映画感想「鼠小僧次郎吉」 | 大TOKYOしみじみ散歩日記

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お独り様となった50路男の、ぶらぶらノンビリンの東京物語

映画・マンガ・小説・芝居・テレビに動物
そして大切な母ちゃんとの想い出も時おり混ぜ合わせて

書き留めてゆきたいなと、思います

『鼠小僧次郎吉』(1965)



今宵また、大店の屋根に立つ黒装束
世に出たがる金を見つけては助け出し、小判についぞ出逢えない貧しい人へ一枚二枚と施して
世に義賊なる言葉を流行らせたこの男
名は誰も知りませんが、人はいつからか

鼠小僧と、呼ぶようになりました

どうやら今夜は、自分を追う立場の町衆で実は貧民窟を一掃し、一大娯楽施設をおっ建てて荒稼ぎを企んでいる梵字の安五郎宅に
忍び込んでみるようです……

世に伝承は数あれど、実在の泥棒がここまで美化されて200年余りもヒーロー扱いされたのは
本人が盗みに盗んで3000両はくだらないという金銀が、100はくだらない大名・旗本屋敷からのみ戴いて
庶民からは(商人を含めて)一銭も盗んではいなかったという、溜飲の下がる思いを提供した清々しさが大いに認められたからでしょう

やがてそれは(貧しい者へ施している)という美談まで作られて
芝居や講釈、やがて時代の変遷の中で小説などにも取り上げられて
サイレント期の映画にも既にその姿は、正義感と義理人情に厚い二枚目として
活躍していました

時代劇作家の大家、大仏次郎の原作である本作さえ
昭和40年で3回目の映像化
大河内傳次郎がそれ以前に演じた鼠小僧と、虚無的な生き方から彼に味方をする小谷新九郎の二役を
林与一が演じ分けました

市川雷蔵、勝新太郎が大活躍する大映が、わざわざ東宝から林与一を引っ張って来ての主演は
勝手な推測では前年に大ヒットしたテレビ大河ドラマ(赤穂浪士)で小谷の原点ともいうべき虚無の浪人・堀田隼人を演じて人気者となったからという気がします

まあ、鼠小僧役として見るなら
勝新よりクセが無く、雷蔵よりオシが弱い林与一の美男子ぶりは、まずまず決まっていました

ただ、小谷新九郎のキャラクターがもう一つ薄幸さがあればなあと見ていたのですが
全体を明朗にと狙っていたかのクライマックスを見ると
これもまたアリなんでしょうね

助演では鼠小僧を追う年季の入った岡っ引を演じた浜村純が素晴らしいです

三隅研次の巧みさ、新藤兼人の安定にしっかり守られた
大映色の楽しい時代劇です

昭和40年・大映
原作〜大仏次郎
脚本〜新藤兼人
監督〜三隅研次
出演
林与一(二役)
姿三千子
藤村志保
工藤堅太郎
須賀不二男/伊達三郎
香川良介/仙波丈太郎
夢路いとし喜味こいし
長谷川待子
遠藤辰雄
伊藤孝雄
浜村純