ヤタピちゃんとななぱーくん(とモブになり果てるカムラくん)の SS
私のクラスには、ちょっぴり変わった人がいる。
ななぱー君。本名は七瀬君。だったかな?何でななぱーって呼ばれてるのかはわからないけど、みんながそう呼んでいるから私も近しい名前では呼んでいる。
あと何でか、頭に導火線がくっついてる。燃えてたら煙たいから燃えてはないけど、どうしてそんなものが頭についてるのかは正直気になる。
彼はいっつも、「トリプルバトル」っていうちょっと変わったルールを考察してる。私もポ
ケモンはやったことあるけど、そこまでガチンコになってやったことはない。
「おはよっ。ぱーちゃん」
「あっ…や、ヤタピちゃん。お、おはよ」
こんな会話くらいしか普段はしないけれど、そんなぱーちゃんが私に好意を抱いているのは知っている。
ちらちら視線感じるし、正面向かって話そうとすると露骨に目を逸らされるし。でも、私に
は『カムラ』君っていう心に決めた人がいるから、その気持ちには答えられないな。
「ね、ねぇ、ヤタピちゃん」
「ん?どしたの?」
緊張気味なぱーちゃんを正面に向かえるように自分の席に座って、話始めるのを待っていてもなかなか話始めないから、少し催促してみた。
「ぱーちゃん?」
「あ、ご、ごめん。やっぱ何でもないや」
なんだっただろう。まさかだけどさ、ダメもとの告白?いや、嬉しいんだけどさ。なんか釈然としないなぁ。
「お~い。ヤタピ~」
「あっカムラ君!おはよ!」
「おう。おはよ。ちょっといいかな」
「うん」ぱーちゃんには見せつけているようで申し訳ないけど、こういうことだから、ぱーちゃんとはお付き合いできないかな。
しょんぼりしているぱーちゃんをしり目に、カムラ君を追いかけて、一旦教室を出た私は数刻後、悲しい現実を見ることとなる。
「なぁ、ヤタピってさ、ななぱーのことどう思ってるの?」
「えっ?どういうこと?」
「どうもこうもないよ。あいつのことどう思ってるんだってこと」
「どうって…、そりゃ、ただの友達だよ」
「じゃあ!」
急に声を荒げるカムラ君の声に多少驚きながらも、いたって冷静に返していく。
「落ち着いてよカムラ君。別にぱーちゃんとはそういう関係じゃないし、嫉妬するくらい近いわけでもないじゃん?」
「ほんとにそうか?じゃあその呼び方は?席が近いのは知ってるけど、それだけでそこまで仲良くなるもんか?それがほんとに根拠のあることなのか?」
なんか、怖い。カムラ君が若干焦ってるようにも見える。ぱーちゃんのことは、そりゃ多少気にはなるけど、それは興味本位的な話であって、決してそういう感情は持ってないと言える。
「不安にさせちゃってごめんね。でも、大丈夫だよ」
「……どこが?俺が『あいつと接触するな』って言ったら素直に従うのかよ」
それはどうだろう。でも、なんとなくそんな気もする。でもなぁ……。
「それは…」
「確約できないんじゃん。どうすんだよ」
どうするって言われたって、それはそれ、これはこれとしか言いようがない。
「……。はぁ~。分かったよ。互いに一旦頭を冷やそう。その上で、もう1回話し合おうか」
「……うん」その場ではそういう和解をし、一旦授業を受けることに。私とカムラ君は違うクラスだから授業で会うこともない。
「…はぁ~」
「ね、ねぇ。大丈夫?」
「あ、ぱーちゃん……。…うん。大丈夫だよ」
そういう私の笑顔は酷く強張っていたのだろう。より一層、ぱーちゃんを心配させるだけになってしまった。
そして、その放課後。1日考えて、『あ、カムラ君への気持ち冷めてる』ってことに気づいた私は、改めてカムラ君と対峙していた。
「…カムラ君」
「……で?どうなんだよ」
「別れよ。なんか、無理かもって思っちゃった」
「…だろうな。どうせ、ななぱーだろ」
その言い方、気に食わない。
そんなことを思いながら、改めて、友達以上の感情をぱーちゃんに対して抱いている自分にも驚いていた。
「はぁ~。じゃ、そういうことらしいし、俺はさっさとここで退散するよ。精々頑張れよ。
ヤタピ」
「あっうん…」
そこで一区切りついた私の恋愛は、改めて『ぱーちゃんをどう思ってるのか問題』を解き明かさなければならない。
「……はぁ~。結局、どう思ってるんだろ。私は」
こういう時、優柔不断さが仇になってると思う。
翌日
今日も授業を受けながら、1日色々考えてみたけど、やっぱり、ぱーちゃんのことが大分気になる。かなり強引だけど、今日の放課後は一緒に帰れるように調整したし、どう思ってるのかを素直に打ち明けちゃおう。
一緒に歩いている間は、他愛のない話ばかりしてたけど、そろそろ家も近いし、思い切って言い切ってみることにした。
「ねぇ、ぱーちゃん」
「どしたの?」
「私ね、カムラ君と別れたの。なんか合わなくて、というよりかは、いつの間にか冷めててさ」
その声に、多少期待と不安の織り交じった顔を見せたぱーちゃんに向かって、無意識にこう言い放っていた。
「それでさ、ぱーちゃんさえよかったらなんだけどさ。わ、私とお付き合いしない?私さ、あなたのこと、もっと知りたい」
その言葉にぱーちゃんは完全に石化していた。…あれ?私、後半なんて言った?
『私とお付き合いしない?』……?
あれ?私、勢いで告白しちゃった?ぱーちゃんに?…我ながら色々すっ飛ばしすぎじゃない?
……いやいや、落ち着け。確かにぱーちゃんは私のことが多分好きで、そんなぱーちゃんの
ことは多少なりとも気にはなってたけど、それは友人としてというか……。
……。あれ?誰に向かって言い訳してるんだろ。
「…ぱーちゃん?」
石化したまま動かなくなってしまったぱーちゃんの反応を待つこと
1 分強。
「え、えっとぉ…、俺でよければ…その、お願いします…?」
や、やった~!
「ヤタピちゃん?」
「えっ。あ、えっとね。」
「うん」
嬉しいけど恥ずかしくて、でもやっぱり嬉しくて。弾けそうな心を抑えながら、ぱーちゃんに近づいてもう一度言ってやった。
「よろしくね!」