BL表現を含みますので、苦手な方はスルーでお願い致しますm(_ _)m

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...どうも」

 

「こんにちは

姿が見えたので、慌てて来ちゃいました」

 

 

息を弾ませながら嬉しそうに話す女性に、チクリと胸が痛んだ

彼女はこれから起きる事を知らない

 

 

「この間差し上げたマフラー、小さくなかったですか?」

 

「あぁ...それなんですけど...」

 

 

肩掛けカバンからマフラーを取り出し女性にそっと差し出すと、意味が分からないとでも言うように僕の顔を見た

 

 

「これ...やっぱりお返しします」

 

「えっ、そんな...どうして...」

 

 

女性の顔からみるみると笑顔が消えて行った

つい数秒前まで嬉しそうにしていた彼女とは別人だ

 

 

「とても素敵なマフラーだとは思います

でもこれは受け取れません」

 

「どうしてですか?

あ...色が気に入らなかったですか?」

 

「いえ、そういう理由ではありません

僕には...心に決めた人がいるんです、だから...」

 

 

僕がそこまで言うと、女性は悲し気に首を振って俯いた

そして僕の手からマフラーを無造作に取ると、無表情のままゆっくりと背を向けて離れて行った

その背中を眺めながら、申し訳ない気持ちでいっぱいになった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の晩、女性にマフラーを返した事をユノに話すと、"そっか"とだけ言った

 

 

「彼女の悲し気な表情が頭から消えないんです」

 

「気の毒だけど仕方がないよ

俺の方だって似たようなもんだ」

 

「あ、そうだ、ユノの方はどうだったんですか?

無事に返せたんですか?」

 

「返せたには返せた

でもあの様子じゃ懲りてなさそうだ」

 

「え...

じゃあ、まだユノの事を諦めてない感じですか?」

 

 

ユノは肩を竦めて、"じゃないの?"と言った

贈ったプレゼントを突っ返されても懲りないとは、なかなか手強い男だ

という事はつまり、いよいよ僕の出番という事になる

 

 

女装をする手筈については入念に準備はできていた

隣の農家のおかみさんにドレスを1枚借りていて、ヘアスタイルは大型の帽子とベールで誤魔化せば何とかなるだろう

180センチ超えの女性はなかなか珍しいけれど、出来るだけ猫背にして少しでもユノより小さく見えるようにすればいい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「....どう、ですか?」

 

 

鏡に映る自分が別人のようで、ユノにその出来映えを見てもらった

 

化粧道具はユノに頼んで町で調達してもらっていた

ベールをするから必要最低限のアイテムさえあれば顔はどうにかなる

初めての割にはなかなか上手く出来た

 

 

「何か言ってください

どうですか?変ですか?」

 

 

ユノは言葉を失っているように見えた

驚きに目は見開かれ、口はぽかんと開いたまま

上出来だと思っていただけに、急に不安になった

 

 

「いや...変というか...」

 

「おかしな所があったらハッキリ言ってください

完全に自己流なので、全く自信はありません」

 

 

ユノは頭をポリポリと掻いて困ったように笑った

 

 

「正直、何て言ったらいいか分からなくて困ってる」

 

「困ってる?そんなに酷いですか?」

 

「いや、酷いどころかびっくりするくらいキレイだよ

こんなにキレイな人がこの世にいるのかってくらい」

 

「...本当に?」

 

「チャンミンだからそう思うのかもしれない

でも、もしこんなに色っぽい女性が本当にいたら、男が放っておかないだろうね」

 

「そんなにキレイですか?

ユノにそう言われたら自信ついちゃうな」

 

 

僕がそう言うと、ユノは眉間に皺を寄せた

 

 

「おいおい...自信がついたって、趣味に走らないでくれよ?

確かにキレイだけど、俺はそのまんまのチャンミンがいい」

 

 

そう言ってユノが僕の頬を撫でた

鏡に映る美人に向かって微笑むユノ、という光景が何とも不思議で、もしかしたら本来はこういう姿が普通なのかもしれない、と思った

化粧と頭飾りを取っ払った素の僕とユノは、どう考えたって不自然だ

 

 

「...どうした?

男と女の組み合わせの方が自然だな、なんて思ってるんだろ?」

 

「...なっ」

 

「図星か...

チャンミンの考える事くらい分かるよ

でも俺は、そのままのチャンミンが一番好きだ」

 

 

ユノは優しく微笑むと、僕の頭に乗った帽子とベールを取って、くしゃくしゃになった髪の毛を優しく撫でた

それからゆっくりと顔が近付いて来て、思わず目を瞑った

 

 

「....ん....んんっ....」

 

 

口紅が混ざってちょっと変な味がしたけれど、僕も夢中でユノの口に吸い付いた

そのうちにユノの手がスカートの下から入って来て、際どい部分に触れた

 

 

「あっ、ちょっと待って!!」

 

「...何?」

 

「これ、借りてるドレスだから何かあったら困ります」

 

「そっか

じゃあ...脱いで」

 

「でも、夕飯の片付けがまだです」

 

「そんなの後でいいよ

今はチャンミンが欲しい

ほら、脱がないとドレスがダメになっちゃうんだろ?」

 

 

ユノが熱い眼差しでじっと見てくるから、自然と体も熱を帯びてしまう

美しく着飾った色っぽい僕より、くしゃくしゃ頭の素の僕がいいとユノは言ってくれた

 
昼間、あの女性にマフラーを返した時の痛んだ胸を引きずっていた
でも僕は確かにユノが好きで、愛していて、ユノにもまた愛されている
例え優しさでも、女性からの贈り物を受け取ったままではいけなかったのだ
 
 
脱いだドレスを畳む時間すら待ち切れないのか、ユノは僕の手からドレスを強引に奪うと傍にあった椅子にふわっと投げた
それからユノ自身が着ているものを脱ぎ捨て、そのまま僕をベッドに押し倒した
 
 
「チャンミンはそのままが一番キレイだ...」
 
 
耳元で低くユノの声が響いた
あぁ...この瞬間、僕はこの世で一番幸せに違いない
 
 
 
 
 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※画像お借りしました※