BL表現を含みますので、苦手な方はスルーでお願い致しますm(_ _)m

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、俺たちは何事もなかったかのように食堂にいた

チャンミンとS氏が朝食を摂っている間、俺は壁際に立ち、声を掛けられればすぐにコーヒーを注いだり、お代わりのトーストを運んだり、いつも通り執事の仕事に専念していた

でも油断をすると、ゆうべチャンミンと過ごしたひと時が頭の中に浮かんで来て、ついぼんやりとしてしまい、何度かS氏に注意されてしまった

 

そして朝食後、書斎に郵便物を届けに行くと、今度はチャンミンがデスクに座ってぼんやりと宙を見つめていた

 

 

「...チャンミン様?」

 

 

俺が声を掛けると、ハッと我に返って顔を上げた

 

 

「なんだ、ユノか」

 

「何か...考え込まれていらっしゃいましたか?

お邪魔でしたら一旦下がってまた出直して参りますが」

 

「いや、いいんだ

考え込んでいたというか...ゆうべの事を思い出していただけだから」

 

「あぁ...」

 

「ユノもなんでしょ?

今朝あの人に、注意散漫じゃないかって何度か言われてたよね」

 

「お恥ずかしい限りでございます」

 

「あ、ちょっと待った

今は二人きりなんだから普通に喋ってよ」

 

「ですが、いつ誰が入って来るか分かりませんので...」

 

「だったら鍵を掛けよう」

 

 

チャンミンはそう言うと、つかつかとこちらに向かって歩いて来て、そのままガチャリと内側からドアの鍵を掛けてしまった

それから大きな窓に向かうと、それぞれレースのカーテンをぴたりと締めた

 

 

「...そこまでなさる必要がございますか?」

 

「そうでもしないと普通に喋ってくれないのなら、これは必要な事だよね」

 

 

それを聞いて、俺はやれやれと首を横に振った

チャンミンが昔からこういう性格なのは分かっていたけれど、自分に関わる事となって初めて、困ったものだと思った

 

 

「用が済んだらすぐに出て行くつもりだったんだけど」

 

「そんなのダメだよ、僕が行かせない」

 

 

チャンミンはそう言うと俺の手を引いてソファに座らせ、その隣に自分も座った

そして体をぴったりと密着させると、俺を見つめる眼差しは既に甘い色を帯びていた

 

 

「朝からずっと、ゆうべの事を思い出して体が勝手に熱くなっちゃうんだ

こんなんじゃ何も手に付かないよ...どうしてくれるの?」

 

「どうしてくれるって言われても...

俺だって、ゆうべのチャンミンの色気にやられてるんだ

あんな表情をするなんて知らなかったよ」

 

 

チャンミンは嬉しそうにふふ..と笑った

ずっと見て来たつもりでも、俺にとっては初めて知るチャンミンばかりだった

甘い吐息、艶めかしい手付き、滑らかな肌の感触、汗ばんだ肉体...そのどれもが強力な媚薬となって、何時間も経った今でもまだ俺を酔わせていた

 

 

「今夜もいい?」

 

「ダメって言っても却下されるから反論はしないけど、明日は月一の館内点検の日だから少し早く起きないと」

 

「じゃあ、いつもより早めに寝室に行けばいい」

 

「...お好きにどうぞ」

 

 

短くもしっかり濃厚なキスを交わすと、名残惜し気なチャンミンをその場に残して書斎を出た

まだ体は火照ったまま余韻が残っているけれど、あのまま一緒にいたらチャンミンが何をするか分かったものではない

まだS氏が屋敷にいる以上、迂闊に二人きりの時間を持つのは危険だ

 

 

書斎を出て廊下を歩いていると、向かいから当のS氏がやって来て、俺に気付くとサッと表情を硬くした

 

 

「チャンミンは一緒じゃないのか」

 

「チャンミン様は書斎で書き物をされていらっしゃいますが、何か御用でしょうか?」

 

「いや、これといって特に用という用ではないから後にする

...そう言えば、お前とチャンミンはいつから親しく接するようになったんだ?

俺の記憶だと、子供の頃は確かに兄弟みたいに仲が良かったとは思うけど、大人になってからは殆ど私的な交流はなかったと思うんだ...どうなんだ?」

 

「親しくしているように見えているのでしたら、それは私が至らないせいでございます

チャンミン様をお支えするのが私の役目でございますから、私的な交流などございません」

 

「だよな...うん

ちなみにユノは、チャンミンの恋愛に関してどこまで知ってる?」

 

「私がですか?私は全く...」

 

「だよな...いや、何でもない、今の質問は忘れてくれ」

 

 

S氏はそう言うと踵を返して戻って行った

やはり俺とチャンミンの仲を少なからず疑っているのだろう、となると、使用人の中にもS氏と同様、最近の俺たちの様子に違和感を覚えている者がいるかもしれない

でも、チャンミンと想いを分かち合ってしまった今、かつてのように自分を誤魔化す事は不可能だ

それに、俺だけならともかく、チャンミン自身が自分の気持ちを素直にぶつけて来るようになってしまったのだから、これは俺一人ではどうにもできない

 

S氏の事が気になりつつも、職務のために先を急いだ

 

 

 

 

 

その日の午後、昼食の準備に取り掛かっているとメイドがやって来て、S氏が荷造りを始めていると告げた

急いで出て行くと、確かにS氏の荷物が玄関脇に並べてあり、その傍にはチャンミンが立っていた

俺に気付いて目が合うと、気まずそうに口をキュッと引き締めた

 

 

「チャンミン様、あの方はお帰りになられるのですか?」

 

「うん」

 

「何か...話をされたのですか?」

 

「まぁね...

僕とあなたの間に可能性はないって伝えたら、顔色を変えていきなり帰り支度を始めたんだ」

 

 

暫くしてS氏がやって来ると、確かに血の気の無い青ざめた顔をしていて、俺たちが並んでいるのに気付いて一瞬足を止めたものの、サッと俯いて足早にチャンミンの前を通り過ぎると車に乗り込んだ

そしてそのまま何も言わずにエンジンを唸らせ走り去ってしまった

残された俺たちはS氏の車が通った跡を呆気に取られて眺めていたけれど、ふと我に返って顔を見合わせた

 

 

「怒らせてしまったと思う?」

 

「いえ、恐らくショックを受けられたのだと思います

黙って出て行った事をきっと悔やんでいらっしゃるでしょうから、いずれ電話が掛かってくるのでは?」

 

「そっか...何だか少し胸が痛むね

電話が来たら僕も謝っておこうかな、傷付けてしまったから」

 

「そうなさるのがよろしいかと思います

そろそろ昼食のお時間ですので、食堂へお願いいたします」

 

「ユノも一緒に食べる?...って、絶対断るよね」

 

 

俺が笑顔で返すと、チャンミンは肩を竦めて屋敷の中へと戻って行った

ひとまずS氏が帰ってくれて、俺は一安心だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...今夜もチャンミン様の寝室で?

あの方が帰られたので、もう必要ないのでは?」

 

「ねぇ、本気で言ってる?

僕たち愛し合ってるんだよ?

どうして別々の部屋で寝なくちゃいけないの」

 

 

その日の午後、書斎にコーヒーを運んで行くとチャンミンが堂々とそんな事を言うので、俺は慌てて書斎のドアを閉めると念の為に鍵を掛けた

 

 

「チャンミン、もう少し言葉に気を付けて

もしメイドがドアの外にいたらどうするんだ」

 

「その時はその時だよ

そもそも自分の家なのに自由に会話もできないなんておかしいよ」

 

「気持ちは分かるけど、これに関しては慎重に行動しないと俺がここに居られなくなる」

 

「でもさ、僕はこの屋敷の主人なんだよ?

ユノと僕の関係に何か不満があるなら僕が説得するし、それでも認めてくれないのならその人に暇を出すしかない

ねぇ、何か間違った事言ってる?」

 

「言ってる事は間違ってはいないけど、すぐには受け入れられないだろうね

とりあえず今夜のところはチャンミンの寝室で寝るけど、明日以降は分からない」

 

「いっそ僕の寝室の近くの客間をユノの部屋に変えてしまおうかな

客間の仕様を執事の控室って形で手直しすれば問題ないんじゃない?」

 

「...そこまでするのはどうかな」

 

 

 

結局、チャンミンの強い要望で客間の一つが執事の控室となり、俺は使用人棟からチャンミンの寝室の隣に移る事になった

日によって俺がチャンミンの寝室に行ったり、逆にチャンミンが俺の部屋に来たり、誰にも知られないように逢瀬を着実に重ねて行った

 

 

他の使用人や来客のいる前では主人と執事の関係だけれど、二人きりの時は名前で呼び合い、夜はベッドの上でお互い本能のままに愛し合った

 

 

 

「ねぇユノ、今度二人でどこかに旅行しようよ」

 

「旅行?」

 

「執事としてついて来るだけなんだから誰にも怪しまれないし、誰にも咎められない

運転手がいると厄介だから、ここは電車の旅にして、移動はタクシーにしよう

どうかな、いいアイデアだと思わない?」

 

「まぁ...チャンミンにしてはなかなかの名案だね」

 

 

チャンミンは嬉しそうにふふ..と微笑むと、体をうつ伏せにして上半身を少し起こした

拍子に肩から毛布が滑り落ちて白い肌が露わになった

 

 

「ユノはどこに行きたい?」

 

「もう決めてるんじゃないの?」

 

「まさか!!だって今思い付いたんだよ?

でもそうだな...誰にも邪魔されずに思いっ切り愛し合える海辺のリゾート地なんてどう?

孤島とか無人島だったら最高だね」

 

「...何だか不純な目的だな」

 

「ダメ?」

 

 

チャンミンはそう言いながら俺の胸に顎を乗せ、上目遣いでこちらを見た

そんなに愛らしい顔で見つめられたら、どんなに不純な目的だろうと良くなってしまう

 

 

「チャンミンの行きたいところに行こう」

 

「じゃあ、さっきの案で計画を立てるね

でもその前に...もう少しユノが欲しいな」

 

 

チャンミンは悪戯っぽく笑うと、もぞもぞと動いて俺の首筋に顔を埋めた

今こうして甘えて来ている美しい青年は、俺の幼馴染であり、恋人であり、俺が執事として仕える屋敷の主人だ

不思議な縁もあるものだ...なんて考えていたら、チャンミンが顔を上げた

 

 

「どうしたの?」

 

「ん?」

 

「焦らさないで早く来て」

 

「...仰せのままに、ご主人様」

 

 

俺はチャンミンの体を抱えてくるりと反転させると、薄く開いた唇に顔を近付けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんにちは

いつもご訪問ありがとうございます

色っぽいシーンは少ないですが、楽しんでいただけましたでしょうか?

二人が無事に「心置きなく愛し合える」旅行ができた事を、妄想の中で想像してください(笑)

最後までお付き合いいただきありがとうございました!!

 

※画像お借りしました※