BL表現を含みますので、苦手な方はスルーでお願い致しますm(_ _)m

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日曜日はそのまま俺の部屋で一緒に映画を観たり、それぞれが好きなように本や雑誌を読んだりして過ごし、夜は俺のベッドで一緒に眠った

 

勿論、チャンミンを抱いてから

 

もはや一緒に過ごす事はイコールそのまま体を重ねる事に繋がっていて、俺もチャンミンもそれが自然な流れになりつつあった

だからこそ余計に、同じ屋根の下で別々の部屋を借りている事が非経済的な気がしている

 

”一緒に住む”

それがどういう事か、十分理解している

 

二人の間に恋愛関係が成立している以上、もう後戻りはできないし、するつもりもない

きっと二人のやり取りを見れば、そこに恋愛感情があるかないかぐらい分かるだろうから、遅かれ早かれ近隣住民に俺たちの不思議な共同生活がどう見られているのかそれなりに覚悟が必要だし、チャンミンに対しての責任も生じてくる

 

そもそも俺は、自分の気持ちを隠してチャンミンとの関係を周囲に知られないようにするつもりはない

愛する人と過ごせる時間は可能な限り大事にしたいから、気持ちに嘘はつきたくないと思っていた

多分それは、昨日見たドキュメンタリー番組の影響なのかもしれない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝はいつものように、チャンミンと途中駅まで一緒に通勤した

珍しくチャンミンも嫌がる事なく、心境の変化でもあったのかと思った

 

 

「今日は帰りが遅くなるんでしたよね?」

 

 

間もなく俺の降車駅というところでチャンミンが思い出したように言った

 

 

「ん?あぁ、そうだね

大丈夫だよ、ちゃんと連絡するから」

 

「いえ...そういう意味で言ったわけじゃないです

念の為、確認しようと思っただけですから...」

 

 

よく分かってる、これはチャンミンの照れ隠しだ

本当は凄く気になっているのに素直にそう言えない性格だから

最初の頃こそこういう態度に戸惑ったけれど、今はもうチャンミンの言葉の裏を読めるようになっていた

 

 

「そんなに遅くなるつもりはないけど、起きてなくていいからね

それに...チャンミンの部屋に帰るわけじゃないから構わず寝ててよ」

 

「そのつもりです」

 

 

本当はこのまま抱き締めて好きだと伝えたい

男友達に会うだけなのに、ヤキモチを焼いているチャンミンが可愛くて堪らない

 

ふと思いついて、その場でスマホを開くとメールを書いて送信した

すぐに気付いて自分のスマホを取り出すチャンミン、そして...

 

 

「ユノ...」

 

 

そう言って俺を見上げると、ふわっと笑ってそのままスマホをポケットにしまった

そして降車駅に着いて、視線を交わして俺たちは別れた

 

 

改札を出る頃にスマホが震えて、チャンミンから返信が来ていた

 

 

『ユノの残り香にドキドキした

お仕事頑張って』

 

 

こんな風に胸を熱くする恋愛になるだなんて、想像すらしていなかった

 

 

 

 

 

 

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間もなく定時という頃にスマホが震えて、チャンミンかと思ったら今日会う予定の友人だった

ほんの少しガッカリしながらメールを開くと、そろそろ向かうという内容だった

 

友人とは俺の住んでいる地元で会う事にしていた

というのも、友人の泊まっているビジネスホテルが沿線だったのと、終わったらすぐに帰れるようにしたいという俺の我儘から勝手に決めさせてもらった

勿論、本人には二つ目の理由は言えないけれど...

 

決して仕事が暇という訳ではないけれど、すぐに帰れるようにと帰り支度を始め、時間になるとさっと会社を出た

開始が遅れるとそれだけ帰りも遅くなるから、チャンミンに余計な心配を掛けたくなかった

 

 

 

 

 

待ち合わせ場所に着くと、既に到着していた友人が俺に気付いて手を挙げた

 

 

「おぉ、久し振り!!

変わってないな、ユノ」

 

「おぅ、久し振り

俺?それなりに老けたよ

お前だって変わってないじゃん」

 

「いやいや...

や~でも、やっぱお前はカッコいいわ

昔っからそうだもんな、飛び抜けてモテたもんな」

 

「昔の話だよ

さ、行こうか、すぐ近くだから」

 

 

連れて行ったのは、駅前にあるチェーン店の居酒屋

まずはここで飲みたいだけ飲み、食べたいだけ食べる

それから行きつけの小料理屋に移動してまったりと飲む予定だ

 

 

「ユノはまだ独り身だよな?」

 

 

席に着くと、おしぼりで手を拭きながら友人が言った

 

 

「当たり前だろ

結婚するんだったらお前に報告するよ」

 

「だよな、彼女もいないの?」

 

「恋人?いるよ」

 

「なんだ、いるのか」

 

「なんだって何だよ、いいだろいたって

それも報告義務があるのか?」

 

「いや、ないけどさ...でも、そっか、いるのか...」

 

 

ガッカリしたような言い方が気になってそこを突っ込んだら、どうやら俺に縁談の話をしろと両親から言付けられて来たのだと言う

しかもその相手はこっちに住んでいると言う

 

 

「そんな事、俺には一言も言って来なかったぞ?

なんでお前にわざわざ頼んだんだ?って言うか、急に言われても困るけど」

 

「そうだよな、ユノに恋人がいない前提で話してたから

でもいるんだったらこの件はナシって事で伝えておくよ

相手の女性にはまだ正式には話してないから大丈夫だと思う」

 

「うん、頼むよ

そろそろ一緒に住もうかって話してるところで、将来の事も真剣に考えてるからさ、その人とは」

 

「え、そうなの?

ふ~ん...いよいよお前も身を固める時が来たのか」

 

「大袈裟だな

あ、でも俺の親にはまだ言うなよ、自分から報告したいからさ」

 

「うん、分かってるって

でも、そうかぁ...ユノがねぇ...」

 

 

遠い目をするようにどこかを眺めている友人を見ながら、今自分が言った事の責任はちゃんと取らないといけないな、と思った

きっとチャンミンに言ったら、「何でそういう大事な事をさらっと人に話しちゃうんですか!?」と怒られそうだけれど、それだけ真剣に考えているのだ

真剣に考えているけれど、慎重に進めなければいけない恋愛なのも事実で、そこは軽はずみに漏らす事はできない

 

 

「...んで、そのお相手とはどこでどう知り合ったの?」

 

「え?」

 

「だから、その真剣交際の恋人とだよ

お前の事だから合コンとかじゃ引っ掛からないだろ?」

 

「...うん、まぁね

家が近かったんだよ

それで偶然知り合ってさ」

 

 

嘘はついていない

でもさすがに隣に住んでいるとは言えない

 

 

「へぇ、そうなんだ?

じゃあもしかしたら、そうなる運命だったのかもな

ふ~ん、そんな事もあるんだぁ...

え、じゃあ毎日会ってたりするの?」

 

「毎日ってわけじゃないよ、向こうだって仕事があるし、自分の時間だって必要だろ?

あんまりべったりして鬱陶しいって思われたら嫌だし」

 

 

でも本音はその逆だった

本当は毎日だって会いたいし、いられる限りずっと傍にいたい

でもそんな事を言って重たがられるのは目に見えている

 

 

「へぇ、随分と相手に気を遣ってるんだ?

ユノがそこまで慎重になるって事は、本当に真剣なんだね

幸せな人だよ、その彼女さんは」

 

「幸せに感じてくれてるかは分からないけど、真剣なのは本当だよ」

 

 

彼女さんではないけどね、と内心思いながらチャンミンの大きな瞳を思い浮かべた

時折見せる中性的な表情や仕草に心を奪われたのも事実だった

 

 

そんな感じで恋愛や仕事の話をして、程よく胃が満たされたところで二軒目に移動した

そして日付が変わる頃にようやくお開きになった

 

沿線にホテルを取っているので終電の時間も余裕で見送ると、家路に向かう前にチャンミンに約束していたメールを送った

 

暫くしても返事がないから、もしかしたら睡魔に勝てずに寝てしまったのかもしれない

せめて合鍵くらい持っていればこっそり忍び込んで一緒に眠れたのに...なんて考えながらアパートに到着して、鞄から家の鍵を取り出り、階段を上り、廊下を進もうとして...

 

廊下の中央、ちょうどチャンミンの部屋と俺の部屋の間に人が立っていてドキリとした

 

 

「え...チャンミン?

まさかいるとは思わないからびっくりした...

わざわざ待っててくれたの?」

 

 

黙ってコクリと頷いた

直前まで寝ていたのだろうか、髪の毛に変な癖がついていた

 

 

「もしかして寝てた?」

 

「寝るつもりはなかったんですけど、寝落ちしちゃって...

でもユノのメールで飛び起きて、それでここで待っていようと思って」

 

「寝てていいよって言ったのに、でもありがとう、凄く嬉しいよ」

 

 

近付いて抱き締めようとしたら、チャンミン自ら俺の胸の中に飛び込んで来た

まるで拗ねた子供のように、肩に顔を埋めて両腕でぎゅっとしがみ付いている

 

 

「どうしたの?何かあった?」

 

「...居酒屋くさい」

 

「うん、まぁそうだろうね、2軒行ったからね

ニオイが移るから離れた方がいいかも」

 

 

そうっと引き離すと、チャンミンの頬にキスをして顔を覗き込んだ

直前まで寝ていたせいか、まだ目がトロンとしている

 

 

「起きて来てくれてありがとう

いると思わなかったから本当に嬉しかったよ

俺もちゃんと帰って来たし、チャンミンも部屋に戻って寝て」

 

「ユノはもう寝るの?」

 

「いや、シャワー浴びてから寝るよ」

 

「ふうん...一人で寝るの?」

 

「まぁ...そのつもりだったけど...何で?一緒に寝たいの?」

 

「...迷惑ならいいです」

 

 

余りにも素直じゃないから思わず鼻で笑ってしまった

何て愛おしい人なんだろう...

 

 

「分かったよ、じゃあ俺のベッドでもいい?

鍵は開けたままにしておくから、支度したらこっち来て先に寝てて

もう遅いから、本当に寝るだけだからね」

 

「分かってる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

分かってる、なんて言葉が本心じゃないのは表情を見ればすぐに分かった

それに俺だって、もう遅いから、なんて言葉に何の意味もない事くらい知っている

 

 

傍にいる限り、その素肌に触れたい

その唇を味わいたい

その喉から漏れる甘い声に包まれたい

 

 

二人の夜はいつだって唐突に始まるのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※画像お借りしました※