きのう6/12農水省の食料農業農村政策審議会(家畜衛生部会)で、
かねてから話題にしてきた
「家畜伝染病予防法」が定める「飼養衛生管理基準」の改正について持ち回り審議が行われ、最終案がまとりました。
https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/eisei/index.html
きょう6/13の日本農業新聞では一面に
「放牧中止を削除」とありました。
https://www.agrinews.co.jp/p51068.html
あちこちで声を上げてきた成果だと喜んでよいのでしょうか!?
農水省の発表資料を読んでいきたいと思います。
まずは、議事概要から
https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/eisei/bukai_44/summary.html
飼養衛生管理基準の改正内容について主な意見と対応
○ 牛等及び豚等に対する放牧制限の準備について
・ 「牛と豚については、従前から、家畜伝染病予防法第 34 条において、
家畜伝染病のまん延防止のために都道府県知事が放牧を制限できる規定があり、
2000 年に北海道において口蹄疫が発生した際、
同 34 条を適用し、牛農家に対し、 パドックを用意し飼養場所を限定する対応をとり、
放牧制限がまん延防止に有効であることが確認された。
このため、 「いざというときのために家畜の避難用設備は必要」との意見があった。
家畜伝染病予防法第 34 条を踏まえた対応として、
出荷や移動のための準備
または
家畜の避難用設備の準備の
いずれかが必要であることが確認された。
○ 家畜伝染病の発生リスクの高まりに対する準備について
野生動物で家畜伝染病の感染が確認された地域について、野生動物の感染状況、農場やその周辺の環境要因等を踏まえて、
大臣指定地域として農林水産省告示で示すことで問題ないことが確認された。
○ 畜舎外での病原体による汚染防止(舎外飼養中止)について
・ 「放牧や舎外飼養は、野生動物との接触の機会が増加する家畜伝染病発生リスクの高い飼養形態であることは外国でも認識されており、野生動物対策 が十分に講じられていない場合の舎外飼養中止は妥当」
「ASF の侵入リスクが高まっている中、ひとたび ASF のよう な家畜伝染病が農場で発生してしまうと、近隣農場や地域の養豚業に大きな影響を及ぼすことから、対策が十分に講 じられない場合には、放牧や舎外飼養を中止することもや むを得ない」との意見があった。
・ 一方で、「牛等の偶蹄類について、想定される家畜伝染病 が口蹄疫であり、本病発生時には家畜伝染病予防法 34 条に より放牧を制限することから、そのための準備をしておく必要はあるものの、それ以上の規定の追加は必要ないのではないか」との意見があった。
牛等の飼養衛生管理基準について、大臣指定地域における舎外飼養の中止の規定の追加は必要ないことが確認された。
続いて、
このブログでも呼びかけてきたパブリックコメントはこちらです (一部抜粋)
https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/eisei/bukai_44/attach/pdf/index-5.pdf
1. 大臣指定地域における舎外飼養の中止に係る意見
(1) 放牧養豚関係者や一般消費者等から、
「舎外飼養の中止」の追加について
放牧養豚農家の事業継続が困難となる。今までの投資分も含めて補償してほしい。
健康的な放牧豚を好む消費者から選択肢を奪わないでほしい。
柵の設置、豚熱ワクチン接種等を実施している中で、さらに放牧禁止とする科学的根拠を示すべき。
アニマルウェルフェアの観点から、国際社会の対応に逆行している。
オリパラの調達コード要件や農水省の放牧推進政策との整合性をとるべき。 等
(2)さらに、放牧管理している他畜種(牛、山羊)の関係者からも、
「舎外飼養の中止」について反対する意見が寄せられた。
3. 基準の各内容に対する意見
マニュアルの作成は、小規模農家では対応が困難である。
放牧地では未消毒の沢水や雨水を飲ませるため、飲用水に係る規定は削除してほしい。
以上のパブリックコメントを受けて、
書き換えられた最終案はこちら
(前の案)項目 26
(最終案)項目 26
元の案と最終案(26)を比べると、
多くの人が削除を求めていた
「大臣指定地域においては放牧場、パドックなどにおける舎外飼養を中止すること」
が、削除されました。
一安心したくなりますが、
ただし、合わせて読まないといけないのは、9の項目です。
(最終案) 9 放牧制限の準備
9 放牧制限の準備 【令和3年10月】という項目です。(牛・ヤギなど)
(前の案)では
放牧の停止又は制限があった場合に備え、家畜を飼養できる畜舎の確保又は出荷若しくは移動のための準備措置を講ずること。
(最終案)では以下に変更になりました。
↓↓↓
法第三十四条の規定に基づく放牧の停止又は制限があった場合に備え、家畜を収容できる避難用設備の確保又は出荷若しくは移動のための準備措置を講ずること。
家畜を飼養できる畜舎の確保
が、最終案で
↓↓↓
家畜を収容できる避難用設備の確保
放牧農家が、いざというときのために畜舎を準備しておく義務はなくなったのですから、畜舎を持っていない放牧農家にとっては、よかったですね。
畜舎という建築物のような大がかりなものなのか、簡易な畜舎でよいと言われても、何をもって簡易なのかわからない以上、準備する側は不安でしたからね。
ところで、書き加えられた 「法第三十四条の規定に基づく」 とは、
まさに「放牧などの制限」についてのもとからあった法律です。
第34条は前から定められていたもの。
都道府県知事は、家畜伝染病のまん延を防止するため必要があるときは、規則を定め
一定種類の家畜の放牧、種付、と畜場以外の場所におけると殺、又はふ卵を停止し、又は制限することができる。
「放牧(の制限)」について述べる項目は、
9項目の一か所に記してあればよいわけなので、
26項目にも「舎外飼養を中止すること」と書くことは、そもそも重複であり、
インパクトがあり過ぎたので(よって多くの人や団体が反対意見を表明した)、
要はもとの「案」の書き方に問題があったので、書き方を整理したと見た方がよさそうです。
(法律に基づく基準「案」といっても、日本語ですので、伝わるように、誤解を受けないように書くことが大事ですね)
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また、豚、いのししの飼養衛生管理基準の最終案でも、
「畜舎の確保」が変更になりました。
「大臣指定地域においては、舎外飼養を継続する場合には、
一定の猶予期間の間に給餌場所における防鳥ネットの設置及び
家畜を収容できる避難用の設備の確保をすること」が決まりました。
畜舎というハード設備を一律に義務付ける印象から、
防鳥ネットや避難用の設備と、やわらかい書き方になりました。
残念なのは、
11 衛生管理区域内での愛玩動物の飼育禁止について
パブリックコメントでも、
・ネズミ対策として猫を飼育しており、禁止しないでほしい。
野生動物の侵入防止のために犬を飼育しており、禁止しないでほしい。
飼育継続できなくなり、愛玩動物を処分することになる。
など、
・ 「犬や猫が野生動物の侵入防止に役立つ場合もある」との意見がありましたが、
結果的には、感染症の感染源となり得るとして、
最終案では、衛生管理区域内における愛玩動物の
飼育を禁止する必要がある、となりました。
これはとても残念な結果でした。
というわけで、解説になるのかどうかわかりませんが、以上です。
改めて最終案と、昨日までの動きを振り返って
一元的によかったともだめだったとも言い切ることはできませんが、
ともかく、今回、生産者や関係者が声をあげたのは大きな意味があったのではないでしょうか。
法律は霞が関で勝手につくられるのではなく、
実務者である=生産者や関係する人、もちろん食べる側の消費者も、
それぞれの立場から声をあげて、それを取り入れて生まれるものですよね。
今後もウォッチし続けていきたいと思います。
人任せじゃない。
自分たちが頭をひねって考えないと。
ケネディさんの言葉を思い出しますね。
Ask not what your country can do for you; ask what you can do for your country.
John F. Kennedy (ジョン・F・ケネディ)
国があなたのために何をしてくれるのか、ではなく、
あなたが国のために何ができるのかを考えよう。
今回のことだけじゃなくね。
ひとまずきょうはこのへんで~~~
ベジアナ 日本語だいじ!あゆみ