カズオ・イシグロ 『わたしを離さないで』を読んだ。
怖かった。
こんな怖い話読んだことない。
昨晩読み終えて今、もう一度本のページを開くのさえこわい。
あの世界に呼び戻されたら抜け出せなくなりそうで。ものすごい物語。凍り付きそうな世界観。
どれぐらいすごいかというと、本を閉じた後しばらく放心状態になり、頭の中で、ものすごい世界観ものすごい世界観ものすごい世界観と3度唱えても足りないぐらい強烈なインパクトに意識ぜんぶが支配された。
読み終えて、感想文を書かずにはいられなくなった。
かといっておいそれと誰にもおすすめしたりとてもできない。
3分の1のおよそ100ページぐらい読み進めないと、どういう状況だか見えてこない。(なのでここでもキーワードはあえて書きません)
しばらくは言葉遣いの意味がわからないので思わず、巻末の翻訳者の経歴を確認したほどだ。(この人日本語大丈夫かなと思って。後に不可解な使い方の言葉の意味が明かされる。
失礼ながら翻訳・土屋政雄さんはイシグロ作品を複数訳す有能な方らしい。)
奇妙で奇怪で狂気じみた世界の、薄ら寒くなるような恐ろしい話の中で、2回声を出して泣いた。
誰かが誰かを思う愛のところだった。やさしさだった。あのテープを探す場面は今思い出してもおんおん泣ける。
あれが2人にとって人生でいちばん幸せな気分だったのかな。

村上春樹さんが最も注目する現代作家というカズオ・イシグロ。
初めて思いたって読んだ。350ページ、眠くても止められず、一気に読んだ。
冷徹で残酷ですこしも愉快ではないけれど、冒頭から終わりまで一貫して淡々とおだやかで静かである。
品があるといってもよい。
人はどのような人生も静かに受け止めて生きて(死んで)いくと言っているみたいだ。
SFやミステリアスと分類する評もある。
インタビューで著者は「全体にわたって、奇怪さが絶えず少し存在するようにしました」と語る。
イギリス最高の文学賞ブッカー賞受賞。ロンドン在住。

参考までに以下のインタビューを貼付けますが、
インタビューを読んでも「わたしを離さないで」の作品世界はまったく見えてきません。

月刊文学界 2006年8月号
カズオ・イシグロ/Kazuo Ishiguro『わたしを離さないで』そして村上春樹のこと
 より抜粋

イシグロ: 本全体にわたって、奇怪さが絶えず少し存在するようにしましたが、読者を刺激しようとしたわけではありません。読者に、子供と同じ立場に立ってほしかったのです。

大人の読者にも同じ奇怪さや恐怖のプロセスを経験してほしかったのです。子供や若い読者が経験するのと同じようなことが、徐々に分かっていく過程です。どの局面でも、子供が知る以上に読者に知って欲しくなかったのです。だから、ミステリー感がつきまとうのです。決して読者を刺激しようとはしていません。

昔から興味をそそられるのは、人間が自分たちに与えられた運命をどれほど受け入れてしまうか、ということです。こういう極端なケースを例に挙げましたが、歴史をみても、いろいろな国の市民はずっと…

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)/早川書房
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久しぶりの恐怖体験でしたーーー。
本を読んで、世の中がこわいと思ったというか世界観が変わったのは、
マイケル・ギルモアの「心臓を貫かれて」以来でしょうか。
2005年の出版なので有名な本であり、映画化などもされている。

英米でベストセラーとなったカズオ・イシグロの最新長篇『わたしを離さないで』は、発売後ただちに《タイム》誌のオールタイムベスト100(1923~2005年発表の作品が対象)に選ばれる快挙を成し遂げただけでなく、《ニューヨーク・タイムズ》《パプリッシャーズ・ウィークリ ー》《シアトル・タイムズ》《グローブ・アンド・メール》の主要紙誌においても2005年のベストブックの一冊に選定された。

また、ヤングアダルトの読者に読ませたいアレックス賞を受賞したほか、ブッカー賞、全米批評家協会賞、コモンウェルス賞、BBCブッククラブ賞の最終候補に もなるなど、2005年に発売された英語圏の小説でもっとも話題になった一冊。

あまり強烈すぎて決しておすすめします!とは言えませんが、どんな人なら読めばよいか強いてあげるならば、例えば
村上春樹さんが好きな人ですかね~。
カズオ・イシグロも村上さんも双方が注目の現代作家として認めあい、交流もある。
生命倫理、医療、福祉、生命科学、生と死、人権、いろいろキーワードはあるけれど、そういうふうに分野を決めつけられない気もする。
とにかくカズオ・イシグロの他の本をさっそく探しに行ってきまーす。

ベジアナ@あゆ