BL表現を含みますので、苦手な方はスルーでお願い致しますm(_ _)m
<the view from Changmin>
ジュースを持って部屋に戻ると、ユノはゲーム雑誌を読んでいた
僕のことをオタクか何かだと思って引かれていたらどうしようと思ったけれど、その心配はなさそうだった
でも、例えそう思われていたとしても事実だから否定はしない
「なぁ...
チャンミンはこういうの好き?」
そう言ってユノが開いて見せたのは、巻頭グラビアのページだった
売り出し中のアイドルが、やたら面積の小さな水着を身に付けて微笑んでいる
普段はなんとなく流し見しているページで、というのも僕は正直この手のものが苦手だ
必要に駆られて見ることはあるけれど、いつも見ているわけじゃない
「嫌いじゃないけど、それが目当てで買ってるわけじゃないから」
もしかしてユノは僕がいない間、グラビアを熱心に見ていたのだろうか
実際どうだったのかは分からないけれど、なんだか無性に不愉快になって、ユノの手から乱暴に雑誌を取り上げると本棚に戻した
ほとんどハダカに近い女の子に鼻の下を伸ばしていたのかと思うと、凄く悔しい
だって、男の僕には到底太刀打ちできないのだから
「ユノは...
やっぱり女の子が好きなんだよね」
無意識にそんな言葉が口をついて出ていた
その返事次第では僕のこれからが左右される
「なんでそんなこと訊くの?」
ユノが鋭く返してきて、やっぱり訊くんじゃなかったと後悔した
自分でもどうしてこんなことを言ってしまったのか分からない
でも、自分に可能性があるのかないのか、気になるのは事実
でも、答えを知るのは怖い
「...男の子が好きって言ったら、どうする?」
思い掛けないユノの言葉に頭が真っ白になった
動揺した顔を見られたくなくて、咄嗟に口元を手で隠した
本気で言っているのか、からかっているのか...
ユノはゆっくりと近付いて来て、口元を隠した僕の手を掴んで下ろした
「俺が...
チャンミンのことが好きだって言ったらどうする?」
...まさか
そんなことあるわけない
冗談で言ってる?
でも今の僕にとってそれは冗談にならない
だって、本気でユノのことが好きだから
何も言えないままユノのことをじっと見つめていたら、今度はユノの顔がゆっくりと近付いてきて、そして...
僕にキスをした
すぐにユノの唇は離れて、僕たちは至近距離で見つめ合っていた
ほんの一瞬だったけれど、今の今までユノの唇が僕の唇に触れていた
その事実は僕の体を炎のように熱くした
そしてユノは...
僕がユノにしたのと同じ質問をしてきた
"どんな気持ち"かなんて、答える余裕もなければ考える余裕もない
ただ"キスをされた"事実、それだけが頭の中をグルグルと回り続けていた
ユノの瞳に映る僕は、どんな風に見えているの?
僕の気持ちはユノに伝わってしまっているの?
ユノは...
そんな僕をからかっているの?
ふいにユノの指先が僕の唇を撫でて我に返った
触れられる度に体が反応してしまって、それが堪らなく恥ずかしい
なんでキスなんてするんだよ...
顔を背けて目を瞑っていたら、低く囁くような声で名前を呼ばれた
それから、"俺を見て"と言って、ユノは僕の頬に手を添えた
ユノの声はとても穏やかで、優しくて、なんだか逆らえなくて、その手に導かれるようにユノの方を振り向くと、そっと顔が近付いてきて、再び唇が触れた
さっきとは違う、少しだけ強引なキス
そこにユノの気持ちが込められているようで、恥ずかしいけれど凄く気持ちいいと思った
そしたらなんだか変な声が漏れてしまって...
次の瞬間、熱くて柔らかい湿った何かが僕の唇に触れた
ユノの舌だった
僕はびっくりしてユノを突き飛ばしてしまった
キスをされて確かに嬉しかったし、気持ちいいと思った
でも、そもそもどうして僕にキスをするのかが分からないまま
僕のことを好きでそうするのか、ただ揶揄っているだけなのか
いきなりそんなキスをされたら、もうパニックだよ
ユノを突き飛ばしてそのままベッドに突っ伏しと、ひたすら混乱する頭を抱えていた
心臓はあり得ない速さになっているし、自分の部屋なのにとても居心地が悪い
しばらくユノは黙っていたけれど、"そのままでいいから聞いて"と言って静かに話し始めた
それは、僕がずっと知りたかったユノの本当の気持ちだった
言葉を選ぶように、ゆっくりと静かに語るユノに耳を傾けた
「俺は...
チャンミンのことが好きなんだ
好きだから触れたいって、そう思っちゃったんだ」
僕が一番知りたかったこと、それがユノの口から聞けた
ユノと出会ってから、僕の中で色々なことが変化した
人と深く関わることを避けてきて、友達とも浅くしか付き合ってこなかった
どうせまた引っ越すんだと思うとそれも致し方ないと思っていたから
でもユノと知り合った時、そういう考えは浮かんでこなかった
もちろん最初は、学級委員のユノに迷惑を掛けたら悪いとか、余計な用事を増やして不愉快になっていたらイヤだなとか、そういう心配はしたけれど
ユノがイヤな顔一つせず誠実の塊みたいな顔をして声を掛けてくれた時に、不思議とすんなりその厚意を受け入れることができた
それだけじゃない
ユノとなら深く関わってもいいと思えた
それが、実は「好き」の始まりで、いわば一目惚れみたいなものだなんて、その時は全然分からなかったけれど
そのユノが、僕のことを好きだと確かにそう言った
僕はゆっくり起き上がると、その言葉の真意を確認した
ユノは、僕が男だと分かっていて好きだと言ってくれた
そっか...
それならキスされたって構わない
抱き締められたって構わない
だって、好きな人にそうされるのを嫌がる必要ある?
だから僕も、ユノにちゃんと伝えておいた
「僕もユノが好き
だから迷惑じゃないよ」
僕の気持ちは、真っ直ぐユノに向かっていた
※画像お借りしました※