その内あきくんは戻ってきたけど、

泣いている私に向かって、
哀しい顔で
「なんで泣いてるのショボーン
と訊きました。








お腹痛いって言った時そばにいなかったのに?ガーン

てか
お腹痛いときそばにいなかったから泣いてるとは
思わないのかな?






「もう大丈夫。
話したくないから訊かないでほしい」



「俺はあゆみちゃんが、
好きな人が隣で泣いてるのに何もできないのが
すごく悔しいんだよショボーン


だから話してほしいショボーン


俺は
自分が泣きたいときに
好きな人に聞いてもらえたら
楽になるから。

それに、
あゆみちゃんのこともっと分かりたいショボーン









私はこういう言い方をされるのが大嫌いです。











話したところで
彼が私にできることなんてないし、

何かしてほしいとも思っていない。


自分は楽になるかもしれないけど

それは人によるものだし、
内容にもよるはずで、




私は今言いたくないと言ってるのに、


なぜ偽善者ぶって
自分の「知りたい」欲求を優先するんだろう。




だから
「言葉にしたくないから話したくない。
訊かないでほしい」
と何度か言いました。



何度目かでようやく、



「分かった。
あゆみちゃんが言いたくないなら
言わなくていいよ」


と言ってくれたあきくん。











それなのに。














帰宅後。








ご飯を食べて
私の気持ちも落ち着いて
いつも通りの感じに戻った時に、

あきくんが言いました。




「さっき、空港で、
パートナーのこと思い出してたんでしょ」








「え?」








さっき、
「あゆみちゃんが話したくないなら

話さなくていい」って言ったのに、

なんでここで蒸し返してくる???凝視








まさかここにきて
そんなことを訊かれるなんて思ってませんでした。










彼は、本当は
「話さなくていい」なんて
思っていなかったのです。







私が泣いていたのは
私がパートナーのことを
思い出していたからだと思い込んで、

落ち込んだり嫉妬したり苛立ったり、

彼も彼で複雑な気持ちになって、

どうしても確認したかったのでしょう。





でも
私はあきくんのこの一面に
うんざりしすぎてキレてしまいました。



こんなに潔さがない男、小っさ。
小っさすぎる。




自分でも怖いくらい、
低い声で、淡々と、あきくんに伝えました。






「なんでそんなこと訊くの?
さっき「話さなくていい」って言ってくれたよね。


話さなくていいって言うんだったら
二度と訊かないでよ。

訊くんだったら
話さなくていいなんて言わないでよ。

そういうの大嫌い。」









あきくんは落ち込んで下を向いてしまいました。
















それからしばらくして、







洟をすする音が
聞こえてきました。











私はぎょっとしてあきくんの方を見ましたポーン



「ごめん・・・。



俺自分に自信がなくて、

あゆみちゃんがパートナーのこと
すごく好きだったの知ってるから、

勝手に嫉妬して不安になってた。

あゆみちゃんの気持ちも考えないで、ごめんショボーン









私は
あきくんが泣くところなんて初めて見ました。



何回も言うけど、
45歳のでっかいおっさんです。




この後私も
泣いていた理由を全部正直に伝えました。



「友基くんのことを思い出して泣いていた」
というのは正しいけど、


あきくんが想像していたような理由とは
違うものだったと思います。





でもあきくんは、私の話を聞いて、

「俺だって別に
お酒を買いたくて見に行ったわけじゃない」
等と言い出したのです。




私はそれを聞いて
どっと疲れてしまいましたオエー








あー、伝わってない、

と思いました。










最終的には

「俺なんかでいいのかなショボーン

と言われました。





私はこの言い方も嫌いです。

好きな人が、

「俺なんか」
自分を卑下する言い方をするのを聞くのは
不快です。


深読みかもしれませんが、
「あなたいいのよ」と答えてほしくて
あえてこんな言い方をしているとさえ感じてしまい、
更に不快です。




今の私はまだ、
「あなたがいいのよ」とは思えないので、

「私はこの旅行で
あきくんのことをもっと好きになりました。
これからももっと好きになっていきたいです。」
と答えました。





こうして私たちは仲直りしました。