BL表現を含みますので、苦手な方はスルーでお願い致しますm(_ _)m

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それは...恋愛感情ですか?」

 

 

僕がそう答えると、チョンさん...ユノは、黙ったまま僕をじっと見た

少し悲しそうな表情は、いつか僕がユノを追い掛けて行って、どうして息抜きに誘わなくなったのかと問いただした時のそれと同じだった

 

ユノは何も言わずにスッと視線を逸らすと、体ごと前に向き直った

 

 

「ごめん、こんな話をするつもりじゃなかった」

 

「いえ...」

 

「泊まる気になれないでしょ、こんな俺のとこに

タクシー代出すから帰ってもいいよ」

 

 

いつの間にか、映画は本編が終わってエンドロールが流れていた

最後がどうだったのか、殆ど覚えていない

 

 

ユノが僕に恋愛感情を抱いていたという事実に、頭の中が真っ白になった

誰もが憧れるスマートでハンサムなユノが、僕に対して恋愛感情を抱くなんて、にわかに信じ難い

 

 

「冗談...とかじゃないですよね?」

 

「この状況で俺が冗談言うと思う?」

 

「...いえ、でも、どうして僕なんかを?」

 

「僕なんか?それは違う、チャンミンはとても魅力的だよ

面談の時にも話したけど、自分を過小評価し過ぎてる

 

帰るならタクシー呼ぶから、忘れ物しないようにな」

 

 

そう言ってユノが立ち上がろうとしたから、僕は咄嗟に手を掴んで引き留めた

バランスを崩したユノが僕の上に半ば乗っかるような状態で倒れてきて、瞬時に背凭れに手をついて堪えてくれた

 

 

「....っと、何!?」

 

「僕、帰りませんよ」

 

「...どうして?」

 

「どうしてって、帰りたくないからです、ダメですか?」

 

「ダメじゃないけど...今の話、ちゃんと聞いてた?

俺はチャンミンに恋愛感情を抱いてるんだよ?」

 

「そうです...だから帰りたくないんです」

 

「それ、どういう意味?」

 

 

僕はユノの手を掴んだまま、かつてない近さで見つめ合っていた

視線を落とせばユノのぽってりとした唇があって、こういう状況でそういう感情にならない方が不自然だった

 

 

「僕だって...ユノの事、もっと知りたいと思ってます」

 

「...そうなの?」

 

 

答える代わりに、僕はサッと顔を近付け、ユノの唇に自分の唇を重ねた

微かに炭酸ジュースの甘い香りがして、触れた唇は思った以上に柔らかかった

すぐに体を離したけれど、ユノのアーモンド型の目は大きく見開かれ、完全に固まっていた

 

 

「チ...チャンミン?」

 

「すいません...」

 

「俺の事、揶揄ってないよね?」

 

「揶揄ってるなんて、そんな訳っ...!!」

 

「だったら今のは、本気?」

 

 

僕は黙って頷くと、ずっと掴んだままだった手を離した

手の平に汗を掻いていたのか、じっとりと湿り気を帯びていた

 

 

「俺は...今の言葉を真に受けるけど?」

 

 

今度はユノが僕の手を上からギュッと握った

ユノの手はとても熱くて、それがそのまま僕に対する想いの強さみたいに感じられて、もう引き返せないと思った

 

ユノの言葉に、僕は頷いた

 

 

「じゃあ、そういう目でチャンミンを見ていいんだよね?」

 

「...いいです」

 

「そっか...」

 

 

ユノはそう言うと、優しく微笑んで僕の手を離した

それから暫くはお互い黙ったまま、次の言葉を探すような微妙な空気が流れた

 

 

先に口を開いたのはユノだった

 

 

「3時だけど、まだ何か観る?」

 

「いえ、もう映画は大丈夫です」

 

「そうだよね...

じゃあ、いい加減寝ようか」

 

「はい...」

 

 

ユノはそう言いながら、なかなか立ち上がろうとしなかった

ソファで寝るのは僕だから、ユノがここにいると僕は寝れない

でも、どうして行こうとしないのか、僕はその理由が何となく分かっていた

 

ユノは首の後ろを掻きながら、言い辛そうに、少し顔を赤くして言った

 

 

「一緒に...俺のベッド行く?」

 

 

来たか、と思うと同時に、どうしよう、とも思った

こんな経験は生まれて初めてで、どうしたらいいのか全く分からない

 

 

「いい...んですか?」

 

「だって、せっかく一緒にいるんだからさ

別々に過ごす方が違和感あるって言うか...もったいないって言うか...もったいないって表現はおかしいか」

 

 

ユノのその言い訳が可笑しくて、思わず笑ってしまった

でも内心は、口から心臓が飛び出そうなほどドキドキしていた

こんなにすんなり事が運ぶとは思わなかったし、いきなり急展開過ぎて頭がついて行けない

でも考えてみたら、好きな者同士が一つ屋根の下にいたら当然起こり得る流れだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと...どうやって寝ましょうか」

 

「うん...」

 

 

僕たちはユノのベッドを前に立ち尽くしていた

一緒に寝ようと寝室に来たはいいけれど、そこから止まってしまったのだ

 

セミダブルのベッドは見るからに男二人には小さい

 

 

「とりあえず俺が右で、チャンミンが左かな」

 

「分かりました」

 

 

ぎこちない動きでベッドの中にもぞもぞと入ると、そのまま言葉も交わさずお互いに背を向けて横になった

背中に全神経が集中しているかのように敏感になって、ユノが少しでも動くと瞬時に背中が感知した

ソファに一人で横になっていた時よりも、よっぽど眠れないと思った

ユノはユノで必死に寝ようとしているのか、ピクリとも動かない

 

少しして、背後でもぞもぞと動く気配を感じて、ユノが寝返りを打ったのだと分かった

つまりこちら側を向いているという事で、背中に緊張が走った

 

 

「チャンミン」

 

「...はい」

 

「眠れない」

 

「僕もです」

 

「チャンミンは眠い?」

 

「...あまり」

 

「そっか...

 

ねぇ、こっち向いて」

 

「......え?」

 

「俺が話し掛けてるのに、向こう向いたままで返事する?」

 

 

確かにそうだけれど、今、ユノの方を向いたら...

さっきはソファに座った状態だったけれど、今は二人とも横になっていて、いつそういう流れになってもおかしくない

寝返りを打ったらゴーサインだと思ったら、踏み出す勇気が出なかった

 

 

「チャンミン、聞いてる?」

 

「聞いてますけど...早く寝ないと朝になっちゃいます」

 

「そんなの気にしてるの?

明日は休みなんだから、何時になってもいいだろ」

 

「でも...睡眠は健康と美肌のために必要ですから」

 

 

心臓が早鐘のように鳴って、脳内はパニック寸前、後頭部にはユノの視線をビシビシ感じて痛いくらいだった

そうなりたい気持ちがある反面、怖いと思う気持ちもあって、両手を胸の前でぐっと抱えたまま、ユノが諦めてくれるのをじっと待った

 

 

...と、突然体をクルリと反転させられて、気付いたらユノの顔が目の前にあった

 

 

「健康と美肌って、チャンミンは女子力高めか」

 

「え...ちょっと待っ...」

 

「俺は今夜、寝れなくたっていいと思ってる

チャンミンはそうじゃないんだ?」

 

 

薄明かりの中で、ユノの黒い瞳がキラリと光ったように見えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※画像お借りしました※