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たまたま日本農業新聞の元日号に載せた記事が、

能登の里山里海の話でした。
 

 

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 石川県の「能登の里山里海」は、2011年、国内初の世界農業遺産として新潟・佐渡と並んでジアスに認定されました。

 日本海に向かって1004枚の田んぼが連なる「白米千枚田」は冬の間、イルミネーションで彩られます。能登の農文化を表すシンボルで、2022年度には451万人が訪れました。

 

地域全体では、エコ栽培の「能登米」や、特別栽培「能登棚田米」などの生産に取り組み、

環境保全型農業と売れる米づくりの両立を進めています。

 

能登地域の9市町には、田の神様を迎える農耕儀礼「あえのこと」をはじめ、

農林水産業にまつわる伝統や文化が多く、その全てがジアスを構成する重要な要素です。

 

新たなツーリズムも盛んで、国際芸術祭、食イベント、ワーケーションなど、里山をまるごと資源として、

交流人口の拡大を図ります。

 

 能登のジアスを語る上で欠かせないのは、土地の文化を知ってもらう農家民宿です。

取り組みを始めて27年。

農家民宿群「春蘭の里」には、国内外から年間約1万2000人が訪れます。

豊富な体験メニューや輪島塗の器でもてなす郷土料理が特徴で、

今では珠洲市、輪島市、穴水町、能登町で、60軒以上が農家民宿を運営しています。

 

 ジアスの認定以降は、外国人客や修学旅行生が増えました。

理事長を務める多田真由美さん(24)は

「以前は人口流出を諦めるしかなかったけれど、外との交流が増え、地域が変わって来ている」

と感じています。

 さらに民宿経営の後継者対策として、お試し移住や農家民宿の経営をサポートする事業も始めました。

既に、10人の移住者が農家民宿を営んでいます。

 日本初の認定から13年、農業を軸に生き物も人も暮らしやすい地域を創造し続けています。

 

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サステイナビリティ学の第一人者で、国連食糧農業機関(FAO)が認定する「世界農業遺産(ジアス)」を、先進国で初となる日本にもたらした武内和彦先生に、ジアスの意義や持続可能な農業について聞きました。

 

小谷

 国内ではみどりの食料システム戦略が始動するなど、環境と農業の両立が重要になっています。

持続可能な農業とジアスの関係は?

 

武内

 「持続可能性」という言葉は農林水産業から生まれた。収穫はするが、資源を枯渇させず次の世代につなげる。その考え方が、2012年のリオ宣言で掲げた「持続可能な開発目標(SDGs)」といった、昨今の環境と開発を考える際の下敷きになっている。ジアスはその食糧・農業分野での展開として提唱された経緯がある。

 

小谷

 農業人口が減る中で、大規模化が主流となっていますが、ジアスの認定地域は、大規模化とは真逆の伝統的な農業システムが受け継がれています。

 

武内

 農薬・化学肥料の多投入による大規模化・大量生産は、砂漠化などの土地の劣化を引き起こし、地球規模で問題視されている。

 一方、ジアスの価値観は目先の効率性や経済性ではなく、家族農業中心の伝統的なシステムが、土地を守り農業を持続的なものとしていることを重視している。

 ただ、伝統を守ることだけがジアスの主旨ではない。「遺産」といえど、伝統のみに固執する必要はなく、スマート農業のような先進技術も活用しながら、土地を守り続けることが重要だ。

 圃場整備による大規模化ではなく、コミュニティの維持と拡大が地域の維持に有効だ。「ニューコモンズ」と呼ばれる、開かれた社会が農村を支える考え方だ。熊本・阿蘇の放牧が良い例で、畜産農家に加え、多数のボランティアが広大な野焼きをサポートしている。

 

小谷 

 農業はどうしても経済性が優先され、環境にまで意識が向きにくいです。これからの農業・農村の目指すべき方向は?

 

武内

「環境を大事にした農業は儲からない」という構図は変えなくてはいけない。新潟・佐渡の認証米のように、朱鷺が暮らす環境を守ることで、経済的にメリットが生まれる仕組みが必要だ。環境に配慮したブランド化は、輸出にも有利に働く。

 環境を守ることで、グリーンツーリズムにつながり、そこから、地域の応援者が生まれるきっかけにもなる。その場合は、従来のマスツーリズムではなく、少人数が長期滞在してくれるオーダーメイドのツーリズムが望ましい。

 

小谷

 昨年は兵庫・美方(但馬牛のシステム)や、埼玉・武蔵野(落ち葉堆肥農法)で新たにジアスの認定がありました。認定がもたらす効果は?

 

武内

 日本では、細やかな自然のひだのもとに、農林水産業が成り立ってる。これは世界的に見ても珍しい。私は、生産者の皆さんには誇りを持ってもらいたいと思っている。ジアスの認定がその地で農業を営む励みになれば、喜ばしい。

 認定によって、地域を守る意識や誇りが生まれ、コミュニティが広がり専業農家も兼業農家も、多様な参加者もみんなが地域を守る一員であり続けてほしい。

(敬称略)

 

武内和彦

【プロフィル】

たけうち・かずひこ

公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)理事長。東京大学未来ビジョン研究センター特任教授。

専門は、緑地環境学、地域生態学、サステイナビリティ学。農水省・世界農業遺産等専門家会議委員長

 

 

 

 

ベジアナがいま思うこと

 

里山との付き合い方、自然なる存在は、恵みにもなれば、災いにもなる。というのが前提にあります。

このことをいちばん熟知し、実践しているのは、現地の人達です。

そういうライフスタイル、生き方をいまこそ学び直す時だと思っています。

本当の強さとは。

レジリエンスという言葉が大事だと思います。

立ち直る力、復興する力。

日本という国は、地震をはじめとする災害とは常に背中合わせ。

減災という言葉が重要になりました。

防ぐ、というよりも起こることを前提として、被害を減らす、概念です。

 

 

いまも5万世帯の人達が避難所で暮らす、断水が続き、

6千世帯で停電が解消されない中で、

いまは目前の生活を立て直すことが第一ですが、

わたしたちのように東京にいて、取材したり、発信する立場にいる者は、

謙虚に学ばないといけない。

今のように、経済ばかりでものごとの優先順位を決められる世の中に、

異を唱えないといけないと。