BL表現を含みますので、苦手な方はスルーでお願い致しますm(_ _)m

 

 

 

 

 

< The view from Yunho>

 

 

 

 

 

俺宛てに手紙が届いた
 
最初は何かの間違いかと思ったけれど、差出人は俺が良く知る人だったから確かに俺に宛てたものだと分かった
 
差出人は、妹だった
 
町長の娘との婚約破棄騒ぎで村を出て行く羽目になった時、これ以上家族に迷惑を掛けられないと思った俺は、家族を残して一足先に村を去っていた
だからその後、両親たちがどうしたのかは全く知らない
 
実際は、失踪直後からずっと俺を探し続けていて、ようやく食料品店で働いているという情報を得て、住んでいる住所まで辿り着いたのだという
 
そしてつい最近に祖父が亡くなり、俺にも少し遺産を残してくれていたらしい
俺は祖父が好きだったから、死んだと聞いてショックだった
でも遺産を受け取る権利などないし、一体どんな顔をして家族に会えばいいと言うのだ?
 
 
チャンミンは両親を既に亡くしている
そして俺たちは居場所を追われた者同士という共通点で距離が近付いた経緯がある
だから、生き別れた家族が俺を見付けて連絡をよこして、祖父の遺産をくれると言っている..などと言えるはずがなかった
 
だから今回の事は、全て解決するまで秘密裏に動こうと決めた
 
 
手紙の返事を書くかどうか迷って、チャンミンの目が届かない仕事先で書いて出した
そして妹と会う約束をし、10年ぶりに再会した
 
遺産は僅かだったけれど、チャンミンとの細々とした生活にとっては貴重な額だ
多少は生活にゆとりが出るだろうし、そうなればチャンミンも喜ぶはず
でも今はまだ話せない
 
何より、日に日に不満を募らせているチャンミンを見るのが心苦しかったし、心のすれ違いが一番辛かった
だからこそ、一日でも早く全て解決してチャンミンを安心させてやりたいと思った
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
手紙を受け取ってから10日後、事態は進展した
妹と再び会う事になって行ってみると、そこに両親がいたのだ
歳の割にすっかり老けて、随分と疲れているように見えた
 
また一緒に暮らさないかと打診されたけれど、俺には俺の生活があるからとチャンミンの事を正直に話した
婚約破棄の原因になったのも俺が女性を愛せないからで、それを分かっていたからなのか案外すんなり受け入れてくれた
そして最後に、会いたくなったらいつでも帰っておいでと言ってくれた
 
勿論、大切な人も一緒に...と
 
 
小切手を受け取った俺は、両親と妹に見送られながらその場を後にした
 
あの小さな家で、俺の帰りを待っているチャンミンがいると思うと、自然と早足になっていた
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
帰宅すると、チャンミンはやはり起きて待っていてくれた
心配そうに俺を見つめる顔を見たら胸が締め付けられて、手にしていたカバンを放り投げて駆け寄り、力一杯抱き締めた
 
 
「心配かけて悪かった
全て片付いたから、もうチャンミンに不安な思いはさせないよ」
 
「本当...?」
 
「あぁ、だからちゃんと話すよ
 
とりあえず..何か軽く食べるものある?
まともに夕飯食べてないんだ」
 
「あ、えっと...
じゃあ、サンドイッチでいいですか?
すぐ作りますね」
 
 
そう言って行こうとしたのを、なぜか俺は咄嗟に手を掴んで引き止めていた
チャンミンはびっくりした顔で俺を見ている
 
どうしてだかは分からない
背を向けて行こうとしたチャンミンを見たら、引き留めなければと反射的に感じたのだ
 
 
「...サンドイッチじゃ嫌でしたか?」
 
「いや、ごめん...何でもない」
 
 
掴んだ手を離すと、チャンミンは困ったように微笑んでキッチンへと去って行った
 
 
俺は今日まで事情も話さず帰宅が遅くなったり遠出をしたり、チャンミンをひたすら不安にさせていた
本当なら怒って別れを告げられてもおかしくないくらい自分勝手な行動を取っていた
 
それなのにチャンミンは俺を信じて待っていてくれた
 
一歩間違えれば、チャンミンは俺の元からいなくなっていただろう
まさにギリギリの瀬戸際だったかもしれない
だから、チャンミンが俺に背を向けて去って行く時、もう二度と振り返らないのではないかと思ってしまった
 
 
寝室で荷物を片付けてからリビングに戻ると、香ばしいコーヒーとサンドイッチが既に出来上がって俺を待っていた
 
 
「本当に簡単ですけど...」
 
「ありがとう」
 
 
サンドイッチを齧りながら、俺は手紙の差出人についてから話し始めた
 
 
妹がいた事、俺が家を出て行ってからずっと行方を探していた事、祖父が亡くなりその遺産の一部が受け取れる事、人伝いに探し続け、ようやくあの町で手がかりを得て今に至る事...
 
チャンミンはただ黙って俺の話を聞いていた
あまりのドラマチックな展開に、相槌を打つことも忘れていたようだった
 
 
「というわけで今日、小切手を受け取って来たよ」
 
 
そう言ってテーブルの上に小切手を置いた
チャンミンは恐る恐るそれを手に取ると、額面を確認して俺を見た
 
 
「こんな大金...?」
 
「いや、お世辞にも大金とは言えないよ...って、爺さんが聞いたら怒るか」
 
「でも、僕たちの生活からしたらとても大金ですよ
それで...ユノはこれからどうするつもりなんですか?」
 
「どうって、どうもこうも今までと変わらないよ」
 
「家族の所に戻ったりしないんですか?」
 
「何で?
俺の居場所はここだよ、チャンミンのいるこの家だ」
 
 
俺の言葉に感動したのか、チャンミンの目が少し潤んだように見えた
でもお世辞でも何でもなく、俺はチャンミンと生きていくと決めていた
 
 
「明日は仕事だからもう寝ないと
サンドイッチありがとう、凄く美味かった
 

色々と心配かけて、本当にごめん」

 
 
チャンミンは微笑むと、首を横に振った
 
 
「ユノが戻って来てくれただけで十分です

片付けは僕がしますから、ユノはもうベッドに入っててください」

 

 

 

 

 

言われた通りにベッドに入ったものの、何かがモヤモヤしていた

そして、チャンミンがベッドに入って来たところでようやくそれが何か分かった

 

チャンミンは俺がもう寝ていると思ったのか、こちらに背を向けて寝ようとしていた

その後ろから、そっと抱き締めた

 

 

「ぅわっ...起きてたんですか?」

 

「...起きてた」

 

「まぁ...色々あったから、興奮してなかなか眠れませんよね」

 

「いや、違う」

 

「違う?」

 

「チャンミンが足りない」

 

「それは...」

 

「すれ違ってばかりだったから、ようやく今、落ち着いて分かったんだ

俺にはチャンミンが不足してる」

 

「でも明日は仕事って...」

 

「それでもいい、チャンミンが欲しい」

 

 

チャンミンの体をもう一度ギュッと抱き締めると、首筋に口付けをした

 

例え眠る時間がなくてもいい、チャンミンをこの体で思う存分に感じたかった

 
 
 
 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※画像お借りしました※