ナターシャ・ピエール・ザ・グレート・コメット・オブ・1812 | アクエリアス

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ミュージカル『ナターシャ・ピエール・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』

2017年トニー賞に最多ノミネートされた作品の日本初演らしい。



19世紀ロシアの社交界。浮気した女と、浮気された男とが、束の間心を通わせるも離れていく煌めきを描く。
1812年はモスクワの空に彗星が降り注いだらしい。

ロシアは貧富の差が激しいというが、芸劇プレイハウスの客席も、チケット代の高低の違いでまさにそれ。16000円のコメットシートはキャストに近い空間をドリンク付きで味わえるが、13000円のS席の貧民はキャストを神のように迎えるのみ。
特に1階の端や後方はキャストの視線さえ来ず冷めたアウェイ感。これ以上ないくらい温度差が激しかった。
2階にもS席があったが、どんな俯瞰具合だったんだろう。

キャストの歌唱力の温度差も激しい。
圧巻の歌声の井上芳雄、ボリューム感ある霧矢大夢や原田薫と、魅了する人がいる中で、ただ声を張り上げるだけで歌詞が聞き取れず、歌ではキャラの想いも伝わってこない人など様々。
イケメンの小西遼生や水田航生もカッコよく出ていたが、井上芳雄さんにも匹敵するよな歌唱力じゃないと、ドラマチックに映えない。

観ていてうんざりするような嫌いなキャラも多過ぎた。というか、想いに共感できるようなキャラが全くいない。
登場人物の誰かに興味が持てないと、作品や内容そのものも薄っぺらく感じてしまう。
アンサンブルのやたらめったらの歌声や行進、手拍子を促すパフォーマンスもウザく感じた。

ロシア風の衣装が包むオーケストラピットはホットで、太鼓の低い音の響きが心地良い。
人間の歌声にも、重厚で逞しいローボイスが欲しかった。

井上芳雄さんのピエールを観てて、ふと『組曲虐殺』の小林多喜二を思い出した。こまつ座&ホリプロ公演『組曲虐殺』も今年再演。井上さんにはハマり役だし、土屋祐壱さんも出るから観たい。