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大塚くんに

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しゃもじの話だけ再掲します。


よく晴れた日曜日、僕は近くの砂浜を歩いていた、無論一人で。

こんなはずじゃなかったと思いながらさりげなく額の汗をしゃもじで拭う。
そう言えば、何故しゃもじをここに持ってきたのだろう…久しぶりのこの気持ちを無駄にしてはならない、そんな思いが僕を砂浜へと走らせた。

しゃもじは僕の友である。
鉄道会社に入社して20年、晩酌とアイドルを追いかけ続け、気づけば人生の半分が過ぎ去っていた。
しゃもじとの出会いは朝の通勤ラッシュ、満員電車に人を押し込むのにしゃもじが使えるのではないか、
そんなてきとうな考えからであった。
次第に僕のしゃもじ使いっぷりは話題となり、人生を謳歌し始めた。
僕としゃもじにスポットを当てた番組の取材に来たリポーターと結婚。子供ももうけた。共働きであったため比較的裕福な家庭を持つことができた。

人生を華やかにしてくれたのがしゃもじであったのならば、人生を転落させたのもしゃもじであった。

要は、僕が妻よりもしゃもじを愛してしまったのだ。妻は子供を連れて家を出てしまった。僕は子供の養育費の支払いをしながら一人この土地に根を下ろしている。

しかし、しゃもじを恨んではいない。



砂浜に来たからといっても特にやることはない。のんびり海を眺めていると何かが打ち上げられた。
近づいてみるとそこには
Rice ball があった


よく見るとほのかに茶色い炊き込みご飯だった 
いや嘘
パラパラだからチャーハンかもしれない

まずこれは米なのか? 米と見せかけたカリフラワーライスかもしれない。 (僕は最近健康を気にしている)ライスボールだとはいったが正直定かではない。でも身近なもので言うならばおにぎりだった。
カリフラワーライスなら食べて見たいがチャーハンなら食いたくない。 炊き込みご飯なら具だけ食いたい。

この物体の正体を突き止めたかった。
彼はこの未知物体に話しかけて見ることにした
「よぅ」

「今日の部活なんだった?」
(部活なんてとっくに終わっている)
「ムビチとドッチとサッカーをしたよ」
僕は嘘をついた。

「ありがとう」
それは波に紛れて逃げていった。

「それ」はまんまるで部活に行かなかったことを隠そうとしたかつての同輩のようにも見えた。
それはおにぎりか?
いや、むしろまんまるで〜

久しぶりの嘘は僕にほんの少しの開放感を残し、彼方へと去っていった。
僕はしゃもじを投げ捨て、勝利の夜を彩る美酒を求め向かった。

今の僕にとって勝利の美酒とはつまり第三のビール出会った。
酒の肴は無論推しているアイドルのポスターであった。

やはり僕は変わらない、
それがいいのだ

美酒を求め、砂浜を進んだ

第5話へ続く