BL表現を含みますので、苦手な方はスルーでお願い致しますm(_ _)m

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ん、今何時だ?

 

ゆうべはシャワーも浴びずに着の身着のままベッドに入ってしまったようで、靴下も履いたままだった

とりあえずサッパリしようと重い体を持ち上げてベッドから這い出ると、替えの下着だけ持って浴室へ向かった

 

 

シャワーを済ませて出ると、そのまま下着姿で寝室へ戻り、クローゼットを開けて服を選んだ

今日もチャンミンの部屋で映画鑑賞か...

 

こんな風に服装に気を遣うのは久々だった

30歳を過ぎてからも、男友達や会社の仲間と遊んでばかりで恋愛から少し離れていた

そういう相手を探していないわけではないけれど、たまたま縁がなく、結局は友達と一緒にいるのが気楽でいいと思ってしまう

 

いや、これは恋愛、なのか?

 

一夜限りの関係というと聞こえは悪いが、チャンミンとはそういう一時的な関係だと思っている

相手は男で、お互いに本来ならば女性を相手にしているノーマルだ

それが今はワケあって俺とそういう関係になっている

 

これがずっと続くとは想像できないし、向こうもそれを望んではいないだろう

失恋の痛手から立ち直れば、自然と新しい恋を探しに前を向くはず

 

そうしたら俺も、また元の生活に戻ればいい

 

 

 

着替えてキッチンへ向かうと、いつものようにトーストと牛乳で簡単に朝食を済ませた

牛乳が残り少なくなっていて、お酒やスナック類もストックが切れかかっている

チャンミンとの付き合いが始まってお互いの部屋に行き来するようになったから、お酒を始め食料は何かとあった方が便利だ

 

買い出しに行くか...

 

財布をポケットに入れて部屋を出ると、チャンミンの部屋の前で一瞬立ち止まって、すぐに思い直してそのまま歩き出した

子供じゃあるまいし、買い出しするのに声を掛ける必要もないかと苦笑した

 

 

 

駅前のスーパーに着いて、必要なものをカゴに入れてからお酒のコーナーに向かった

日曜日の昼間だからか、男性客がいつもより多い気がする

そしてその中に、見覚えのあるシルエットを見付けて足が止まった

 

 

チャンミンだった

 

 

まだ距離があるから、このまま踵を返してひとまず会計を済ませてお店を出てしまおうかとも思った

でも結局またお酒を買いに来なければならないし、それも面倒に感じた

どうせ後でまた会うのだから...

 

 

「こんにちは」

 

 

そばまで近付くと、ポンと肩を叩いて声を掛けた

驚いたように振り向いてから、俺だと分かってホッとした顔をした

 

 

「ユノさん!!!誰かと思いました」

 

「買い出し?」

 

「はい、今日の分と、あとは普段の分と」

 

 

チャンミンはカートを押していて、カゴの中の大半はお酒だった

 

 

「これ全部、今日飲むの?」

 

「まさか!!ユノさんの分もありますけど、自分が普段飲むための分です

お酒はいくらあってもいいですし、ないと逆に心配になっちゃうんで」

 

「あぁ...」

 

 

大量のアルコールを目にしてつい焦ってしまった

チャンミンが俺を泥酔させてどうにかしようとしているのかと、本気で思ってしまったのだ

今は何でもかんでもそっちに結び付けてしまう自分が怖い

 

 

「ユノさんも買い出しですか?」

 

「あぁ、俺は普段の食料ストックをね

料理はしないけど、必要最低限のものは揃えておかないと」

 

「...確かに、必要最低限ですね、それ」

 

 

チャンミンが俺の持っているカゴの中を覗きながら呟いた

その時に顔がすぐそばまで近付いてきて、慌てて上半身を反らした

こんなことで意識しているようじゃ、今夜はお酒を控えたようが良さそうだ

 

 

それぞれレジで会計を済ませると、何となくそのまま一緒にアパートへと戻った

でもお互いに食料品を買っているので、チャンミンの部屋の前で別れて自分の部屋に戻った

そして冷蔵庫に必要なものをしまっていると、インターホンが鳴った

 

 

ん、何だろう?

 

 

昼間だし男の一人暮らしだし、そのままドアホンも見ずに玄関を開けたらチャンミンが立っていた

なぜか照れ臭そうにこちらを見上げている

 

 

「あれ...どうかした?」

 

「どうかしないと、訪問しちゃダメですか?」

 

「いや、そういうわけじゃないけど

今日は夕方から行くって言ってあったと思ったから、早いなと思って」

 

「早く来たらダメですか?」

 

 

いちいち突っ掛かる言い方をしてくる

もしかして、時間より早く訪ねたことが恥ずかしくてそれを誤魔化しているのか?

別にそんなこと気にする必要ないのに...

 

 

「いや、ダメなんて思ってないよ

まだ早いけど、もう観るってこと?」

 

「実は...時間を持て余しているんです

もし他に用事がないようならと思って、声を掛けてみました」

 

「あぁ、なるほど、うん、まぁいいけど

ちょっと買ったもの片付けてるから、終わったら行くよ」

 

「はい

急かしてすみません」

 

 

チャンミンが部屋に戻って行くと、急いで買ったものを片付けてから映画のBlu-rayを持って部屋を出た

予定していたより時間が早まったせいで心の準備ができていなくて、異常にドキドキしている

 

部屋の前に立って軽く咳ばらいをしてからインターホンを押すと、まるでドアの向こうで待っていたかのようにすぐに開いた

 

 

「すみません、急かしてしまって」

 

「いいよ、俺も時間持て余してたし

早く観始めた方が早く終わっていいんじゃない?」

 

「え、じゃあ、早く帰っちゃうんですか?」

 

「早くというか、まぁ時間を見て

でも、明日は月曜だからあんまり遅くまでいるつもりはないよ」

 

「そうですか...」

 

 

そんなに?と思うほど落ち込んでいる様子に驚いてしまった

そうなるとますます、チャンミンが俺に期待していることが気になってしまう

ただ一緒に映画を観て、夕飯を食べて帰る、それだけでは許されないのだろうか?

 

 

「あ、夕飯のピザ、今から注文しておきましょうか

映画が始まったら途中で注文するの面倒ですし、今はネットで時間指定もできますからね」

 

「あぁ、そうだね

内容はチャンミンに任せるよ」

 

 

チャンミンがスマホでピザを手配している間に、持ってきたBlu-rayをセットしてソファに座って待った

ほどなくしてチャンミンがやって来ると、飲み物をどうするか訊かれてコーヒーと言ったら、あからさまに怪訝な顔をされてしまった

 

 

「ユノさん、飲まないんですか?」

 

「うん、今日はやめとくよ」

 

「それって...

昨日みたいになるのが嫌だからですか?」

 

「いや、明日のこともあるし、無理しない方がいいかなって」

 

 

それは本音だ

酔ってはいても、チャンミンと過ごした昨夜の事ははっきりと覚えている

全く不快ではなかったし、それどころかチャンミンに夢中になっている自分がいた

 

チャンミンの色っぽい仕草や眼差しはどんどん俺の欲情を掻き立て、そして暴走させた

できることなら今日も再び、と思ってしまう程に

 

でも、それが同時に不安でもある

自分が日常的にチャンミンと肉体関係を持ちたいと望んでしまうような気がして、そうなるともう、一時的なものではなくなってしまう

 

そうやって、自分が知っている自分でなくなるのが怖かった

 

 

「とりあえずまだ昼間だし、お酒は遠慮するよ

もう注文は済んだの?」

 

「はい、19時に届くようにしました」

 

「19時...今から観るならちょうどいいね

じゃあ、すぐ観ようか」

 

「あ、じゃあコーヒー淹れますね」

 

 

健全にコーヒーを飲みながらの映画鑑賞が始まると、昨日に引き続き、チャンミンは夢中になって見入っている

その様子を横で見ながら、思わず嬉しくなってしまった

自分が気に入っている作品にこうして夢中になってくれると、楽しみも倍になる

 

 

そして見終わると間もなくデリバリーのピザが運ばれて来て、ダイニングテーブルでピザの箱を広げていると、目の前にビールの500ml缶が2本、ゴン!!、と置かれて顔を上げた

 

 

「...え?俺、飲まないって言わなかったっけ?」

 

「そう言ってましたけど...ピザと言ったらやっぱりお酒がないとダメですよ」

 

 

そう言いながら悪戯っぽく笑うから、迂闊にも胸がキュンとしてしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※画像お借りしました※