映画感想「泣き濡れた春の女よ」 | 大TOKYOしみじみ散歩日記

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お独り様となった50路男の、ぶらぶらノンビリンの東京物語

映画・マンガ・小説・芝居・テレビに動物
そして大切な母ちゃんとの想い出も時おり混ぜ合わせて

書き留めてゆきたいなと、思います

『泣き濡れた春の女よ』(1933)


北海道へ渡る船で男と女は出会いました
男は渡り者の炭鉱夫
女は子連れの、雇われマダム

幼い娘に優しさを見せる男にほだされながらも、これからを不安に思わずにはいられない女はついつい男にイヤミな態度をしてみせます

流れ着いた北の果て
掘って掘って掘りまくり
強い日本の糧にせん

上官と呼ばれる野卑な現場監督の下
男たちは危険と隣り合わせの炭鉱で命を張り

そんな彼らを癒す代価で生き抜いて
女たちも命を張るのでした

昭和8年、城戸四郎所長に可愛がられていた清水宏 監督作品は松竹蒲田10作目のトーキー映画として期待の中公開されたそうです

青函連絡船をはじめとした北海道ロケと、陰影を意識したセット撮影が監督の(ヤル気)を感じさせますが
物語は流れ者同士の、愛情の交流と別れをサラリと描いた単純なもので
全体を貫く(優しさ・気取り)が気に入らない人には退屈かもしれません

主演の大日方伝(おびなた でん)の渋み
岡田嘉子の艶っぽさ
この辺りに大人の恋の難しさをくすぐられながら
キナ臭い世相からはみ出して生きて行かざるを得ない人々のニヒリズムを
私は感じます

清水宏 監督作品としては、このあと作られてゆく幾多の秀作や微笑ましい作品に比べると取っつき難いですが

底辺で生きながら正々堂々、自分を仲間を
男を女を愛して止まない気持ちの綺麗な人々の物語は
監督人生としての大切な足跡ではありました


昭和8年・松竹蒲田
原作〜本間俊
脚色〜陶山密
監督〜清水宏
出演
岡田嘉子
大日方伝
千早晶子
小倉繁
村瀬幸子
大山健二