BL表現を含みますので、苦手な方はスルーでお願い致しますm(_ _)m

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何度も何度も唇が触れて、頭の中は完全にパニックだった
チョンさんのキスに応えて僕も同じようにすればいいのか、このまま受け身でいればいいのか、答えが出せずにただじっとしているしかできなかった
 
 
不意にチョンさんが体を離すと、小さな声で"ごめん"と言った
僕が無反応だったせいか、軽く咳払いをして、少し離れて座り直した
これは絶対に怒っている、というか、僕に脈なしだと思っているに違いない
本当は凄く嬉しかったのに、また、素直になれない自分が嫌になった
 
 
「シムさん」
 
「...はい」
 
「シムさんは、どうして俺とこうして会ってくれてるの?」
 
「え?」
 
「単に映画が好きで気が合うから?
一人で映画を観るのは抵抗があるけど、俺と一緒だとそれが解消されるから?
そういう理由で俺と親しくしてるの?」
 
「いえ、そういう訳じゃ...」
 
「じゃあどういう訳?
何か...よく分からないんだよね、正直」
 
 
チョンさんは体を前に倒すと、膝の上に肘を置いて、だらりと垂らした自分の手を見つめていた
 
 
「俺と映画を観に行った時、シムさん凄く嬉しそうだったし、飲みに行った時もちょっとした事で照れたりして、俺に気があるのかな..なんて思ったりしてたんだよ
シムさんちに泊めてもらった時も、何かそういう雰囲気っていうか、気配っていうか、そういうのも感じてた」
 
 
チョンさんは体を起こして僕の方を向いた
さっきキスをしてくれた時のあのロマンチックな甘い眼差しではなく、明らかに戸惑っている目だった
 
 
「事ある毎に俺の事が好きなんじゃないかって思わせるような態度取って、それなのに今のは何?全然反応してくれないじゃん
 
俺の事、別に何とも思ってない?」
 
「ちがっ..違います」
 
「何が違うの?事実そうだよ
俺だけが浮かれて、バカみたいだな」
 
 
チョンさんはリモコンを手に取ると、テレビを消した
 
 
「悪いけど、今日はもう帰ってくれないかな
これ以上一緒にいても、多分楽しく過ごせない」
 
「え...チョンさん、ちょっと待ってください」
 
 
まだ飲みかけのコーヒーカップを持ってキッチンに行こうとするチョンさんの腕を、僕は慌てて掴んで引き留めた
弾みでコーヒーがこぼれて床を濡らしてしまった
 
 
「チョンさん、それは誤解です!!
僕は...全部、全部嬉しかったし、さっきもキスされて凄くドキドキしたし、でも、どうしていいか分からなくて...
嫌な思いをさせてしまったなら謝ります、すみません...でも、僕だってチョンさんが好きです」
 
「...それ、信じていいの?」
 
「嘘ついてどうするんですか
好きだから、ロマンチックな映画を敢えて選んだんですよ?
それに、キスされて嫌だったらとっくに突き飛ばしてます」
 
 
チョンさんは脱力したようにふっと笑った
 
 
「...何か可笑しいですか?」
 
「もしかしてシムさん、男は初めて?」
 
 
そう言われて改めてハッとした
僕は初めてだけれど、チョンさんはそうじゃなかったのだ
だからこの余裕か..と、変なところで納得した
 
 
「...初めてだとダメですか?」
 
「ダメって事はないけど、本当に俺でいいの?
一時の気の迷いとか、そういう可能性だってあるよね」
 
「そんな...僕は本当にチョンさんが好きです
会う度にどんどん惹かれて、正直、自分でも戸惑ってます」
 
 
ここまできっぱりと言い切れる度胸が自分にあったのかと驚いた
だったら今までいくらでもチャンスがあったのに、思い切り棒に振っていたのか
 
チョンさんはコーヒーのこぼれた足元の床をじっと見つめて、それからコーヒーカップを横の棚に置いた
 
 
「とりあえずこれを拭いてからにしよう」
 
 
ティッシュを箱ごと持って来ると、二人でせっせと拭いた
ほぼ僕のせいでこうなったのに、チョンさんは何も言わずに黙って拭いていた
そして、コーヒーはチョンさんの靴下にまで及んでいた
 
 
「本当にすみません...
靴下、洗うので脱いでください」
 
「いいよ別に、放っておけば乾くし」
 
「ダメです、シミになっちゃいます
軽く手洗いしておかないと、洗濯する頃には手遅れですよ」
 
「いいってば、脱ぐの面倒臭いし」
 
「でも..」
 
 
僕たちは床に座り込んだまま、そうやって押し問答を繰り返していた
でもそのうちにそれが可笑しくなって、今度は二人で笑い出した
笑っているうちに、何となくさっきみたいな空気が戻って来て、ふっと、チョンさんの目が真剣になった
 
 
「あのさ...今日、泊まっていかない?」
 
「...え?」
 
「無理にとは言わないけど、できればこのまま泊まって行って欲しい」
 
 
それからチョンさんは軽く眉を持ち上げて、"ダメ?"と言った
 
ダメ?って...何でそんなカッコイイんだよ...
 
お互いに好きだと分かった今、僕がここに泊まれば必然的に"そういう"流れになるに違いない、というか、僕はそれを期待してここにいるし、悩む余地はどこにもないと思った
 
 
「...いいですけど」
 
「けど?」
 
「いびきがうるさいかもしれません」
 
「いびき?それはまぁ...お互い様かもしれないし、案外二人とも爆睡しちゃうかもよ?」
 
 
その言葉の裏を読んで、僕の顔は熱くなった
爆睡するという事はそれくらい疲れているという事で、疲れるにはそれなりの理由が必要で...映画を観るくらいじゃ疲れたりはしないから...あぁ、これ以上想像したらダメだ
 
 
「ていうか、俺のベッドで一緒に寝るって意味だよね?
まぁ..そうじゃないと俺は嫌だけど」
 
 
床についていた僕の手の上に、チョンさんの手が重なった
それから体を少しこちらに傾けて、そのまま顔が近付いて来て...
 
触れる程度に唇が重なった
でもすぐに離れて、鼻が触れ合うくらいの距離でチョンさんは僕の目を覗き込んだ
探るような、それでいて悪戯っ子のような目をしていた
 
 
「もう遠慮しないで」
 
「..遠慮、ですか?」
 
「お互い好きなら、引き留めるものなんて何もないでしょ?
シムさんの気持ち、もっと見せて」
 
 
チョンさんの左手が僕の頬に触れ、親指が唇をそっと撫で、そして唇が重なった
そのまま僕の頬から首筋を指先でなぞるものだから、全身に鳥肌が立って、今まで出した事のないような変な声が漏れた
 
 
「...可愛い声」
 
 
チョンさんはふっと笑うと、そのまま僕を後ろに倒した
 
 
「もっとちゃんとキスしていい?」
 
「...はい」
 
 
チョンさんは僕に覆い被さるように乗っかって来ると、両手で僕の顔を包んだ
柔らかい舌が口の中に入って来ると、もう何がなんだか分からないまま無我夢中で自分の舌をそれに絡ませた
 
 
 
 
 
キスに夢中になっていると、次第に自分の体の変化に意識が行き始めた
性的に興奮しているのだからそれは当然で、僕もチョンさんも同じ場所が同じように昂っているのが分かった
このままここで続けてもいいけれど、下になっている僕はそろそろ背中が痛くなり始めていた
さすがにフローリングの上でイチャイチャするのは無理がある
 
 
「...ベッド行く?」
 
 
僕の心の声が届いたのか、チョンさんからそう切り出してくれた
 
 
「せめてカーペットだったら良かったんだけど、フローリングじゃ痛いでしょ
俺もここじゃあ落ち着かないし」
 
 
チョンさんは体を起こすと、僕の手を掴んで立たせてくれた
それから二人で寝室に移動すると、これまた素晴らしく大きなキングサイズのベッドを前にして僕は圧倒されてしまった
 
 
「どうかした?」
 
「いえ...チョンさんはここに一人で寝てるんですよね?」
 
「一人じゃなかったら問題でしょ...ほら、おいで」
 
 
そう言ってチョンさんはベッドの上に座ると、隣をポンポンと叩いて僕に座れと促した
改まってそういう雰囲気に持って行くのはなかなか難しいと思っていたけれど、案外僕らはすぐにいい感じになれた
 
ベッドに押し倒され、仰向けでチョンさんの端正な顔を見つめていると、なんだか今いる状況が夢じゃないかと思えてくる
こんなに美しい人が、僕を求めて昂っているだなんて...
 
 
「チャンミン」
 
「...え?」
 
 
突然名前で呼ばれてドキっとした
チョンさんは僕の顔が可笑しいとでも言うように、ニヤリと笑った
 
 
「そんな顔しないでよ、名前呼んだだけなのに」
 
「だって...いきなり名前で呼ぶから」
 
「もうさ、チャンミン..って呼んでもいいでしょ?
この状況でシムさん、チョンさんって、何かやりにくい」
 
 
言われてみるとそうだな、と思った
ベッドで触れ合うのに苗字で呼び合うのは距離を感じる
 
 
「ねぇ、ユノって呼んでみて」
 
「え...ユ、ユノ?」
 
「もっとちゃんと呼んで」
 
「...ユノ」
 
「あ...いいね」
 
 
チョンさんは嬉しそうに微笑むと、僕を愛おしそうに見つめて、そして再びキスをした
 

 

 

 

 

~ つづく ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんばんは

いつもご訪問ありがとうございます

ごめんなさい、前後編とお伝えしていましたが、後編が思いの外長くなってしまい、上中下にしました(笑)

次で終わります、終わらせます!!

もう少しの間、お付き合いいただけますと幸いです

 

※画像お借りしました※