映画感想「その男ゾルバ」 | 大TOKYOしみじみ散歩日記

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お独り様となった50路男の、ぶらぶらノンビリンの東京物語

映画・マンガ・小説・芝居・テレビに動物
そして大切な母ちゃんとの想い出も時おり混ぜ合わせて

書き留めてゆきたいなと、思います

『その男ゾルバ』(1964)


船着場でクレタ島へ向かう便を待っていたバジルに、男は笑顔で話しかけてきました
(旦那さんどうだい、俺を雇わないかね?)
彼の名はゾルバ。自らを売り込みながら(でも疫病神なんでさ)と笑い始める不思議な男
作家を自認しているバジルには彼がとても魅力的に見えたのでしょう

意気投合した2人は主従関係ながら、どこか親子にも感じられる温かさと信頼を互いに感じながら
クレタ島での日々を過ごします

それはイギリスの町育ちのバジルにとって
一度に人生が巡り来ってしまうかという程の、喜びと悲しみの洪水のようで
汗も涙も笑いも怒りも、人生には不可欠なものなんだと
神々の生まれ棲んだギリシアの島で彼の心は成長してゆくのでした
ギリシアの魂、クレタの情熱が私たちの常識を粉々にしても
その男、ゾルバは挫けずに立ち上がります
そこに父を師を見るも良し
神の使わしたもうた天使と思うも楽しいでしょう

あまりの哀しさに目を背けたくなった初見でした
今回、数十年ぶりに改めて観て感じたのはイギリス青年の未だ無垢故の不様さ
映画は男になれる機会を最後に与えていたのだと感じて、女性たちの身に起きる哀しみに改めて首を垂れるしかありません
不撓、不屈
強さも優しさも同じ心が生み出すのであれば
切っ掛けが大切

バジルは悲しいかな2人の女の死を以てそれを得る
なんという厳しさでしょう

そして彼を導くゾルバこと
アンソニー・クイン
映画の神様が与えたもうた圧巻のパフォーマンスに
感動します