BL表現を含みますので、苦手な方はスルーでお願い致しますm(_ _)m

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"遠慮しないで"と言われたから、僕は本当に遠慮をしなかった
男の人との経験は初めてだから、自分でも何をどうすればいいのか分からず手探りで、それでも僕なりにユノを悦ばせたくて、自分の身に置き換えてあれこれ考えた
 
 
当然、最後まではできなかったけれど、僕が口の中でユノを受け止めた時、あぁ、これが愛なんだ..なんて感情が込み上げて来て、胸がきゅっと苦しくなった
まだ知り合ってからそれほど経っていないのに、思っている以上に僕の中でユノの存在は大きくなっていた
 
 
洗面所で口をすすいで寝室に戻ると、ユノはベッドに座って申し訳なさそうに僕を見上げた
 
 
「初めてなのに無理させてごめん
我慢しようと思ったんだけど、できなかった...」
 
「謝らないでください、僕はそのつもりだったんですから

今はこれくらいしかできませんけど、ユノが喜んでくれたら僕は嬉しいです」

 

 

そう言ってユノの隣に座ると、ユノは優しく微笑んで僕を抱き寄せた

当たり前のようにユノの肩に頭を乗せて凭れ掛かると、ふと、かつて自分が彼女にされていた事を今自分がしているのだと気付いて、不思議な感じがした

男に奉仕する事に何の抵抗も感じていない事にも驚きだった

 


最初はどうなるか不安だった

でも実際に肌を触れ合わせてみると、ユノのエスコートのお陰で意外とすんなり事が運び、もしかしたら僕とユノは凄く相性がいいのかもしれないと思った

 
 
夕方、僕はユノと一緒に夕飯を作った
思った通りのユノの不器用さに四苦八苦しながらも、何とか無事に完成させる事ができて、今日初めてユノのマンションに来たというのに、まるでずっと前から一緒に住んでいたみたいに僕らは馴染んでいた
 
 
そして夜、再び僕らは例の素晴らしく大きなキングサイズのベッドで存分に触れ合い、素晴らしく大きなキングサイズのベッドのど真ん中で、こぢんまりと寄り添って眠った

夢の中でも、僕はユノと触れ合っていた
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
翌日、僕とユノは街に繰り出していた
泊まる予定もなくユノの家に来ていたので、下着から何から全てユノに借りていて、今まで着た事がないようなレザージャケットに何だか落ち着かなかった
 
ユノは赤茶のレザージャケットに白いタートルネックのロンT、チャコールグレーのダボっとしたパンツ姿で、色白の肌と黒髪が際立ってとても目立っていた
向かい側から歩いて来る女性の大半がすれ違うまでずっとユノをガン見している、なんて事は当たり前で、そんな中でユノが太陽のような笑顔を僕に向けたり、肩に触れたり腕を掴んだり、そうしてくる度に僕は心の中でニヤリと笑った
 
共に一夜を過ごしたせいか、今日のユノはやたら色気を放っているように思えた
 
 
 
若者たちで賑わうゲームセンターを見付けて中に入ると、その一角、プリクラを指差して僕はユノを振り返った
 
 
「ねぇ、あれやりましょうよ」
 
「どれ?もしかしてプリクラ?」
 
「えぇ、やった事ありますか?」
 
「ない、チャンミンは?」
 
「むかーし、学生時代に付き合ってた彼女と撮った記憶があります
でも...多分その頃とはシステムが全然違いますね、きっと」
 
 
特に嫌がる風でもないユノの腕を掴んでプリクラの撮影ブースに入ると、思った通り複雑で、何が何だか分からない
苦戦しながら何とか撮影まで漕ぎ着けると、二人で照れながらも枚数分のポーズを取った
 
出来上がったシールはお互い照れていた割にはよく撮れていて、ユノもまんざらではない様子だった
作業台に置かれたハサミで二つに分けると、一つをユノに渡した
 
 
「これ、どこかに貼った方がいいの?スマホとか」
 
「女子高生じゃないんですから別に貼らなくていいんですよ」
 
 
ユノはふ~んと言って尻のポケットから財布を取り出すと、そこにシールをしまった
 
 
それから僕らは服を見たり雑貨を見たり、あちこちをぶらぶらして、小腹が空いたタイミングでカフェに入った
 
 
「その服、本当にチャンミンに似合ってるよ」
 
 
運ばれて来たホットサンドに大きくかぶりついている僕に向かってユノが言った
返事をしようにも口の中がいっぱいで、急いでもぐもぐしているとユノはそのまま続けた
 
 
「サイズもぴったりだし、もともとチャンミンのものじゃないかってくらい
良かったらそれ、あげようか?」
 
「え?ダメですよ、これ、結構高いやつですよね」
 
「ん~..どうだったかな、覚えてない」
 
 
ユノはそう言うと、自分のホットサンドをパクリと齧った
覚えていないと言われても、タグを見ればすぐに分かる
これはハイブランドのものだ
 
 
あの高層マンションといい、キングサイズのベッドといい、この服といい、ユノの私生活が謎に包まれ過ぎていて、実は少し気掛かりではあった
初めて映画館で会った時のあの野暮ったい印象と貰った名刺の肩書きが、実際の生活とどうにもマッチしていないのだ
文具や事務機器を作っている会社の社員が果たしてこんなにリッチな生活が送れるものだろうか?
ひょっとしたら役員級の役職なのかとも思ったけれど、名刺にはそんな風には書かれていなかった
 
 
「あの...一つ訊いてもいいですか?」
 
「うん、何?」
 
「ユノは...どこかの財閥の御曹司とか、大企業の跡継ぎとか、そういう家柄だったりしますか?」
 
「...ん?何で?
ていうか財閥って...ドラマの見過ぎじゃない?
そんな家柄だったら多分まともに働いてないよ、俺」
 
「あ、そっか...」
 
 
ユノはアイスコーヒーを数口飲むと、紙ナプキンで口元を拭いた
 
 
「でも、確かに気になるよね、あんなマンションに住んでたら」
 
「...はい」
 
「チャンミンと俺は、付き合ってるんだよね?」
 
「え、何ですかいきなり」
 
「違うの?」
 
「違わない...と思いますけど、今それを確認しますか?」
 
「だって、大事な話をむやみに話したくないからさ」
 
「僕はユノと付き合ってると思ってます、だから、大事な話もして欲しいです」
 
「分かった
 
俺さ、今の仕事の前は結構稼いでたんだよね、で、あの部屋はその時に買ったんだ」
 
「へえ...
ていうか、どんな仕事だったんですか?
ちょっとやそっとの稼ぎじゃあのマンションは手に入れられないですよね」
 
 
ユノは僕の顔を真顔でじっと見た
 
 
「チャンミンて、何でも迷わず訊くんだな」
 
「でも、そこ重要ですよね
株のトレーダーとか銀行マンとか、そういう感じですか?」
 
「まぁ、ベンチャー企業ってやつ?
でもめちゃくちゃ忙しくて、取引先との交渉から人材育成から全部一人でやってたら、そのうち人間らしい生活ができなくなって、これはマズいって事で手放したんだ」
 
「廃業したんですか?」
 
「まさか!!社員抱えてるのにそんな事はしないよ
信頼できる後輩に任せて、ついでに業務の見直しもした
自分の時間も欲しかったし、それで転職して今の仕事に就いたんだ」
 
「ベンチャー企業の社長から一般企業の社員って...かなり差がありますよね?」
 
「でも自由な時間は増えたし、稼いでた時に随分貯金もしてたから..っていうか、単にお金を使うヒマがなかったってだけだけど」
 
 
ユノはそこで一旦言葉を切ると、アイスコーヒーを一口飲んだ
 
 
「それに、転職したお陰でこうしてチャンミンと出会えたんだ
俺の選択は間違ってなかった..って、あの地獄のような日々にむしろ感謝してるよ」
 
 
ユノの優しい眼差しに、僕も笑顔で応えた
そして、ユノの私生活にどんな裏があるのかと勘繰っていた自分を恥じた
ユノはただ真っ直ぐで、ちょっと不器用で、どこまでも温かい人なのだ
 
 
「この後はどうする?
チャンミンは行きたい所とかある?」
 
「行きたい所ですか?
じゃあ...映画にしませんか?」
 
「映画?今何やってたかな..」
 
「何でもいいです、ユノと一緒なら」
 
 
できればロマンス、それかSFか感動ものがいい
ユノと観られれば苦手なホラーでもいいと思えるから不思議だ
ただ隣にいて、笑い掛けてくれて、手を握ってくれるだけでいい
 
 
スマホで最新映画を調べてくれているユノを見ながら、運命ってあるんだな、と思った
 
あの日、たまたまあの時間に映画館に足を運んだお陰でユノに出会えた
どうしてユノが、いくらでも選択できた座席の中から僕の隣を選んだのかは不明だけれど、思い掛けないハプニングが二人を結び付けてくれたのだからもうそこは問わないでおこう
 
 
人生は映画みたいだ
そして映画につきものと言えば...

ビールとポップコーンと、隣にはユノだ
 
 

 

 

 

 

~ 完 ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんにちは

いつもご訪問ありがとうございます

無事、3部作で収めることができました(笑)

距離が縮まってようやく恋人らしくなれたユノとチャンミン

お話はこれでおしまいですが、二人の楽しい日々はこれからも続きます♪

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました

 

※画像お借りしました※