BL表現を含みますので、苦手な方はスルーでお願い致しますm(_ _)m

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チョン君が僕の太腿の脇に手を置くと、ソファの座面に体重がかかった弾みで僕の体はチョン君の方に傾いた

美しい鼻筋と真っ黒な瞳が視界一杯に入って来て、僕は思わず息を止めた

こんなに近くでチョン君の顔を見たのは初めてだ

 

 

「な...何する気?」

 

「自分が俺と同じだって知らなかったんだね

俺、とっくに気付いてるんだと思ってた」

 

「超能力でもない限り、そんなの分からないよ」

 

「そう?その割にはすぐ赤くなってたよね

だから俺、脈ありかなって思ってたんだけど」

 

「...だから僕にちょっかい出して来たの?

牛丼屋に誘ったり、僕の家で泊まるとか言い出したり」

 

「ちょっかいって、言葉が悪いな

牛丼屋は単純に親切心から誘っただけだよ

家に行きたいって言ったのは、本当にドラマが見たかっただけ」

 

 

顔に息がかかるくらい近くて、チョン君から甘ったるいカシスの香りがした

余りの近さに後ろに下がろうとしたら、チョン君の手がスッと伸びて来て僕の背中に回された

これは完全にロックオン状態だ

 

 

「恥ずかしいの?」

 

「恥ずかしくない方がおかしいでしょ、僕たち、ただのバイト仲間なんだよ?」

 

「ただのバイト仲間?

俺はシム君をただのバイト仲間だとは思ってないよ」

 

「あそっか、チョン君は先輩だったね」

 

「...そういう意味じゃないんだけど」

 

「だったらどういう意味?」

 

 

あ、墓穴掘った、と思った時には手遅れだった

チョン君の顔が目の前いっぱいに迫って来て、思わず目を瞑ったら、直後に柔らかいものが唇に触れた

そして、触れたと思った次の瞬間にはもう離れていた

 

 

「...こういう意味だよ」

 

 

チョン君の真っ黒な瞳の中に、僕の顔が映っているのが見えた

今、僕はチョン君しか視界に入っていないし、チョン君の視界には僕しか入っていない

お互い見つめ合ったまま、数秒前には唇が触れていたと思ったら、顔が燃えるように熱くなった

 

どうしてキスなんてするんだよ

そんなことされたら、自分の気持ちが嫌と言うほど分かってしまうじゃないか

 

 

「...僕、チョン君が好きみたい」

 

 

気付いたら告白していた

チョン君は猫のような目を大きく見開いて僕をじっと見て、それからふっと目を細めて笑った

 

 

「抵抗するかと思ったのに、案外素直なんだね」

 

「...抵抗した方が良かった?」

 

「まさか、今のままでいいよ

そっか、俺の事が好きなんだ?」

 

 

チョン君はそう言ってニヤっとした

不敵な笑み、とでも言うのか、ドラマとかでは見たことがあるけれど、実際にそういう表情をする人を見たのは初めてで、間近で見てドキっとした

不敵な笑みのチョン君は怖いくらいに色っぽかった

 

 

「このまま押し倒してもいい?」

 

 

いきなりチョン君からそう訊かれて、僕は目が飛び出そうになった

こういう事って、いちいち断りを入れるものなのか

 

 

「は?え、ちょっと待って、何で!?」

 

「...この状況だとそうなるのが自然な流れだよね」

 

「でも、待って、僕は今チョン君が好きって告白したけど、チョン君は?した?してないよね?

僕は自分が好かれてるかどうかも分からないまま押し倒されるの?」

 

 

チョン君は"はぁ"と溜め息をつくと、"分かんないかな"と言った

 

 

「好きでもないのにキスすると思う?」

 

「そういう人だって中にはいるよ」

 

「じゃあ俺がそうだって言うの?

そんな浮ついた男だと分かってて家に連れ込んだんなら、シム君は相当危なっかしい人なんだな

でも、だったら余計に、俺がシム君を好きかどうかなんて関係ないんじゃない?

強引に押し倒されたって文句言えないよね」

 

「...え?」

 

 

と思ったらもう仰向けに倒されていて、チョン君の美しい顔が僕を見下ろしていた

 

 

「俺がシム君を好きかどうか知りたいなら教えてあげるよ

好きだからキスしたし、押し倒したし、めちゃくちゃドキドキしてる」

 

「...ドキドキしてるの?」

 

 

チョン君は困ったようにふっと笑った

 

 

「ねぇ、こうやってるのだって結構恥ずかしいんだよ?

だから俺のやる事にいちいち理由を訊いたり、ちょっと待てとか言わないで欲しいんだけど

タイミングと勢いって大事だと思うんだよね」

 

「...ごめんなさい」

 

「謝らなくていいから、先に進めていいかな

これ以上待たされたらシラケちゃうよ」

 

 

シラケたら困ると思った僕は、咄嗟にチョン君の頭を掴んで自分の方に引き寄せ、勢いに任せてチョン君の唇に自分の唇をギュッと押し付けた

突然僕がそんな事をしたものだから、チョン君はバランスを崩して僕の上に完全に乗っかって、唇どころか鼻までぺしゃっと押し付ける形になってしまった

 

チョン君は肘を伸ばして上半身を起こすと、鼻を抑えて顔をしかめた

 

 

「...イテテ」

 

「ご、ごめん...ちょっと勢い付け過ぎた」

 

「シム君のキスが激しいのは嬉しいけど、顔面アタックすることないじゃん」

 

「本当にごめん、痛かった?」

 

「痛くないって言ったら嘘だけど、でも、嬉しいからいいよ」

 

 

チョン君はそう言って優しく僕を見た

今まで見せた事のない優しい表情に、胸がトクンと鳴った

 

 

「チョン君...まだドキドキしてる?」

 

「うん...でも、シム君がGOサイン出してくれたから、さっきとは違うドキドキかな

途中で待ってって言われても、俺、もう止めるつもりないからね」

 

 

それからチョン君の顔がゆっくりと近付いて来て、今度は優しく唇が重なった

お互い好きだと分かった以上、僕らを踏み止まらせるものは何もない

 

 

僕はチョン君の背中に腕を回すと、ガッチリとホールドして体を密着させた

このままどこまでも、行けるところまで行ってしまいたい、そう思った

 

 

そして実際、僕らはそうした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んん...ん」

 

 

ベッドで寝返りを打とうとして、何かにぶつかって目を開けた

すぐ目の前に、誰かの後頭部があった

 

あ、そうだ、チョン君と僕のベッドで寝てたんだった

 

枕元のスマホを見ると、覚えている限りではまだ寝てから1時間も経っていない

正確には寝ていたというよりも、ウトウトしていたらいつの間にか眠っていたという方が正しい

チョン君はスヤスヤ寝ているし、かといってこのまま自分も寝るという感じでもない

ひとまずベッドから降りてリビングに移動すると、冷蔵庫からコーン茶を出してグラスに注いだ

 

 

あの後、ソファでキスをして、軽く触れ合って、そこからシャワーを浴びてベッドに行って...

思い出しただけでも体が熱くなるような、夢のような甘いひと時をチョン君と過ごした

お互いそういう行為が久々だったせいか、最初はぎこちなくて、でも少しずつ慣れて来ると、僕もチョン君も結構大胆になった

 

もう僕たちは、こうなる以前の何でもない二人には戻れない

 

 

「チャンミン?」

 

 

声がして振り向くと、チョン君がリビングに出て来ていた

もう僕を苗字では呼んでいない

行為の最中から、いつの間にかチョン君は僕を名前で呼んでいた

 

 

「ベッドにいないからびっくりした」

 

「ごめん、喉が渇いちゃって...飲む?」

 

 

チョン君は僕の隣に座ると、僕の手からグラスを奪い取ってゴクゴクと全部飲み干した

仕方なくもう一度冷蔵庫からコーン茶を出して注ぎ足した

 

 

「てっきり、俺とああなったのがショックでこっちで寝てるのかと思った」

 

「まさか、何でショックなの?」

 

「だって...結構強引だったし、何度も求めちゃったし」

 

「ううん、それは僕もそうしたかったから」

 

「本当?」

 

「嫌だったらちゃんと嫌だって言うし、僕が遠慮すると思う?」

 

「まぁ...思わないね」

 

「でしょ?」

 

「この後どうするの?まだ起きてる?」

 

「ううん、これ飲んだら歯磨きして寝るよ」

 

「そっか」

 

 

グラスに残っていたコーン茶を飲み干すと、僕はソファから立ち上がった

チョン君も一緒に来るかと思ったら、まだ座ったままぼんやりしている

 

 

「どうしたの?寝ないの?」

 

「うん...俺、こっちで寝るよ」

 

「え、ベッドで一緒に寝ないの?狭いから?」

 

「確かに狭いけど、それだけじゃないよ

 

一緒にいると、また抱きたくなっちゃうからさ」

 

 

そう言ってチョン君はポリポリと頭を掻いた

照れているような、遠慮しているような様子が可愛く思えてキュンとした

そんな可愛いところを見せられたら、僕の父性がウズウズしてしまう

 

 

「いいよ、あと1回だけなら」

 

「...いいの?」

 

「その代わり、1回で終わりだからね」

 

「そう言うチャンミンの方がもっとって言うかもよ?」

 

「それはない、絶対に」

 

 

僕はそう言い切ったけれど、結局はチョン君の読みが正しかった

そして今度は僕が、チョン君を名前で呼んでいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※画像お借りしました※