BL表現を含みますので、苦手な方はスルーでお願い致しますm(_ _)m

 

 

 

 

 

 

 

 

3学期がスタートして、僕らは最終学年への準備を着々と進めていた

来年はいよいよ受験、卒業、そして新しい生活が始まる

 

 

HRが終わって担任が教室から出て行くと、前に座るチャンミンの背中をトントンと叩いた

チャンミンは振り返ると、両足を通路側に出してイスに横向きに座り直した

 

 

「なあに?」

 

「チャンミンはさ、大学進学するんだよね?」

 

「大学?うん、そのつもりだけど、何で?」

 

「もうどこの大学にしようとか考えてたりするの?」

 

「んー...

特定の大学を決めてるわけじゃないけど、何となくは考えてるよ

自分の得意分野を生かせるとこがいいなって思ってるから

ユノも進学するんでしょ?」

 

「うん、そうだけど...」

 

「そうだけど、何?」

 

「同じ大学に行けたらいいのになーって」

 

 

するとチャンミンがぷっと吹き出して笑った

 

 

「あ、何で笑うんだよ

俺、そんな変な事言ってる?」

 

「だってさ...ふふっ

女の子みたいなんだもん、ユノ可愛すぎ」

 

「何それ、俺は可愛くないから

 

でも、チャンミンはそう思わないの?

同じ大学だったら今みたいに一緒にいられるんだよ?」

 

「そりゃあ思うよ、思うけど、でも大学は高校とは違うから

自分の得意分野を伸ばすために行くんだもん

将来の事も考えないとだし」

 

「まぁ...それはそうなんだけどさ」

 

 

チャイムが鳴って、散らばっていた生徒たちがそれぞれ席に着くと、間もなく一限目の歴史の先生が入って来た

 

 

 

それぞれの得意分野を伸ばすための場所

そして自分の将来を見据えて勉強をしないといけない

 

俺とチャンミンとでは得意な科目は全然違う

それは分かっているけれど、それでもやっぱり同じ大学に通いたい

 

 

恋人だから一緒にいたいという理由だけじゃない

高校を卒業してそれぞれ別の生活を始めた時に、チャンミンが俺から離れて行ってしまうのではないかと不安なのだ

 

チャンミンは子供の頃から、一つの場所に長く留まる事のない生活を送って来た

だから俺との事も、高校生活という一つの括りの中でだけ存在するもので、そこから出て行ってしまったらもう俺は過去の存在になってしまうのではないか...

 

受験、卒業、大学進学という言葉が現実味を帯びて来て、急に不安に襲われてしまった

 

勿論、チャンミンの俺への気持ちがそんなに浅いものだとは思っていない

これまで二人で過ごしてきた時間の一つ一つを思い出しても、チャンミンの気持ちは確かなものだと思うし、男同士で付き合うと決めた事も、親に打ち明けると決めた事も、生半可な気持ちでできるものではない

 

それでも結局、人の気持ちは流動的なもので、これから先がどうなるかなんて誰にも分からない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、チャンミンと駅に向かって歩いていた

今日はバイトがないので少しゆっくりめに

 

 

「ねぇユノ」

 

「ん?」

 

「今日話してた大学の話だけど」

 

「うん」

 

「二人で、同じ大学目指してみる?」

 

「...え?」

 

 

思い掛けない言葉に足が止まってしまった

チャンミンは数歩先に行ってから俺に気付いて立ち止まり振り返った

 

 

「ユノ?」

 

「同じ大学...目指していいの?

一緒の大学に通ってもいいの?」

 

 

チャンミンはふわりと微笑むと、俺の傍に戻って来てくれた

 

 

「うん

でも二人で合格しないと意味ないんだからね

もしどちらかだけが合格しちゃったら最悪だよ?」

 

「そうだね、それは困る

俺、頑張るよ、絶対に合格するから」

 

「ふふ...

ユノは賢いから僕は心配してないよ

一緒に通いたいね、大学」

 

「うん

あ、そうだ

もしかしたらさ、どこの大学にするかによっては一人暮らしになったりする?

一人暮らしって言うか....二人暮らし?」

 

「え...」

 

 

チャンミンの表情が一瞬固まって、それから真っ赤になった

そしていきなり俺の腕をバシバシと叩き始めた

 

 

「ユノ~~~っ!!!!

また変な事考えてるでしょ?

ダメだよ同棲なんて、エッチ!!!」

 

「あ、ちょ、ちょっと痛いよっ

待ってチャンミン、何で怒るの」

 

「だって同棲なんて言うから

 

ユノの方は良くても、うちの母さんが”うん”て言うとは思えない」

 

「...やっぱりそうかぁ」

 

「実際に訊いてみないと分からないけど

でも、家から通える距離だったら一人暮らしはできないんだから、それなりに遠い場所にある大学って事だよ?」

 

「まぁ、ね

同棲はただの理想で言っただけで、本当にそうしようとは思ってないよ

チャンミンがあんなに真っ赤になって反応するとは思わなかったな

 

あ、同棲したら毎日エッチしようと俺が思ってると思った?」

 

「なっ...!!!!」

 

 

チャンミンが更に耳まで真っ赤に染めて俺に殴りかかろうとしたから、慌てて数歩先まで小走りで逃げた

二人きりの時は大胆に俺を誘って来るのに、こういう時はなぜかすぐに赤くなる

そんなギャップが堪らなく可愛いし、逆を言えば、俺と二人きりの時だけ大胆になってくれるチャンミンが愛おしい

 

 

同棲したら、毎日かどうかはさて置き、きっと俺はチャンミンに甘えっぱなしのような気がするし、チャンミンはきっと今以上にツンデレが発揮される事は間違いない

それを思うと、同棲するという夢も捨て難い

 

でもチャンミンの言う通り、家を出るという事はそれなりに大学が遠い事が条件で、通える距離なのに家を出るのは現実的ではない

学生である以上、生活費や家賃も親が負担する事になるし、全てバイトで賄えるようにならないと親は説得できないだろう

 

一瞬だけ見れた同棲の夢を、いつか叶えられるように頑張ろうと思った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に帰ると、母さんが誰かと電話で話をしていた

そして俺の姿を見ると、なぜかニヤリと笑ってからこちらに背を向けた

 

 

...何だよ、今の

 

 

きっと親戚か近所のおばちゃん仲間に俺の話でもしているのだ

まさか恋人が同級生とか余計な事を言っていないかと、あの不敵な笑みが心配になる

 

 

着替えてリビングに行くと、もう電話は終わったようで母さんはテレビを見ていた

隣に座ってスマホを弄っていると、母さんが肘で俺をつついた

 

 

「ん、何?」

 

「今さっき、誰と話してたと思う?」

 

「え、近所の人?」

 

「ううん、違う

チャンミンのお母さん」

 

「えっ!?」

 

 

母さんは得意顔で俺をじっと見た

どうしてチャンミンのお母さんがうちの母さんと?

 

 

「びっくりしたでしょ?

実は母さんもびっくりしたの」

 

 

そう言ってフフフと笑った

 

 

「え、で、何の用事だったの?」

 

「それがね、驚かないで聞いてね

 

チャンミンをうちに泊めてもらえないかって相談されたのよ」

 

「え、うちに?チャンミンを?何で?」

 

 

突然の事に軽く頭がパニックだ

俺たちの交際を受け入れるのに時間が必要だと言っていたのに、この展開は一体どういう事なんだ?

 

 

「それがね、向こうのお母さんが仕事で2日程出張するんですって

それで、チャンミンはもう高校生だから一人で留守番とも思ったらしいんだけど、せっかくだからユンホ君のところにお世話になってもいいかしらって

 

どうする?泊めてもいい?」

 

「え...それは、俺の判断でいいの?」

 

 

すると母さんは、ん~...と唸って黙り込んでしまった

やっぱり俺たちの関係からしたら、チャンミンを家に泊めるなんて無理だよな...

 

 

「ごめんねユンホ

母さん、いいですよって返事しちゃった」

 

 

そして舌をペロリと出して悪戯っぽく笑った

まるで少女のような様子に呆気にとられて言葉も出ない

 

 

「良かったわね

チャンミンのお母さん、あなたたちの事はもう受け入れてくれてるわよ」

 

「そう...なのかな」

 

「そうよ、当たり前でしょ?

ユンホは母さん自慢の息子だもの

まったくチャンミンは幸せ者よ」

 

 

母さんはそう言うと、立ち上がってテレビのリモコンを探し始めた

それからチャンネルをニュースに変えた

 

 

「それで、チャンミンが泊まるのはいつなの?」

 

「あ、そうだったわね

来週の木金て出張なんですって

だから木曜の夜からチャンミンに来てもらって、金曜日はここから学校に行って、それでまたその晩はうちに泊まって土曜日に帰る、そんな感じかしらね」

 

「そっか、2日泊まるんだね...

え、チャンミンは俺の部屋で寝るの?」

 

「だってうちには客間なんてないでしょ

申し訳ないけど、床に布団敷いてそこに寝てもらってもいい?

来客用の布団が一組あるから」

 

「うん...分かった」

 

 

手の中のスマホを見下ろして、逸る気持ちを抑えてメールを開いた

きっとこの事はもうチャンミンも聞かされているに違いない

俺自身、今、物凄く興奮しているし、大声でやったー!!と叫びたいくらいの気持ちで、本当は電話で直接声を聴きながら話がしたい

でもここは敢えてメールにしようと思った

 

 

メールを書き終えて送信する前に読み返していたら、何と先にチャンミンからメールが来てしまった

 

 

『ユノ、お母さんから聞いた?

来週、ユノの家に泊まる事になったよ

どうしよう、嬉しい照れ

 

 

珍しく可愛い絵文字付きのメールに、思わず顔がニヤけた

 

 

 

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

 

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