映画感想「仁義なき戦い 広島死闘篇」 | 大TOKYOしみじみ散歩日記

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お独り様となった50路男の、ぶらぶらノンビリンの東京物語

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そして大切な母ちゃんとの想い出も時おり混ぜ合わせて

書き留めてゆきたいなと、思います

『仁義なき戦い  広島死闘篇』(1973)


昭和25年、広島市
復員兵の山中正治は、村岡組組長の姪・靖子の働く食堂で事件を起こし、居合わせた大友連合の跡取り・勝利と取り巻きの愚連隊にリンチを受けてしまいますが
勝利の親父が取りなしてくれたお陰で
結果、村岡組の末弟に加えて貰えることになります

かつては友好関係にあった村岡と大友ですが、村岡の戦後の躍進にテキ屋家業の大友連合はついて行けず
その苛立ちは、敗戦で燻る気持ちを吐き出せずにいた勝利の過激な行動に拍車をかけているのでした

勝利は村岡の兄弟分、時森をたらし込み
跡目を継いで博徒として村岡組と対抗し始めます
しかし、その性急な行動は老獪な村岡側に防がれてしまい
裏切り者の誹りを受けた時森を逃さなくてはならなくなります

呉に小さな組を開いた広能昌三のもとにかつての親分、山守から頼み事が
広島から預かったお客さんをしばらく預かってくれというのです
しかし広能は気乗りがしません
広島の騒ぎが呉にまで広がるのはよくない
山守のエエ格好しいが血の雨を降らしてしまうかもしれない

そんなある日
広能を訪ねてきた男が…
時森の行方を追って、刺客となった山中が
かつて刑務所で可愛がってもらった挨拶に訪れたのです

広能にある思惑が芽生えます
国に死ねと言われて死ねず、居場所と死場所を同時に探すように彷徨する青年・山中正治の苛烈な生き方
同じ道を辿りながら、親と寝床が待っていた大友勝利の上昇志向とはまるで違うネガティブな暴力は
凄惨で痛々しく、まるで自らに弾丸を浴びせているようでもありました

愛される価値を自らかなぐり捨てて倒れてゆく青春映画としてもよく出来ていて
制作時に原作が無く、シナリオの笠原和夫が自ら取材した人物を題材にほぼオリジナルの作品に仕上げた事が、成功の大きな要因となっています

菅原文太の演じる広能は本作では狂言回し的な役割で
北大路欣也、梶芽衣子の悲恋がしっかりと見せ場になっている辺りに、実録モノとは一線を画した
かつての東映任侠モノの空気も漂って、面白いのです

そして、狂犬のようなヤクザ
勝利を演じた
千葉真一の弾けっぷり
また、そんな彼にリンチを受け銃弾の的となって死んでゆくチンピラを演じた川谷拓三など

以降の作品に影響を与える芝居、所作、台詞などが100分によくもまあ詰め込まれたものよと
感心してしまいます

国に義理の親に裏切られる哀れな男

そんな彼を思い出してやるしか出来ないもどかしさ

深作欣二監督の熱情が、ギラギラと輝いて
役者たちに反射したその素晴らしさを見つめてため息を漏らす

シリーズ屈指の一編
興味のある人は撮影裏話も中々どうして劇的ですから
ググるなりして調べてください



昭和48年・東映
原作〜飯干晃一
脚本〜笠原和夫
音楽〜津島利章
監督〜深作欣二
出演
北大路欣也
梶芽衣子
千葉真一
成田三樹夫/名和宏
遠藤辰雄/小松方正
野口貴史/前田吟
志賀勝/福本清三
木村俊恵/山城新伍
八名信夫/片桐竜次
汐路章/川谷拓三
室田日出男/小池朝雄
加藤嘉/金子信雄
(2021.1.25より転載)