リオオリンピック、メダルラッシュに沸く日本、次は東京!
そんな最中、東京メトロ(地下鉄)銀座線のホームで起きた視覚障がいの男性の転落事故。
私たちにできることはなかったか。
日本人らしさとは何か。
誰かに問いかけたくなりました。
http://ryukyushimpo.jp/news/entry-340854.html

 

琉球新報「はいたいコラム」8月21日付

「心のバトンがあれば」

 

 島んちゅの皆さん、はいたい~! リオオリンピックを見ています。さまざまな競技で日本選手大活躍ですね。原稿を書いている今しがたも、陸上男子400メートルリレーで日本がなんと銀メダルに輝きました!

 1位は世界最速のウサイン・ボルト率いるジャマイカですから、これはもう快挙中の快挙です。しかも日本の山県、飯塚、桐生、ケンブリッジの4選手はいずれも個人では決勝に残れなかったのに、バトンをつなぐリレーで世界2位になるなんてすごいことですね。一致団結して和を尊ぶ日本らしい強さの勝利でした。
 陸上、体操、水泳のように一見個人プレーのような競技でも、リレーや団体戦があることで、チームの絆に評価の光が当たります。オリンピックもビジネスも、人生も、人と力を合わせるからこそ勝てることってあるんですね。
 一方、つい先日、東京の地下鉄銀座線のホームで、盲導犬を連れていた視覚障がい者の男性が転落して死亡するという痛ましい事故がありました。ホームにあった点字ブロックの途中には、柱が遮るように立っており、柱をよけて進まなくてはいけない状況でした。

そしてその駅には、転落防止のホームドアがありませんでした。
 政府は2020年度までに800駅にホームドアを設置する目標を掲げていますが、事故のあった銀座線に設置されているのはわずか一駅です。全線開通が1939(昭和14)年と最も古い銀座線は、古いゆえにホームが狭く危険と隣り合わせなのにもかかわらず、工事が容易ではないという問題を抱えています。

ちなみに開業が2003年と比較的新しい「ゆいレール」は15駅全てにホームドアが設置されています。

しかし考えれば、昔はどの駅にもホームドアはありませんでした。利用客同士、互いが注意し合って安全を保ってきたのです。

 人とぶつからずに歩く方が難しい大都会東京の混雑した地下鉄のホームで、盲導犬とつえだけを頼りに歩いていたその人は、どれほど心細く孤独だったことでしょう。もしも誰か一人でも声を掛ける人がいたならば。いやたとえ私がいたとしても何か言えただろうか。
 2020年に向けて、やるべきことは何か。自分への反省をこめて。
たった一言の声掛け、人と人の心のバトンを思わずにいられない出来事でした。(フリーアナウンサー・農業ジャーナリスト)
琉球新報(第1、3日曜掲載)

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 小谷あゆみ(こたに・あゆみ) 農業ジャーナリスト、フリーアナウンサー。兵庫県生まれ。介護・福祉、食、農業をテーマにした番組司会、講演などで活躍中。野菜を作る「ベジアナ」として、農ある暮らしの豊かさを提唱、全国の農村を回る。