BL表現を含みますので、苦手な方はスルーでお願い致しますm(_ _)m

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ...」
 
「何ですか?」
 
「何で誰も来ないんだ?」
 
「どうしてでしょうね...僕も分かりません」
 
 
所属事務所の一室、今後のスケジュールについて打ち合わせをするという事で集まっていたチャンミンと俺は、他のメンバーが来るまで暇を持て余していた
マネージャーはおろか、主要なメンバーも誰一人として来ていない
 
 
「時間は合ってるんだよね?」
 
「えぇ、間違いないですよ
ユノもその話をした時、一緒にいたじゃないですか」
 
「でももう30分経つけど?」
 
「そのうち来ますよ
今日はこれ以外に予定もないんですし、のんびり待っていればいいじゃないですか」
 
 
チャンミンは会話の間じゅう、ずっとスマホに視線を落としたまま、きっと今ハマっているというパズルゲームに夢中なのだろう
 
のんびり待ってろと言われても、二人しかいないうちの一人がスマホゲームに夢中で、俺は何をして時間を潰せばいい...?
 
 
「あ、そうだチャンミン」
 
「何ですか?」
 
「この間レコーディングしたやつ、気になる部分があったんだけど」
 
「この間...ってRodeoですか?
でもあれ、もう全部終わってますから今更変えられないですよ?」
 
「いや、別に差し替えたいとかじゃないんだけど、ただちょっと気になった所があってさ...」
 
 
チャンミンはスマホから顔を上げて俺を見た
 
 
「どこですか?」
 
「うん...2分18秒のチャンミンのコーラスって言うのかな、俺と掛け合いになる直前のとこ」
 
「2分18秒?...ってどの辺りでしたっけ」
 
 
俺は自分のスマホを開くと、デモ版でもらっていた音源データを再生した
2分あたりまで早送りをして、"삶은 끝이 없는 Rodeo"からチャンミンの"Oh"と続き、その直後に問題の部分が入って、"No I'm never gonna slip"と続いたところで音源を止めた
 
 
「...分かる?」
 
「えぇ、僕の"Oh"の最後ですよね?ダメでしたか?」
 
「ダメではないんだけど、ちょっとセクシー過ぎるって言うか...」
 
「エロい?」
 
「エロ...う、うん、まぁ、ストレートに言うとそうかな
いや、チャンミンの声がセクシーなのは俺が一番良く知ってるつもりだけど、その中でもこれは今までになくキワドイ感じだったからちょっとびっくりしちゃって...」
 
「Rodeo以外でもありますけど、そっちは大丈夫ですか?」
 
「あぁ、あれね、Rebelの"huh"でしょ?
あれも気にはなるけど、こっち程じゃないからいい」
 
「...その違いが僕には良く分かりませんけど、でも今更そう言われてもどうにもできないですよ」
 
「勿論それは分かってる
そもそも、なんであんな風になったの?」
 
「それは...作家さんから、コーラスの最後は吐息交じりに力を抜く感じって言われて、その通りにやってみたらああなりました」
 
「なるほどね」
 
 
チャンミンは俺をじっと見つめたまま、次の言葉を待っているように見えた
でも、曲の作り手から指示が出されてああなったのなら俺がとやかく言える次元ではない
 
 
「...ユノ的には気になるんですね」
 
「まぁね」
 
「正直僕も仕上がりを聴いた時、これは絶対ユノが何か言って来るだろうなとは思いました
でもそういう指示だったので、だったら思い切りセクシーにしてしまえって」
 
「思い切り過ぎだよ、あれじゃまるで...」
 
 
そこまで言って慌てて口を噤んだ
チャンミンはすぐに察して、俺が言わなかった部分をサラリと補足した
 
 
「"そういう時"の僕みたいだって言いたいんですね?」
 
「その通り」
 
「でもそれは、"そういう時"の僕を知ってるユノだからそう思うだけで、他の人からしたら単にセクシーってだけで終わると思うんですけど...」
 
「そう?」
 
「そうですよ
それに僕たちは何かにつけてそういう大人セクシーを売りにしてるんですから、ファンの方たちだって喜ぶと思いますよ」
 
「前向きだな」
 
「珍しくユノが後ろ向きで逆に僕は驚いてます
まぁ...敢えて一つ言うとしたら、あの吐息部分のボリュームが思っていたより大きかったってとこでしょうか」
 
「ほら、やっぱりチャンミンも気になってるじゃん
でもまぁいいや、終わった事をしつこく言っても仕方ない」
 
「じゃ、解決って事でいいですか?
絶妙なところでゲームをポーズしてるので、続きやらせてもらいます」
 
「え?あぁ、うん...ごめん」
 
 
チャンミンは再びスマホに視線を移すと、それきり俺たちの会話は終わった
するとそのタイミングで部屋のドアが開き、マネージャーが顔を覗かせた
 
 
「あ、もうお二人いらしてたんですね」
 
 
それから俺に背を向けてスマホゲームに夢中のチャンミンを見て苦笑いをした
 
 
「相変わらずバラバラなんですね
申し訳ないんですけど、もうちょっと待っててもらっていいですか?
こっちの打ち合わせがなかなか纏まらなくて...」
 
 
マネージャーは"すみません"と両手を合わせてペコリと頭を下げると、そのままドアを閉めて立ち去った
 
 
傍から見たら素っ気ないように見えるチャンミンも、プライベートで二人きりの時はめちゃくちゃ俺に甘えてくる
人によっては、コンサートやバラエティ番組では仲が良さそうに見えるのに普段はそうでもないんですね..なんて言う人がいるけれど、第三者がいる場でイチャイチャするほど俺たちは幼くないし、わざわざ人目のある場所で見せつけようとも思わない
 
ただし、仕事の場で距離が近くなりがちなのは自然の摂理に近いくらい抗いようのない事で、敢えて一度距離を取ってみたら、いつもの調子が出なくてうまく行かなかった
めり込み気味の二人の距離は、バランスを取る上で必要なのだ
 
 
チャンミンは完全にゲームに熱中していて、また話し掛けようものなら睨まれそうだ
仕方なくワイヤレスイヤホンを取り出すと耳に装着し、さっき閉じた音源データを再生した
 
 
Rodeoの2分18秒...
 
 
チャンミンに聴こえていないのをいい事に、俺は何度も繰り返し聴いていた
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

 

 

 

 

 

こんにちは

いつもご訪問ありがとうございます

前回の読み切りに続き、どうしても気になるシリーズ(笑)をお話にしてしまいました

けしからん!!!!と叱られるかもしれませんが、どうかお許しください...

 

※画像お借りしました※