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東京ミッドタウンで開催されている写真展

今森光彦の地球昆虫紀行トークショーに行ってきました。

フジフイルム スクエア、ショールームが会場なので、無料!

それほど広くはないが、夏休みにちらっと遊びに行くにはちょうどよい。

 

今森さんといえば、里山の写真家だとわたしは思っていたのだが、

写真としては昆虫の方がむしろ有名らしい。

写真集『昆虫4億年の旅』で、土門拳賞も受賞されている。

 

今森光彦さんの名前を知ったのは、かれこれ30年近く前、

NHKで里山の四季を追うドキュメンタリーのシリーズがあった。

思えばあの番組で里山の美しさを知ったので、自分自身の里山取材のきっかけと言えるかもしれない。
 

里山の撮影と同時に、ご自身も琵琶湖のそばで里山暮らしをされているが、

なんと、とうとう3ヘクタールの農地を取得して「環境農家」になり、

里山再生に乗り出したという話を聞いて、驚き、感動しました。

 

まずは、おもしろい昆虫の写真の話しから~~~♪

 

 

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ハラビロカマキリ。どう見ても目がテンになってこっちを見ているように見えるが、

これは眼底なのだそう。

 

テーマは、地球上の小さな生命・昆虫の不思議な世界、身近な里山が生き物の生息環境になっていること。

昆虫博士ファーブルの生誕200年の記念でもある。

 

写真撮影OKなのもこの写真展のよいところ!!


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今森さんの 昆虫写真といえば、最も有名なのがこちら!

 

 

アフリカタマオシコガネのペア。(撮影:ケニア)

せっせと運んでいるのがオスで、上に乗っているのがメスです。

糞ボールは別名ウェディングボールよ呼ばれるそう。

 

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糞を転がすコガネムシ (スカラベ)

スカラベとは、古代エジプト語で、フンコロガシのこと。

 

スカラベは動物の糞を食べて生きている。

糞ボールを逆さまの状態で後ろ足で蹴るようにして、
1分間に5メートルの速さで、何十メートルも移動させる。

 

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日暮れにせっせと運ぶオスのスカラベ。

何やら日が暮れるまでせっせと働くスカラベ父ちゃん。悲哀さえ感じさせますね…。

昆虫の人間性というか、昆虫の心情というか、そういう社会性を感じさせるところが

今森さんの写真の魅力かもね。

おもしろさと哀しみ。

遠くにチャルメラが聞こえてきそう…


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スカラベは、古代エジプトでは神話化された生き物として登場、

ツタンカーメンの墓の壁面には、王の首飾りの模様として描かれているそう!

 

ファーブル以降、 スカラベの生活史について世界的にほとんど研究がなされていなかった。

 

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スカラベは風変わりな結婚をする。
オスは小さな糞ボールをメスにプレゼントし、気に入ってもらえたら、めでたく結婚というわけだ。
 
新婚カップルは、糞玉(ウェディングボール) に糞の肉付けをしてゆき、 
ソフトボールほどの大きさにする。 
この900グラムほどの重さもある糞ボールに、オスはメスを乗せて、渾身の力を込めて運ぶ。

その後、地下に埋められたウェディングボールに1個の卵が産み付けられ、
誕生した幼虫は、ボールの中の糞を食べて育つ。
母親のスカラベは、何十日もの間、暗い地下で世話をする。

 

今森さんは、世界で最も大きなフンコロガシは、アフリカゾウの糞を転がすコガネムシだということを知り、

ケニアのツアボ国立公園へ、2年かけて撮影許可を取り、1983年~1991年までかけて撮影。

 

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広い会場ではないけれど、こうした解説文を読んでいくと1時間ぐらいすぐ過ぎます。
 
 
もう一方のコーナーでは、今森さんの活動、里山について紹介。
 
 
今森光彦
近年、私たちにとって身近な自然である里山が悲鳴を上げています。
里山のほとんどは、農業が営まれる場所なのですが、後継者不足で放置されるところが多くなっているのです。
撮影している時に悲惨な里山の光景を見て、
荒れた雑木林を管理したり、アトリエの敷地内に小さな里山を再現しました。 
最近は、 自ら農業者になって3ヘクタールの土地を取得し、農薬を使わず生き物を最優先に考える、 
環境農家を始めました。 
ここでは、日本の昆虫や里山、 私が取り組んでいる色々な環境活動を紹介いたします。
 
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今森さんの活動の主な舞台「光の田園」

滋賀県大津市 仰木の棚田。 
比叡山と琵琶湖の間を東西に結ぶ一本の谷は、日照時間が長く、朝日も夕日も差し込む。
私はそこを“光の田園”と名付けました。
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農家としての一歩を、 この棚田から踏み出す
 
仰木の棚田は、午後も光が美しく、歩くと爽快だ。
なのに、各地の里山同様に荒れつつある。
自分も農家になることによって人との関わりを一歩進展させたいと思う。 
私としては、風景が今まで以上に輝いて見えてくることを期待している。 

農家のことを色々と教えてくれる私の先生、西村さん。
 

収穫よりも自然環境を優先する仕事に関わる人達を“環境農家” と名付けました。
手に入れた面積3ヘクタールを超える荒れた棚田は、
45年以上放置され、すべて竹林になっていました。
竹の撤去を始めたのは2014年。
2018年にようやく農地としての姿を取り戻し、ここを“オーレリアンの丘”と名付けました。
 
生き物だけでなく、 かぐわしい土の匂いの再生も目指します。
“環境農家” は、 未来型の農業として試行錯誤しながら一歩ずつ前進してゆきたい。
「里山の風景は、過去の風景ではなく、未来の風景」。
 
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里山って なに?
里山とは、人と自然が共存する日本古来の農業環境のこと。
人が自然を、自然が人を巧みに利用し合いながら、絶妙なバランスで調和する 生物多様性が豊かな空間です。 
今森光彦さんは1970年代より里山環境に入り、生命の営みを見つめ続けています。

 

今森さんのことば
 
熱帯雨林、大平原、砂漠など、地球の辺境の地を訪れれば訪れるほど、
日本の自然がいかに豊かなのかを知ることができる。
街の郊外に広がるのどかな田畑や農家の庭にさえも、自然の匂いが染み付いている。 
そんな風土に根差した小さな自然は、地球を計る最小単位の物差しのような気がする。

 

 

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アフリカタマオシ͡コガネとベジアナ。

 

事前に申し込んおいたこの日限りのトークショーでは、

撮影秘話や、里山暮らしのお話もたっぷり1時間伺いました。

おもしろかったのは、このスカラベのメスが「協調性を発揮した」という話。

基本、オスが、せっせと糞ボールを運び、メスは後の子育てに備えて上に乗っかっているのだが、

ある時、オスが炎天下で疲れ果てたのか、脚をひきつらせて動けなくなったそう。

その時、なんとメスは下へ降りて一緒に押したのだと言う。

普通、昆虫には、決められた役割のプログラムがあり、そこから逸脱すると、

不適合なオスだといことで、オスも糞ボールも捨て去って、次を探すそうなのだが、

この時は、「手伝った」というのでした。そういう昆虫の社会性を知ると、深みにはまる、

研究している佐藤さんだったかな、学者がいると、今森さんは楽しそうに話してくれました。

 

他にも、世界一大きなラフレシアの撮影秘話。そこに入ってくるハエが頭の上におしべを付けて、媒介となってくれる話。

あと、ランの花の蜜のある深さに合わせて、ぐるぐる巻いていたストロー状の口ばしを20センチも伸ばす

ススメガなど、書ききれないほどあった。

こっちは、植物との共生である。

スカラベは、アフリカゾウという動物との共生である。

みんなみんな、共生である。相手に合わせて進化しているのだ。

 

そして、

世界中のとんでもない生き物や自然や文化を見て来た今森さんが、

いま、3ヘクタールの農地を取得して、里山再生にあたろうとしている。

自分を「環境農家」と名乗っている。

コメを作っているようで、作りたいのは風景であり、むしろコメは副産物ということである。

 

わたし自身、里山に魅せられたのは、能登の棚田や、白山麓のとち餅の食文化といった先祖代々の伝統から、

農家が風景を作り、文化を作る大きな仕事にあった。

 

農業を取材していて感じる限界は、農家はどうしても経営を一番にせざるを得ない。

 

ならば、「環境が先だ」と明言する今森さんのような環境農家を、増やすことが重要だと思った。

 

ただ、農業参入が難しいのは、農地法により、農地は農家に権限がある。

今森さんのように、地域に信頼もあり、知人もネットワークも経済の余裕もある人ならば、

地域の信用が得られ、農地を借りたり取得することもできるだろうが、一般にはまれである。

 

いま日本国内に400万haの農地があり、そのうち40万ha、10%は耕作放棄地である。

国では、この先、25%を有機農業にしようという政策がある。100万ヘクタールだ。

今森さんが、3ヘクタールだから、あと33万人同じような「環境農家」が必要になる。

いま、基幹的農業従事者は、130万人だが、既存の農家が「環境農家」になるよりも、

今森さんのような多業種から、意識高い系の、風景を守りたいような、環境に興味のある人を迎え入れることが求められる。

なぜなら、今いる農家の7割は高齢で、新しい環境保全型の農法に切り換えろと言われても、やはり対応できないだろう。

 

 

あ、話がどんどん終わらなくなってきたので今日はこの辺でーーー。

 

 

暑かったので、帰りは友達のKちゃんとスパークリングタイムしましたー。

 

 

 

今森光彦の地球昆虫紀行の写真展は、東京ミッドタウンにて

8月24日(木)まで開催

 

だれかに教えたいこと

 

農ライフ研究所 ベジアナあゆみ