BL表現を含みますので、苦手な方はスルーでお願い致しますm(_ _)m
「....ねえ、本当に撮るの?」
俺とチャンミンは、地元商店街にある小さな写真館の前にいた
「何か...凄い年季が入ってますけど大丈夫ですか?」
「だからいいんだよ
潰れないって事はそれだけ地元に愛されてるって事なんだから
さ、入ろう
もう予約しちゃってるんだから」
ステンドグラスで装飾された重たいガラス製のドアを開けて中に入ると、誇りっぽいような、古い調度品特有の懐かしい匂いがした
入ってすぐの受付カウンターには、丸顔の初老の女性が座っていた
老夫婦が経営しているというから、この女性はきっと奥さんだろう
「いらっしゃいませ
ご予約のお客様ですね?」
「はい、チョンです」
「お待ちしておりました
それでは早速、スタジオへご案内致します」
女性について行くと、分厚いカーテンで仕切られた隣の部屋へと案内された
そこには丸眼鏡の初老の男性がいて、カメラの調整をしているところだった
俺たちに気付いてこちらを向くと、にっこりと微笑んだ
「本日はようこそいらっしゃいました
こんな古びた写真館をお選びいただきありがとうございます
普段着でのお写真ということでよろしいですか?」
「はい、そうです」
「お支度等はもうお済みですか?
あちらに化粧室がありますので、必要でしたらご利用いただけますが...」
「いえ、このままで大丈夫です
普段の感じで撮影していただきたいので」
「そうですか
では早速、セットの方にお越しください
ソファにお一人、その後ろにお一人という感じで」
自然体の二人を残したいと、敢えてかしこまったスーツは着ずに、ウィンドーショッピングに行くような外出着にした
正直、チャンミンを説得するのはそう簡単ではなかった
写真が欲しいなら部屋で撮ればいいじゃないかという当然の提案を無理矢理に却下して、どうにか写真館まで連れて来れたのだ
いかにもという感じの重厚そうな一人掛けソファにチャンミンを座らせると、俺がその後ろに立ち、チャンミンの肩に片手を乗せた
「お二人ともハンサムだから、雑誌の撮影でもする気分ですよ」
店主兼カメラマンのその男性は笑顔でファインダーを覗いている
言われるがままに時折体の角度を変えたりして、15分程で撮影は終わった
「仕上がりは一週間後になります
こちらからご連絡しますので、それまで今暫くお待ちください」
「お気を付けてお帰りくださいませね」
夫婦揃って深々とお辞儀をして見送られた
店を出ると、チャンミンはなぜか来る時よりも上機嫌になっていた
「何だか物凄く丁寧な方たちでしたね
初めて利用するのに、まるで上得意のお客さんみたいな気分でした」
「そういう人柄の良さが長く愛される理由なんだろうね
また利用したいなって思ったよ
どうだった?
やっぱり撮影なんてしなきゃ良かったってまだ思ってる?」
意地悪な聞き方をすると、チャンミンはムッとした顔で俺を睨んだ
「今の会話でそういう流れになりますか?
撮影して良かったに決まってるじゃないですか
ユノさんて、たまにそうやって意地悪ですよね」
「ごめんごめん
行きと帰りであまりにもチャンミンのテンションが違うから
仕上がりが楽しみだね」
「はい
でも...僕たち、どんな風に見えていたんでしょうね
男同士で記念撮影だなんて...変に思われなかったかな」
「ん~...それはどうだろう?
ああいう仕事をしていれば色んな人が来るだろうし、特に気にしてないんじゃない?
もし男同士で...って思われていたとしても、きっとそれも愛の形だって分かってくれてるんじゃないかな、あの店主なら」
確かに、全く気にならないと言えば嘘になる
予約をする時もそれなりに悩んだし、でも個人経営だからプライバシーはきっと守ってもらえると信じて思い切ってみたのだ
チャンミンも結果的には喜んでいるようだし、思い切って良かった
「この後どうする?
ちょうどいい時間だし、何か美味しいものでも食べて帰ろうか?」
「あ、いいですね~
じゃあ、前から行きたいと思ってた店に行ってみてもいいですか?
多分ユノさんも気に入ると思います」
「うん、いいよ」
チャンミンはふふ、と嬉しそうに笑うと、何の躊躇いもなく俺の腕を取った
今までだったらそういう行動に一瞬ひるんでいたかもしれない
でも写真館で初めて見ず知らずの第三者に二人の姿を見せた事で、俺の中で何かが変わったような気がしていた
「俺もさ...
チャンミンを連れて行きたい店があるんだよね」
「え、本当ですか?
今日はそっちにしますか?」
「いや、ランチするような店じゃないんだよね
どっちかと言うと....しっぽり飲む感じ?」
「しっぽり....」
そう言ってちょっと考えてから、ニヤリと笑って俺を見た
「僕、ユノさんとしっぽり飲みたい!!」
「ハハ、それはまた今度ね
まずはチャンミンお薦めのランチだ
美味しくなかったらチャンミンの奢りだからね」
「えーーーーっ!!」
目を丸くしているチャンミンの頭をポンと撫でると、空を見上げた
日曜日の昼下がり、太陽が眩しくて目を細めた
※画像お借りしました※