6月24日(金) 駐日ノルウェー王国大使公邸で

「宮城県南三陸ウニ畜養プロジェクト調印記念イベント」がありました。

 

南麻布のノルウェー大使館です。

アーリン・リーメスタ駐日ノルウェー王国大使です。

国の代表である大使が登場するほどの調印式とは???
一体どんな協定が日本(南三陸)とノルウェーで結ばれたのでしょう~???

 

「南三陸ウニ畜養プロジェクト」とノルウェーとの関わり。

ノルウェーといえば~~、ノルウェーサーモンで知られる水産大国です!

南三陸と似たリアス式海岸の漁場をもつという共通点があります。

そのノルウェーの最新技術で南三陸の課題「磯焼け」が解消できるというのです。

 

「磯焼け」とは???

 

「磯やけ」とは。

かつて、南三陸は海藻が豊富で、そこをエサ場に天然のウニやアワビが育ちました。

地元の漁師がそれを捕ることで海の恵みと漁村の暮らしは共存してきました。

しかし震災の頃から

(大津波より前から徐々に藻場と漁のバランスは崩れていたようですが、震災の後、漁村から人々が激減したことは大きな要因です)
エサとなる海藻がなくなり → 爆発的にウニが増殖し → ますますウニが海藻を食べ尽くし → 海藻がなくなり → エサ不足で身の入っていないウニが増殖し → 

売り物にならないから漁師は捕らなくなり → 身のないウニはますます増殖 → 

というとんでもない悲しい循環で、藻場が荒れていく「磯焼け」が深刻になっています。

 

南三陸 JFみやぎ歌津支所青年部でウニを加工販売する高橋栄樹さんによると、

本来、1㎡の藻場にウニが400g(ウニ4個分)ぐらい点在するのが

良好な「ウニ密度」なのだそうです。

しかし、何倍にも密集し過ぎて~~~~


 

数だけ増えすぎて、1個あたりウニの身は3%しか入らない状態になっていました。

売り物にならないのだから漁師も捕りません。

捕らないからまたウニが増えます。

 

ウニの水揚げは震災前の半分以下になり、藻場の生態系でそれぞれが複雑に関係し合っているアワビや他の魚介類の身入りも悪くなってしまいました。


深刻な磯焼け被害。

爆発的に増殖したウニが海藻を食い荒らす悪循環・・・。

 

保たれてきた海(藻場)の生態系が崩れたのです・・・


人がほどよく漁を営むことで、藻場の生態系が保たれてきた漁村。

藻場があって、ウニがいて、人間の暮らしがのあって。

この3者があるからこそ、漁場のバランスが保たれていたのです。

 

こういうのを「里海」と呼びます。

(最近、瀬戸内海の牡蠣やアマモの関係でNHK番組になり、知っている人も多いかもしれません。)

「里山」が奥深い山と人里の間にある中山間の人の暮らしの場だとすれば、

「里海」は、遠洋漁業まではいかない、人の生活が影響する港に近い漁場のことです。

さて、この「磯焼け」問題、実はニュージーランドでも

(マリモのようなのがすべてウニです)

アラスカでも…

(水深の関係か、黄色に見えますが、すさまじいウニの密集わかりますか~。

右の写真はまさに海藻の根にまとわりついたウニです)

 

南カリフォルニアでも

実は、カリフォルニア州では、「磯焼け対策・藻場回復」の研究に取り組んでいますが、増えたウニをダイバーが叩いてつぶすという対処療法でしかなく、

根本的で持続可能な解決には至っていません。

 

それにしてもあんなにおいしいウニが食害の源になるなんて…

食害とはいえ、ウニを憎むことなんてできない…

だって大好きなだもん…

それにもったいないし…

ウニはウニじゃん…

 

というあなたの(わたしの)気持ち、

とってもよくわかります。

安心してください

ぜ~~~~んぶ、このプロ

ジェクトで解決致します!

 

えええーーーー@@

 

 

そこで、ノルウェーと宮城・南三陸が協力した「磯焼け対策・ウニ復活プロジェクト」の結果 、16週間(112日間)=4ヶ月弱でこんなにも実がびっしり詰まりましたーー^^

いきさつはこうです。

 

2012年、被災地の若手水産関係者にノルウェーの先進漁業を見てもらおうという宮城大学×ノルウェー大使館主催の復興支援企画があり、それに参加してノルウェーに行ったのが宮城県漁協歌津支所青年部の高橋栄樹さん。

 

一方、ノルウェー国立食品漁業養殖研究所(Nofima)は、魚肉や昆布を原料としたペレット状の餌でウニを育てる実験に成功していました。

なんといってもノルウェーサーモンの国!サーモンの飼料研究をはじめ、ウニの飼料についても15年の実績です。

しかし!

ヨーロッパでは「ウニ自体の需要が少なく」せっかくの技術が宙に浮いていました!

ウニ畜養技術があるけれど、ウニの需要のないノルウェー ×ウニは大量にいるけれど、畜養の技術がない南三陸(歌津)の画期的で革新的なイノベーションのはじまりです!

 

南三陸の身入りの少ないウニも、いったん捕獲して「畜養(餌を与えて養殖)」すれば、身が入ったウニができ、磯焼け対策になることはわかっていましたが、

畜養するには、ウニのためのエサ=莫大な海藻が必要で、事業化が難しい。

完全養殖用の飼料はあっても、途中から捕獲→畜養に適した専用の飼料はなく、開発は進んでいなかったそうです。

海にまく飼料なので、水に溶けにくく、ウニにとって食べやすく(ウニには五角形の口がある)、水の中で腐ったり、カビが生えたりせず、ロスが出ないよう、など

様々な問題をクリアしないといけません。

 

2012年から両者を結び付けたベンチャー投資会社「カストンインターナショナル」に、飼料会社「日本農産工業」も協力して、

出会いから4年後の2016年6月、

「宮城・南三陸ウニ畜養プロジェクト」調印記念イベントが開かれたのでした。

 

磯焼けの解消
質のよいウニの生産

アワビの育成

藻場の回復でCO2も貯留

など「一石四鳥」と言われていますが、

このモデルが進めば、世界中の「磯焼け」問題を解決することができます。

また、中国のウニ市場の急拡大で、これまらますます安定したウニ供給が求められる中、南三陸(東北)が、

ウニ産地で世界の水産課題解決と生産のリーダーになることができます。

 

これが畜養したウニです。キラキラ~~~

肝心なお味は~~~

ウニの甘みととろみ~まったり~~。

 

味も品質もなんの遜色もなく、くさみも全くありません。

歌津の高橋さんは「さっっぱりし過ぎる」ぐらいで飼料でもうちょっと工夫していくとおっしゃいましたが、

わたしのような素人が食べた感じでは、とってもおいしくて上品なウニでした。

 

しかもこの「畜養ウニ」、9月から畜養すると、年末~1月に身が詰まって食べごろとなります。

三陸の天然ウニの解禁は6月なので、時期がずれるため、既存の市場をおびやかさず、

新しいマーケットを創り出すことができます。

 

では、このウニ、一体いつから市場に出回りますか?

はい~。それがですねえ…

この「解禁」問題がありまして、

「畜養」といえども、禁漁シーズンに海から水揚げすることはまさに「禁漁」に当たるのだそう。

法律って難しいですね~。

これをクリアするために、高橋さんたちは海で畜養したウニをいったん

別の水槽に移してから出荷するのか…

その水槽設備や移し替えのコストはどうなるのか…

 

「磯焼け」を守って地域経済もうるおうはずの活動が、

国の法律によって阻まれるとは…

なにかもっと特例措置や試験的に求めてもらう方法はないのでしょうか~。

 

また動きがありましたらお伝えしたいと思います。

 

 

左から、

ノフィマ国立研究機関 ニック・ロビンソン博士

アーリン・リーメスタ駐日ノルウェー王国大使

カストンインターナショナル (ノルウェー) 社 会長

カストン社長でウニノミックス企画本部長 武田ブライアン剛さん

日本農産工業さん

南三陸歌津支所の高橋栄樹さん

ほかにも協力は

水産飼料東北営業所

See3(オーストラリア) 工場

Lung Ching Refigeration Works(台湾)

ヤマタ丸七水産

MSC 海洋管理協議会

ムンクの絵画が見守る中での調印記念イベントでした。

 

ノルウェーと日本の協力が生んだ磯焼け対策 

南三陸のウニが市場に出回るには、まだいろいろな漁の解禁問題等

クリアにしなければならないことがありますが

期待しています。

 

水産の国、日本とノルウェー!仲良くして技術提携しあうことが

実は地球上のすべての海と水産物を守ることにつながる一石3鳥にも一石4鳥にもなる画期的な連携のスタートです。

この地球の海はひとつですからね~~~。

 

復興水産販路回復アドバイザーをやっています^^

東北の水産加工の課題があれば教えてください。

わたくしが調査へまいります^^

費用はかかりません。

どうぞお気軽に

復興水産販路回復促進センターまでご連絡お待ちします。

 

 

追伸。。。

「水産」という大きな共通点を持つ南三陸とノルウェーの結びつきは、

これからのほかの地域の課題解決にも大きなヒントがあると思いました。

 

いわゆる磯焼けという「里海」問題を聞きながら、

農山村の抱える「里山」問題とほとんど同じじゃないかと思いました。

ウニを食害として、悪者にしてしまうのか。

里山に増えたシカ・イノシシ・クマを「鳥獣害」として忌み嫌うのか。

そのままでだめなら上手に飼養しておいしいもの(資源)に変えることができるのが人に与えられた叡智です。

 

自然と人里(街)の間には、その緩衝地帯とも呼べる「里山(里海)暮らし」が本来ありました。

生き物と人との関係もほどよく狩猟をしたり、山菜や海藻をとったり、

その自然の恵みを人がうまく活かすことで生態系が守られてきたのです。

小さな家族が紡いできた一次産業の営みが破綻するということは、

まだまだ他にもこうした問題の発生をはらんでいるということです。

グローバル化のよさは、小さなひとつひとつの村が、よそと同じに平準化することではありません。

ローカルとローカルの特徴(課題)があるもの同士、テーマごとにサミットができる、

世界で同じ課題を抱える者同士が、連携して解決する時代です。

ちょっとまじめになってすみません~。

でも南三陸の小さな港町歌津とノルウェーという水産大国が連携する意味は、こういう時代の到来の象徴であると感じました。

 

 

 

 

ベジアナ@農林水産アナ・あゆ