BL表現を含みますので、苦手な方はスルーでお願い致しますm(_ _)m

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「....あれ、雨?」
 
 
歩いていると、冷たい何かが頬に当たって空を見上げた
あんなに晴れ渡っていた空がいつの間にか分厚い雲に覆われていて、それでも雲の隙間からはキレイな水色の空が見えている
 
 
ポツッ、ポツッ、ポツッ....
 
 
次第に雨粒の当たる間隔が短くなってきて、あっと言う間に本降りになってしまった
 
 
「うわ、冷てっ」
 
 
激しく打ちつける雨粒を避けるように、小走りで目の前にある喫茶店のひさしの下に逃げ込んだ
とりあえずはここで雨宿りをするしかない
 
 
「....これ、止むかなぁ」
 
 
空を覆う雲はすっかり青空を隠し、どこまでも灰色の景色が広がっている
そう言えば今朝、にわか雨に注意と情報番組で言っていたのを思い出した
 
そんな事はすっかり忘れ、折り畳み傘すら持たずに出て来てしまった
 
 
頑張って土砂降りの中を出て行って手近なコンビニでビニール傘を買うか...と思ったけれど、見える限りではどこにもコンビニはない
たまたまぶらり途中下車した町なので土地勘もなく、むやみに彷徨ってずぶ濡れになるのは避けたい
 
 
何となく振り返って喫茶店の中を見ると、時間的にも中途半端だからかあまりお客さんが入っていない
 
 
「参ったな...」
 
 
どうしようかと逡巡していると、突然誰かが隣に駆け込んで来てドキッとした
 
傘も持たずに濡れているところを見ると、俺と同じ考えでここに一時の雨宿りを求めて来たのかもしれない
 
 
若い男、俺と同じくらい
斜め掛けのポーチを背中にしょって、手には紙袋をぶら下げている
その紙袋も突然の雨ですっかり濡れて色が変わっていた
 
 
俺の視線に気付いたのか、男は遠慮がちにこちらを見た
目が合って会釈をすると、怪訝そうな顔で会釈を返された
 
 
雨はまだまだ、止みそうにない
 
 
その男も行くか行くまいか迷っているのか、心配そうに空を見上げている
 
 
「雨宿りですか?」
 
 
思い切って声を掛けると、男は驚いて俺を見た
癖毛なのか、雨に濡れて茶色い髪の毛が緩くうねっている
 
 
「え...えぇ、まぁ」
 
「俺もです
うっかり傘も持たずに出て来ちゃって、こんなに降るって知ってましたか?」
 
「...いえ、知りませんでした」
 
「ですよね
止むんですかね、これ」
 
「ん~...どうなんでしょうね」
 
 
あからさまに俺を警戒しているのが分かる
その証拠に、必要最低限の返事しか返って来ない
 
 
せっかく同じ屋根の下にいるのだから、楽しい方がいい
 
 
「買い物ですか?」
 
 
男の手にある紙袋を顎で指し示して訊くと、まぁ...と短い言葉が返って来た
 
 
「俺は買い物というか、普段降りたことのない駅にふらっと降りて、特に目的もなくぶらぶらしてました
ここ、案外いい町ですね
 
よく来るんですか?」
 
「まぁ...時々」
 
「そっかぁ、あ、じゃあ自宅が近いんですか?
ちなみに俺の家は電車で30分くらいで、駅からさらに徒歩10分なんですけど」
 
「あの」
 
「はい?」
 
「僕に何の用ですか?」
 
「え?」
 
「ちょっと雨宿りしてるだけなのに、どうしてそんなに話し掛けるんですか?」
 
「あ...」
 
「どこに住んでいるかなんて個人情報、見ず知らずのあなたに言える訳ないじゃないですか」
 
 
かと言ってその場を立ち去れるほど、雨脚も弱くなっていない
 
男は鼻でふんと溜め息をつくと、さり気なく時計を見た
誰かと待ち合わせでもしているのだろうか
 
なかなかのハンサムで着ているものもお洒落
もしかしたらこれからデートなのかもしれない
 
 
「....すみません、ちょっと言い過ぎました」
 
「え?」
 
 
突然男が謝ったので驚いていると、背中にしょったポーチから何やら取り出して俺に差し出した
名刺だった
 
 
「シム....チャンミンさん
証券マンだったんですね
 
あ、俺、名刺とか持ち歩いてないので口頭でいいですか?
チョン・ユンホ、職種で言うと、技術屋です」
 
「チョン...さん、初めまして」
 
「初めまして
名刺、ありがとうございます
てっきり怒らせたかと思ってました」
 
「いえ...」
 
「何か、黙って立っててもつまらないかなって思って」
 
「あのっ」
 
「...はい?」
 
「中で...雨宿りしませんか?」
 
 
男はそう言うと、喫茶店の方を振り返って指差した
 
 
「ひさしの下でも足元が結構跳ね返りで濡れちゃうし...」
 
「あ、本当だ
じゃあ、せっかくだからお茶しましょうか」
 
「ええ」
 
 
 
 
 
「いらっしゃいませ」
 
 
テーブルに案内されると、なかなか落ち着いた雰囲気で居心地が良さそうだ
それぞれカフェオレとカフェモカを頼むと、何となく向かい合っているのが落ち着かなくて、店内をキョロキョロと見回した
 
 
クラシックな装飾で昔ながらの喫茶店
ワインレッドのビロード調ソファがところどころ擦れて光っているのもまた味がある
 
 
暫くしてコーヒーが運ばれて来ると、それぞれ黙ったまま口を付けた
 
 
「....はぁ、美味しい」
 
 
シムという男はホッとしたように息を吐くと、カップを両手で包んだ
その仕草はまるで女性的で、そういえば雰囲気もどことなく柔らかい
 
 
「正直、初対面のあなたとこうしてお茶するなんて自分でも意外です」
 
「俺もびっくりしました
シムさんが誘ってくれなかったらあのままずっと外で立ってるつもりでした」
 
「チョンさん、話し掛けるの止めそうになかったですし、どうせ話し掛けられるなら濡れない方がいいと思って...」
 
「...すみません」
 
 
両手の中のカップを見つめるシムさんの顔をじっと眺めた
 
 
雨音や周りの賑やかさで気が散っていて気付かなかったけれど、雑音のない環境で改めて見てみると、ハンサムというよりはキレイな人だと思った
 
大きな瞳に長い睫毛、スッと通った鼻筋
真一文字に引き結ばれた口元は、少し頑固そうな性格を窺わせた
 
 
視線に気付いたのか、目をパチパチと瞬いてこちらを見上げて目が合った
なぜだか分からないけれど、咄嗟に俺は目を逸らしてしまった
 
 
「...シムさんは誰かと待ち合わせだったんじゃないんですか?
さっき時間を気にするように見えましたけど」
 
「僕が?待ち合わせ?
いいえ、帰るところだったので特に予定はありません
チョンさんこそ、何か用事の途中だったんじゃないんですか?」
 
「いや、俺はぶらぶらしてただけだから...
そっか、じゃあ俺たち、お互い特に予定はないんですね」
 
「そうなりますね」
 
 
店の外で話していた時には気にもならなかったのに、面と向かってシムさんのキレイな顔を見てしまったら急に落ち着かなくなって、会話が続かなくなってしまった
 
 
でも、まだまだこうしていたい
予定がないなら尚更、できるだけ長くシムさんとここにいたい
 
 
どうしてそんな風に思うのか自分でも分からない
ただ、シムさんを引き留めていたいと、そう思ってしまった
 
 
 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※画像お借りしました※

 

 

こんにちは

急に思い立って短編を書いてみました

 

にわか雨が結び付けたユノとチャンミンの束の間のお話です

次の後編で完結する予定です

 

 

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