ホステスの仕事というのは思った以上に私には向いていなかった。
第一、私はお酒がほとんど飲めない。
女だらけの裏の世界で殴り合いのケンカがあったりするのも、いざこざ嫌いの私にはつらかったし、媚も何も教わってもちっとも実践できず、お客さんに人気もでなかった。
クビになるたびすぐ次で雇ってもらえるのだが、最初だけお客に人気が出るものの、そのため裏でいじめられ、容姿以外に何もないのでお客もだんだん離れていく。そしてクビ。このパターンを3回繰り返した。
実際私には妙なプライドがあって、それが会話術の妨げとなり、ホステスの仕事ほど向いていないものはないと、今冷静になってもしみじみ思う。
もちろん私なりにがんばりはした。
飲めないお酒を無理に飲んで、泣きながら裏で吐いたりもした。
3回目の店をクビになったとき、その店で知り合ったミカがストリップクラブを紹介してくれた。
私は、高校と短大でダンスのクラブに所属していたので、踊りは特技だ。
ミカは「手入れがあって営業停止をくらったばかりの店だから、今ならいわゆる視聴者参加型イベントってやつがないよ」と私を安心させた。
視聴者参加型イベントって?と聞こうかと思ったが、なんとなく想像できたし聞いたら先に進めなくなりそうな気もしたので、質問はしないでおいた。
行ってみると、汚い事務所で即興のダンスをやらされ、即採用が決定した。
いろいろと抵抗のある思いもしたが、なるべく何も考えずすべてのことに取り組んだ。
裏寂れたストリップクラブだったが、スナックで働くよりはまだ楽しかったし、たまたまかもしれないが、踊り子は、スナックのホステスよりも皆サバサバしていて明るかった。
私自身、その頃にはもうこわいとかいやだとかいう思いはなくなっていて、笑顔さえ作れるようになっていた。
私は昔から割と逆境に強いところがある。
どん底の中にいても、何か気持ちが明るくなることを見つけようと、自然にしてしまうタイプなのだ。
その店には奥に個室があって、客が別料金を払えばそこで踊り子を呼んで自由に遊べるようになっていた。
ただしその部屋に新人を呼んではいけない決まりになっている。
店側も商売上手なもので、新人にある程度人気が出たところを見計らって、解禁令を出すことにしている。
その解禁日を1つのイベントとし、その日は入場料金自体を上げて、大勢の客を呼び込むことになっていた。
私の解禁日は、入店から4ヶ月と少しほど経った日だった。
正直、少しだけいやだったしこわかった。
実家の工場倒産以来、覚悟は決めていたものの、いわゆる「本番」は、実は経験がなかった。
自分で言うのもなんだが私はかなり人気があったようで、普通は解禁のイベントといってもそこまではやらないのに、私の場合はいわゆる「視聴者参加型イベント」が計画されていた。
つまり、はっきり言うとライトの当たる円形ステージでの公開セックスだった。
実は私は、このときのことはあまり記憶がない。
とにかく公開セックスが始まるや否や、Mに無理矢理、舞台の裏側へ引きずりおろされていた。
後からミカに聞いたのだが、Mは私がホステスだった頃、1度だけ店に来たことがあり、そのとき私を贔屓にしようと思ったらしいのだが2度目に来たときにはすでに私の姿はなく、風俗業界を私を探し歩いていたというのだ。
Mは裏口から私を外へ連れ出した。
私の腕にMが強くつかんだ跡がしっかりと残っていたのが妙に生々しく瞼に焼きついている。
これも後ほどミカに聞いたのだが、Mの知人に名士(たぶん大物政治家)がいるために、Mは単なるサラリーマンの割にはいろいろなところに顔がきくらしい。
まったく厄介な存在だった。
(3に続く)