BL表現を含みますので、苦手な方はスルーでお願い致しますm(_ _)m

 

 

 

 

 

 

 

 

チャンミンのスマホが無事に戻って、今まで通り連絡が取れるようになった

 

バイト後に会うのは自粛しているけれど、寝る前に声を聴いて、甘い言葉を囁けるだけで十分に満たされるし、いつでも会えると思わない方が、より相手を想う気持ちを強くするのか、学校ではヨンジェが嫌味を言うくらいにいい雰囲気だった

 

そして今週末、チャンミンを家に招くことになったので、そこで俺は二人の事を母さんに打ち明けるつもりだ

 

それはまだチャンミンには伝えていないし、伝えないまま当日を迎えるかもしれない

チャンミンには申し訳ないけれど、その方が母さんにはリアルに伝わる気がした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇユノ、明日はどんな服装で行けばいいのかな」

 

 

学校の帰り道、時々立ち寄る小さな公園のベンチに二人で座っていた

少し離れたベンチでは小学生くらいの子供たちが数人、スマホゲームに夢中になっている

 

 

「明日?別に普通でいいんじゃないかな」

 

「でも、食事に招かれるわけだし、カジュアル過ぎると良くないよね」

 

「チャンミンはいつも小綺麗な服装してるから大丈夫だよ

ほら、あれだよ、ちょっと街に出掛ける感じで考えればいいんじゃない?」

 

「そっかぁ...」

 

 

納得していないのか、表情はすっきりしない

 

 

「...心配?」

 

「そりゃあ心配だよ

だって、どんな風にしていればいいのか分からないし、もしポロっと口が滑ってユノと付き合ってる事がバレちゃったらって思うと...」

 

「大丈夫だよ、俺がフォローするから」

 

 

そう言ってチャンミンの手をそっと握り締めた

日も暮れかけていたし、子供たちはゲームに夢中だから気付かれないだろう

 

 

「うちの母さんの件で、トラウマみたいなってるんだよね

ユノのお母さんに反対されたくないし、ユノに嫌な思いもさせたくない」

 

「チャンミン...」

 

 

俺の手の上にチャンミンの小さな手が重ねられた

チャンミンの温かい手に包まれて、まるで俺が励まされているみたいだった

 

この小さな手を、何があっても守るんだと決めていた

俺たちが付き合う事でチャンミンを傷つけるような事があってはならないし、もしそうなったら全力で守りたい

 

でも今の俺は、チャンミンに計画を打ち明ける事なくカミングアウトしようとしている

もしかしたらその時、俺に裏切られたと思うかもしれない

どうして打ち明けてくれなかったんだと、僕だけ除け者なのかと怒るかもしれない

 

今更ながら、決意に迷いが生じた

 

 

「何だか不思議だな」

 

「何が?」

 

「だってさ...

前まではこうやってユノが人前で手を握ったりすると、反射的に手を引っ込めたり、何するのって怒ってたと思うんだよね」

 

「うん...そうだね」

 

「でもさ、今は何とも思わないんだ

あ、勘違いしないでね、何とも思わないって言うのは、何も感じないって意味じゃないよ?

ちゃんとドキドキしてるし、嬉しいし、ユノの事が好きだなぁって思うよ」

 

「うん」

 

「慣れ...なのかな...ううん、多分違うね

僕の中で、人前でもユノとこうする事は自然な事で、好きな人と触れ合う事が呼吸をするように当たり前になったんだと思う」

 

「そっか」

 

 

チャンミンが俺の手を一段と強く握り締めた

今日のチャンミンはいつもより良く喋るし、こんな風に胸の内を話してくれるのは珍しい

 

 

「ねぇユノ」

 

「ん?」

 

「明日の食事会でさ、ユノのお母さんに僕たちの事、話さない?」

 

「えっ...」

 

「この際だから、ユノのお母さんにも早く知ってもらった方がいいと思うんだ

うちの母さんだけ知ってても何かスッキリしないし

 

どうかな?」

 

「うん、いいと思うよ

俺もそうしようかなって思ってたんだ」

 

「え、本当に!?

じゃあ、そうしようよ」

 

「うん

その時は俺が話すよ

チャンミンは隣でしっかり聞いてて」

 

「分かった」

 

 

公園の外灯が点いて、それがちょうどチャンミンの顔を照らした

嬉しそうな、少し緊張しているような表情で俺を見ている

その頬を空いている方の手でそっと触れると、表情がほんの少し和らいだように見えた

 

まだ子供たちはゲームに夢中で、俺たちの事を気にも留める様子はない

 

 

「...!!」

 

 

一瞬だけなら許されると信じて、チャンミンの唇にキスをした

 

大好きな人が俺と同じ想いでいてくれた事が何より嬉しくて、小さな手の中に包まれた俺の手は、これ以上ないくらいの愛を感じていた

だから、そうせずにはいられなかった

例え殴られても構わない

 

唇を離すと、すかさずチャンミンの顔を覗き込んでご機嫌を窺った

ほんの少しだけ怒ったような表情をしていた

 

 

「キスはやり過ぎ」

 

「やっぱり?」

 

「でも、スリルがあって癖になりそう」

 

 

そう言ってニヒヒと笑った

出会った頃のチャンミンからは想像できないような変化で、俺と恋に落ち、付き合うようになった事で変化したのだとしたら嬉しい

 

 

「もう帰ろうか

いつまでもここにいたらそのうち抱き締めちゃうかも」

 

 

ゲームに夢中の子供たちを横目で見ながら公園を出ると、駅まではいつものように、同級生らしい距離感で歩いた

でも今の俺はそれを寂しいとは思わない

チャンミンの心は真っ直ぐ俺だけに向けられていて、俺はそれを全身で受け止めていた

 

 

 

 

 

 

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「いらっしゃい、チョン家の晩餐会にようこそ」

 

「おばさま、今日はお招きいただき有難うございます」

 

「いえいえ、こちらこそ別荘ではお世話になりまして...

何て、堅苦しいのはやめましょ!!

さ、上がってちょうだい

 

食べられない物とかないわよね?」

 

「あ、はい」

 

 

とうとう土曜日がやって来た

チャンミンと駅で待ち合わせて我が家に連れて来ると、母さんとチャンミンの寸劇まがいの挨拶が始まって、傍で眺めながら案外母さんとチャンミンは気が合うのかも、なんて思った

 

 

「すぐに支度するから座って待っててちょうだい」

 

「はい」

 

 

チャンミンとテーブルに着いて二人で気もそぞろにしていると、台所から母さんが顔を出した

 

 

「ちょっとユンホ!!!

あなたまで一緒になって座ってどうするの、手伝ってちょうだい」

 

「あ...だよね」

 

 

出来上がった料理をテーブルに運び、取り皿やお箸を用意し、ようやく全員が席に着いた

母さんはビール、俺とチャンミンはジンジャーエールで乾杯をすると、昼からせっせと仕込んであった唐揚げや煮物をあっと言う間に平らげた

 

 

「チャンミン君て、ユンホより食べるのね...」

 

「あ、母さんに言ってなかったね

チャンミン、こう見えてすっごい大食漢なんだよ」

 

「ホント、見かけによらずなのね

でもそれでこの細さなんだから羨ましいわぁ」

 

「おばさまの料理がとても美味しくて、幾らでも入っちゃいます」

 

「まぁ!!女心もしっかり掴む術を身に着けて...

学校ではモテモテなんじゃない?

って、男子校だったわね」

 

 

何となくその流れで、これから話そうとしている事を思い出して、二人で目を見合わせた

母さんの機嫌がいいのが何よりだけれど、やっぱり食後がいいか

 

一通りお腹いっぱい食べると、テーブルの上を片付けて紅茶を淹れた

いよいよこれから、俺の出番だ

 

 

「チャンミン君、お腹いっぱいになった?」

 

「はい、どれも本当に美味しくて...

本当に有難うございました」

 

「また来てちょうだいね

庶民的な料理しか出せないけど、腕に自信はあるのよ」

 

「はい、是非!!」

 

「ユンホにもこんな風に品の良くて可愛いお友達ができるなんてね

いつも男っぽい友達ばっかり連れて来るから、初めてチャンミン君を見た時に、”あら、女の子!?”って思ったのよ」

 

 

そう言って母さんが俺の方をチラッと見た

チャンミンは恥ずかしそうにテーブルの上に視線を落としている

 

 

「それに性格も丸くなったかも

悪い子じゃないけど、突っ張ってるような時もあったし

男臭いから、彼女なんてできないんじゃないかって心配はあるんだけどねぇ

 

まぁ...チャンミン君は彼女じゃないけど、ユンホの性格を変えるくらいの影響力はあるのね」

 

 

母さんの、核心を突くような発言にドキっとした

 

確かに俺は、チャンミンに関してはヨンジェや他の友達とは明らかに違う態度を取っている

出掛ける頻度も増えたし、その相手はいつもチャンミンだし

でもそれは、単にヨンジェより気が合う友達ができた、それくらいの事として見られていると思っていたから、性格が丸くなったとか言われてちょっとびっくりした

もしかしたら、母さんは何となく気付いているのかもしれない...

 

 

「あのさ」

 

 

俺は思い切って話を切り出した

いつまでも延ばし延ばしにはできない

今日は母さんに打ち明けると二人で決めたんだ

 

 

「母さんに話したい事があるんだ」

 

「なあに?」

 

 

チャンミンの方を見ると、大きな瞳は俺を真っ直ぐ見ていた

口を一文字にキュッと結んで、先を促すように小さく頷いた

 

 

「俺さ...

今、 好きな人がいるんだ」

 

「...あら、そうなの?」

 

 

そう言いながら、俺とチャンミンを交互に見た

 

 

「それ、今ここで話すの?

チャンミン君もいる席だけど」

 

「うん、だから話すんだ

だって...

 

 

俺の好きな人..っていうのはチャンミンで、俺たち、付き合ってる」

 

 

 

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

 

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