映画感想「座頭市地獄旅」 | 大TOKYOしみじみ散歩日記

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お独り様となった50路男の、ぶらぶらノンビリンの東京物語

映画・マンガ・小説・芝居・テレビに動物
そして大切な母ちゃんとの想い出も時おり混ぜ合わせて

書き留めてゆきたいなと、思います

『座頭市地獄旅』(1965)


結構、船旅好きな座頭市
本日も館山から三浦岬へと向かう船に乗ろうとして足を踏み外し、あわや海に真っ逆さまという処を前に居た男に救われます
十文字糺と名乗る素浪人
ヤクザを簡単にあしらう市を面白がり、また市のほうでも貴賎を問わない糺の事が気に入り始め
将棋ができる事も2人の仲を急激に近づけたのですが
市が(待った)を願うと
(待ったは許さん!…最初から待ったは無しの約定だ)
異様な緊張が周りを包み
二の句が告げない有様に、殺気さえ感じる市でした
シリーズ第12作目
第1作目から数作に見られた座頭市の孤独や、致し方なしに相手と対峙する悲哀がすっかり薄れ、今度は何人、次は何人斬りましたと居合(殺陣)の凄みばかりに話題が注がれる傾向を

伊藤大輔の見事なシナリオと、三隅研次の確かな演出でマンネリを回避した
シリーズどころか、時代劇の秀作です

座頭市に孤独と寂しさを感じて親近感をくすぐられて行動を共にしながら
仇討ちの敵としての身である十文字を演じた成田三樹夫さんの存在感が圧倒的ですが

軒づけに身をやつし、ヤクザの亭主を斬った座頭市を探している女を演じた岩崎加根子さんの抱く孤独と淡い恋慕は
市の周りにいつも付き纏う、芳しくも儚い定石として絶品でしたし
そんな彼女に付き纏って市を追う、また別のヤクザが現れたりと
多彩な人出入りの捌き振りにうっとりします

孤独と敵討ち
時代劇にあって悲壮感を感じさせる要素を
片想いという切なさで包み込んだ優しさが、伊藤シナリオの美しさ
人斬り包丁が離せない、男から男への片想いと
女を愛する心を閉ざした男心に嫉妬する、女心の片想いを

そして幼い少女への父性と愛情を封じ込める座頭市自身の片想い
歳を重ねて、益々シリーズの(大人たちの哀)に心打たれるようになりました


昭和40年・大映
脚本〜伊藤大輔
音楽〜伊福部昭
監督〜三隅研次
出演
勝新太郎
岩崎加根子
戸浦六宏/須賀不二男
丸井太郎/遠藤辰雄
山本學/藤岡琢也
伊達三郎/五味龍太郎
林千鶴/藤山直子(現・直美)
成田三樹夫