演劇 夢の裂け目 | アクエリアス

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新国立劇場開場二十周年記念公演『夢の裂け目』

井上ひさしが、新国立劇場へ書き下ろした【東京裁判三部作】(『夢の裂け目』『夢の泪』『夢の痴』)。
その中から『夢の裂け目』を、開場20周年の節目の年に、栗山民也の演出で、キャストも新たに上演。





井上ひさし「夢の」東京裁判三部作は8年前に観劇。
今回上演するのは1作だけだが、魅力あるキャストに惹かれた。


昭和21年6月〜7月の東京・根津。突然GHQから東京裁判に検察側の証人として出廷を命じられた紙芝居屋の天声こと田中留吉と、家人や周囲の人達が経験する、滑稽で恐ろしい真相をあぶり出す。

新キャストにやけにミュージカル畑が多いなと思ってたら、これは歌と音楽がたっぷり盛り込まれた音楽劇だったと思い出す。
冒頭からみんなが思い思いに歌い出すが、さすがに歌詞がしっかり伝わってくる。台詞の声の張りもよく、動きもきびきびしていて、全体的に溌剌と若返ったような印象。

留吉の娘で女学生の道子の唯月ふうかが、ソロ曲を伸びやかに綺麗な声で歌い上げ、風景を柔らかく包む。可憐で素直で頭が良くて穏やかで、あらゆる情勢や知識を吸収していく道子を、ふうかさんが自然体で好演。ふうかさんのバラのような肌の色も眩しく、存在だけで癒された。

留吉の如く紙芝居の口上を、滑らかに達者に喋り倒す関谷三郎を、玉置玲央が熱演。これまで観たどんな役よりも面白くハマっていて、玉置さんの実力と経験がいかんなく発揮されている。
後半は知識の宝庫と化すように難解な解説や重大な説明を喋りまくる成田耕吉が、道子の心を動かす。眼鏡なインテリ風に役作りした上山竜治が、これまで観たどんな役よりも堅実にハマっていてカッコよく見える。歌より淀みない台詞使いが見事で、上山さんの新たな魅力が発揮された。

前回の『夢の裂け目』にも出演した木場勝己は、笑顔や立ち姿や踊りや歌まで総てが、アニメのキャラクターの如く、愛らしくて和ませる。

東京裁判中で披露した紙芝居実演のおかげで、羽振りも良くなりつい調子をこく天声たちの一派。
段田安則は迫力ある喋りと口上が圧巻だが、それ以上に、どこか驕りをもった悪びれた顔が垣間見えて、感情移入できない黒さがある。
高田聖子も吉沢梨絵も、普通の婦人のハズなのが、段田と一緒にいると、悪巧みをする悪女に見える時もある。
実力派の抜群のキャスト陣なだけに、庶民が持つもうひとつの深い闇の姿にすっきりしない終わりを見た。

東京裁判の持つ重大なカラクリは、知り得ることも当然大切だが、知らなくても庶民には関わりないこと。
時代は庶民を賢く豊かに変身させ、紙芝居は漫画やアニメにとって替わられる。
残り2作品も新生キャストでまた観たくなってきた。

最前列上手端っこ席だったが、キャストは結構端まで来てくれた。ふうかさんも間近で拝めたし、玉置さんや上山さんも凛々しく見えた。
唯月ふうか&上山竜治という、エポニーヌ&アンジョルラスのデュエットを聴けたのも貴重な機会w。
4人による生演奏も豪華だが、キーボードの朴勝哲さんと栗山民也さんはいつも一緒だな。

客層は年配の方が多かったが、すぐ後ろの70代位のご婦人が劇中の大切な場面でビニールをしきりにガサゴソしていてホント耳障りで腹が立った。こういう演劇でも、マナーのない年配客っているもんだ。

当時の紙芝居の貴重な資料




次の観劇は『消えていくなら朝』