映画感想「コックと泥棒、その妻と愛人」 | 大TOKYOしみじみ散歩日記

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お独り様となった50路男の、ぶらぶらノンビリンの東京物語

映画・マンガ・小説・芝居・テレビに動物
そして大切な母ちゃんとの想い出も時おり混ぜ合わせて

書き留めてゆきたいなと、思います


『コックと泥棒、その妻と愛人』


今宵もアルバートは妻のジョジーナと手下たちを伴い、自身がオーナーを務めるフランス料理店
ル・オランデに来ていました

アルバートは名うての泥棒で、この店も儲けようという気持ちよりは自分の威張れる場所で旨い飯を食いたいという欲望の象徴なのでした

恐怖心すらおぼえる傍若無人な振る舞いは、手下も妻も

店の料理長リチャードをも従わせているように見えましたが

ジョジーナはある日、独りで来店していた本屋で学者のマイケルと目が合い
瞬く間に恋に落ち、愛し合ってしまいました

やがて店へ来る度、互いを賞味するかのように愛し合う2人を

リチャードは美しい食事風景を愛でるように見つめ、隠してあげるのでした

しかしその日は……
2人の逢瀬が崩れ去る日は来てしまいます

初見は先年閉館した渋谷のシネマライズで初公開時に。2度目はレンタルが始まった直後に
いずれも見たがったのは母ちゃんでした
3回目の鑑賞は独りになりましたが、20代で見た時と違い

怖さよりも美しさ、気高さが印象に残りました


愛されても憎まれても、蔑まされても可愛がられても
それは与えられた人の"味わい"となり、熟成されてゆきます
アルバートや手下たちは熟し過ぎたり傷んだりしてゆきますが、ジョジーナはマイケルと出会うことで歓喜という反応を呼び、匂いたつ成長を果たしてゆくのでした

ヘレン・ミレンが凄絶に美しさをまき散らします

単なる復讐劇ではありません

一人ひとりの人間が持つ、個々の素材が如何に素晴らしいか
如何に高貴か、そして如何に傷みやすく腐り易いか
映画は絵巻物語のように見せてくれました

これは強烈な人間讃歌です

監督をしたピーター・グリーナウェイの個性がはじける
素晴らしいドラマでした