松戸といえば、あじさいねぎ!
千葉県松戸市には「あじさいねぎ」という江戸時代から伝わる伝統野菜の葉ネギがあります。
関東では珍しい青ネギで、味と彩りの「味彩」と、産地の近くにあじさい寺(本土寺)があることからこの名が付いたそうです。
生産者の一人でPRや販路開拓に力を入れている成嶋農園の成嶋伸隆さんを訪ねました。
活動のきっかけは2011年、原発事故による風評被害で市場価格が大暴落したのが始まりです。
東京の市場がだめなら地元消費だと売り先を探し歩いて気づいたのは、地元での知名度の低さでした。
それもそのはず、東京の市場へ向けた出荷がほとんどで、今まで地元ではほぼ流通していなかったのです。
なんとか知ってもらおうと、イメージキャラや歌を作ったり、考え付く限りのことはすべて実践したそうです。
その結果、成嶋さんがたどり着いたあじさいねぎのPR戦略は、大きく3つ。
1つは、地元の飲食店。馴染みの店から徐々に口コミで広がり、今では約10店舗にあじさいねぎのメニューがあります。また、地元での取り引きのメリットは、値段が安定しているため、売り上げ予測がつきやすいことです。
2つ目は、大学とのコラボです。川村学園女子大学とは「あじさいねぎのカレーそぼろ」を商品開発し、そのほかレシピ開発など、メディアに取り上げられる機会も増えました。
3つ目は、学校給食です。今では市内40校で提供され、
子どもたちの「あじさいねぎ」の認知度は確実にあがっていることを実感しています。
食育や地域学習で、畑の体験を頼まれた際は、収獲だけでなく、葉を取るなどの調製作業をしてもらうそう。通常、ネギは外葉をむいて、内側3本の葉にします。
外葉から枯れて色が変わるため、取り除いておくのですが、学校給食に出す場合は、収穫後、すぐに調理されるため、葉を4本残すそうです。
それだけ可食部分が増え、廃棄が減ると言うわけです。
こういう話をすると、授業でSDGsやフードロスを学んでいる小中学生は、地産地消の農産物を食べることがロス削減やSDGsに貢献することをよく理解するそうです。
子どもの時のこうした体験は、きっと大人になっても忘れないでしょう。
給食や教育を通じて、地域の農業を伝えることは、単なる消費拡大に止まらない、将来の消費者育成であり、よき理解者、ひいては担い手の育成につながります。
急速な高齢化により、まちの衰退の課題を抱えている松戸市ですが、こうしたご当地野菜から始める地域学習は、農業やまちの活性化にも、教育にも、地元への誇りや愛着を育むきっかけになりそうです。