

ナイジェリアからは、ボコ・ハラム以外にも悲惨なニュースが届きます。

****「拷問寄宿学校」から再び学生300人超を救出 ナイジェリア****
ナイジェリア北部の警察当局は14日、イスラム教の寄宿学校で性的虐待などを受けていた男子学生300人超を救出したと発表した。同国では先月にも別の寄宿学校で、拷問や虐待を受けていた男子学生300人以上が救出されていた。
 
カツィナ州ダウラで13日、学生の一部が寮から抜け出し、街に出て抗議活動を行ったのを機に、警察が学校の強制捜査に乗り出した。
 
地元警察は報道陣に対し、300人を超える学生が非人道的な扱いを受けており、13日に抗議に出たり逃走したりしたと述べ、学校に残っていた約60人のほとんどは鎖でつながれた状態で発見されたと報告した。
 
警察によると、強制捜査が行われた学校は、現在70代後半になるイスラム指導者が40年前に創設したもので、後にこの創設者の息子が運営を引き継いだ。コーラン(イスラム教の聖典)を学び、薬物依存症などの病気の治療を受けるために家族に連れて来られた学生たちが入学していたという。
 
カツィナ州の州都から約70キロ離れ、ニジェール国境近くに位置するダウラは、ムハマドゥ・ブハリ大統領の地元。警察は、強制捜査中に辛うじて逃走した学校経営者と教員らは必ず逮捕され、「法の最大限の報いを受ける」だろうと述べた。
 
ナイジェリア北部では薬物使用率が高い一方、リハビリ施設が不足している。このため、薬物依存症になった子どもの親たちは仕方なく、事実上の矯正施設となっているイスラム学校へ子どもを入学させるが、学生たちはそこで虐待の対象となっている。 【10月15日 AFP】
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上記記事のもあるように、つい先日も同様の報道がありました。

“ナイジェリアのイスラム学校から300人救出 虐待被害、「拷問部屋」も”【9月27日 AFP】
【9月27日】では“鎖につながれ、小さな部屋に押し込まれた学生約100人を発見した。中には9歳という幼い子もいた。”“学生らが鎖につながれ、つるされたり殴打されたりしていた「拷問部屋」も見つかった”とも。

立て続けに類似事件が明るみになった背景は知りませんが、“イスラム学校”の名を使った同様の問題が全国広範囲にあることが推測されます。

また、別の問題も。

****新たな「赤ちゃん工場」発見、脱走した少女・妊婦ら保護 ナイジェリア****
ナイジェリアの最大都市ラゴスの警察当局は2日、生まれた子を販売する目的で妊婦に出産を強要する、いわゆる「赤ちゃん工場」を新たに発見したと発表した。

ラゴスではこの数日前、別の地域の「赤ちゃん工場」数か所から、妊婦19人が救出されたばかりだった。
 
当局によると、警官が施設から逃げ出した少女や妊婦ら7人を保護。その後、イソロ地区にある助産施設を発見した。
 
ラゴス警察はAFPの取材に、「妊婦7人がバスの停留所で待っているとの秘密情報を受け、警察官が向かって妊婦らを保護した」と説明。「事情聴取の後、女性らは自らを施設内で妊娠させられた20人(の一部)だと話し、全員が先月30日の夜に脱走したと語った」という。
 
今回発見されたのは年齢が13歳から27歳の女性7人のみで、警察は残りの13人が他の場所に逃げたとみている。
 
イソロの施設について警察は、「後に販売する赤ちゃんを生ませるため、若い女性が妊娠させられる収容所」と説明。「この非人間的で凶悪な犯罪」に関与した者を追っているとした。
 
警察がAFPに対して先月30日に明らかにしたところによると、先月19日に違法な助産施設として使用されていた市内の建物4か所で強制捜査が行われ、少女を含む妊婦19人と赤ちゃん4人が救出された。 【10月5日 AFP】
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こちらも、つい先日、同様の報道があったばかりです。
“「赤ちゃん工場」から妊婦19人、新生児4人救出 ナイジェリア”【9月30日 AFP】

【9月30日】によれば“一部の女性はだまされて、職探しのためラゴスに行くと言われたものの、気が付くと逃げられなくなっていた”“女児は30万ナイラ(約9万円)、男児は50万ナイラ(約15万円)で売られていたとされるが、「その目的や販売先はまだ明らかになっていない」という。”とも。

また、“石油が豊富な同国は、アフリカ最大規模の経済を誇る一方で、極貧生活を強いられている人の数が世界の他のどの国よりも多い。”とも。

「拷問寄宿学校」や「赤ちゃん工場」摘発が相次いでいるのは、何か政府・当局の方針があってのことか、たまたまなのかは知りません。

ただ、 “石油が豊富な同国は、アフリカ最大規模の経済を誇る一方で、極貧生活を強いられている人の数が世界の他のどの国よりも多い。”【9月30日 AFP】というナイジェリアの現状を示すものでしょう。

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アフリカ随一の産油国であるナイジェリアの国内総生産(GDP)は、約4千億ドル(約42兆円)に上り、アフリカ最大だ。

だが、世界銀行が定めた1日1・9ドル未満の貧困ラインで暮らす人は人口の半数近い約8700万人で、世界最多とも言われる。

国際NGO「オックスファム」は「ナイジェリアの貧富の差は極めて深刻で、富裕層5人が持つ財産約300億ドルで、国内の極度の貧困を解決できる」と指摘する。【8月11日 朝日】
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【国内市場の縮小が避けられない日本にとっては、「されどナイジェリア、されどアフリカ・・・」】
アフリカは約13億の人口を抱え、2050年には倍増し、世界人口の4分の1を占める見通しです。

この巨大市場を目指して日本も、8月末に開催された第7回アフリカ開発会議(TICAD7)などでアプローチを行っているのは周知のところです。

しかし、インフラの未整備、治安の不安などが山積するアフリカに対する日本の進出は順調とは言い難く“「最後の巨大市場」と呼ばれるアフリカに、中国をはじめ新興国が進出し、主な援助国だった欧米や日本の存在感は薄れた。会議の目的も「援助」から「投資」へと軸足が移ってゆく。”【8月11日 朝日】とも。

そうしたなかにあって、アフリカ最大の経済規模を持つナイジェリアは「巨大市場」の中核とも言える存在です。

****超過密都市、ゆがみと商機 足りぬインフラ、投資狙う日中****
人口が急激に増え続けるアフリカ。それに伴う問題が山積する一方で、経済成長を牽引(けんいん)することへの期待も入り交じる。

ナイジェリア最大都市ラゴスは人口が約2千万人と推定される超過密都市だ。(中略)

ラゴスには、国内外の企業の拠点があり、周辺地域からも人が流れてくる。急激な都市化に交通インフラは追いついておらず、慢性的な交通渋滞に悩まされている。夕方のラッシュ時には、中心地から車で約25キロ先の国際空港に着くまでに3~4時間かかることもある。
 
こうした状況にビジネスチャンスも生まれている。
 
中心部にほど近い場所で、巨大な高架橋の工事が急ピッチで進んでいた。ラゴス州政府は、人口増や都市化に伴う渋滞を緩和しようと、ラゴス一帯で六つの次世代型路面電車(LRT)とモノレール一つの整備など、数百億ドル規模の計画を進めている。

中心部から西に約27キロを結ぶLRTの工事を受注したのは、中国土木工程集団などの中国国有企業だ。2022年までの営業開始を目指す。
 
日本も建設計画への参加に意欲を示していた。ラゴス中心部に建設予定の全長約24キロのモノレールについて、国際協力機構(JICA)は円借款案件での協力を検討し、現地に調査団も派遣してきた。ただ、モノレールの計画は停滞しているのが現状だ。
 
ラゴス都市圏交通局(LAMATA)のアビオドゥン・ダビリ代表は、「渋滞の緩和は最大の課題。まずはラゴス郊外と中心部を結ぶLRTの建設を優先したい。日本には、モノレールではなく、東部と中心部を結ぶLRTの建設の方で協力をお願いしたい」と語った。(後略)【8月11日 朝日】
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アフリカ市場をめぐる日中、欧米などの争いという話はよく聞くところですが、以下の話を聞くと、日本と中国の競争なんてとんでもない、問題外だ・・・という感も。

****ウガンダ人学者「アフリカ人が逃げ、中国人がやって来るのはなぜか」*****
2019年9月30日、中国メディアの観察者網は、ウガンダ紙モニターにこのほど、「アフリカ人が大勢で逃げている間に、中国人がやって来るのはなぜか」とする記事が掲載されたことを紹介した。筆者は、ウガンダの学者のSamuel Sejjaaka氏。

観察者網が要約して伝えたところによると、Sejjaaka氏はまず、「チャイナデイリーによると、アフリカ大陸の中国人移民の数は、1996年の16万人未満から2012年の110万人以上へと、20年足らずで7倍近く増えた。その数は現在、200万人を超えている。その一方で、アフリカ人はなんとかしてこの大陸から逃げ出し、欧州や米国へ渡ろうとしている。報告によると、2018年だけで2262人ものアフリカ人が南ヨーロッパに渡ろうとして命を落とした」とした。

その上で、「ここでのポイントは、中国人は中国の金と商品が行く所にすぐに移動し、しかも彼らは母国と受け入れ国からの財政支援を受けられるのに対し、なぜアフリカ人は、労働力輸出機関の助けを借りてまでして自分たちの国から逃げ出そうとしているのかだ」とした。 【10月5日 レコードチャイナ】
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アフリカ在住の中国人が200万人を超えている一方で、日本人がどれだけいるのか?

外務省HPの海外在留邦人数統計によれば、長期滞在者と永住者を含め、アフリカ全体で7494人。
その36%は南アフリカです。ちなみにナイジェリアには100人。

“中国人が200万人”とは、ベースが異なるのかもしれませんが、比較にも何ににもならない・・・という感じが。
ましてや“競争なんて・・・。

****腰が重い日本企業のアフリカ投資 「常識」にとらわれすぎていないか****
(中略)欧米諸国や中国の対アフリカ投資との対比でいえば、日本の対アフリカ投資額は英米仏の5分の1ほど、中国の3分の1程度に過ぎない。

昨年3月まで総合商社のシンクタンクで働いていた筆者の限られた経験を振り返っても、アフリカへの投資を尻込みするメンタリティーが日本の企業エリートの中に根強く残っていることは間違いない。

■「アフリカで何のビジネスが……」
「さっきから話を聞いていると、アフリカでのビジネスが魅力的だと仰っているようですが、金融機関もインフラもないようなところで、何のビジネスができるというんですか?」

4年ほど前、あるビジネスマン向けの講演会で、アフリカにおける日本企業のビジネスの可能性について講師として話したところ、筆者より少し年上と思しき50代前半くらいのベテラン商社マンから、そんな質問(批判?)をいただいたことがある。(中略)

物質的にも制度的にも全てが用意された状態で力を発揮する経験はそれなりに積んでいるが、敗戦後の日本を焦土から復興させた世代のような「何もない状態から何かを自分で生み出した経験」には乏しい。

我々の世代は「金融機関もインフラもない」アフリカで一からビジネスを立ち上げる際に必要な意志や能力が高いとは言えないのではないか。アフリカ投資における日本企業の「腰の重さ」には、そうした要素も関係しているのではないだろうか。(後略)【1月24日 GLOBE+】
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「ないものはつくる。そこにビジネスチャンスも生まれる」という発想が必要とのことですが、そこらは私はビジネスマンでもないので省略します。結論だけ。

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少子高齢化による国内市場の縮小が避けられない日本は今後、企業が国外で稼ぎ、収益を本国へ還流させていくしかない。日本経済総体がそういう方向に転換していかないと、少子高齢化によってますます深刻化する人口オーナスを克服できないだろう。

2050年には人類の4人に1人がアフリカ人になる。その時、日本企業がアフリカでふさわしいプレゼンスを確保しておくことは、アフリカのためではなく日本のサバイバルのために必要である。【同上】
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