福岡で局アナをしているトモダチが昨日東京にやってきた。


Kちゃんはキース・ジャレット(Keith Jarrett )という即興で知られる

ピアニストの公演を聴きに来たのであった。


ワタシはその偉大なピアニストのことを知らず

どんなライブだった?と尋ねると、

Kちゃんは「観客のマナーがねぇ・・・」開口一番そう言うのであった。


ライブの感想の答えとして、

一番にマナーの話をするというのは、おもしろいなと思った。それでそれで?


キースジャレットさんは

ものすごく神経質(繊細というべきか)なんだと。

日本の良いところとして、

「交通機関が正確に運行する点」を挙げるほど、

「きっちり」した人らしい。


で、19時開演といえば、19時きっかりに演奏が始まったそうだ。


その場の空気を感じながら即興で演奏するのだが

盛り上がって来たとき、客席からいきなりケイタイが鳴った!


キース
ファンのKちゃんはそのとき、

ああ、ケイタイの音がキースの気に障らなければよいのだけど・・・

と案じていたそうな。

(その池袋の立派なホールではケイタイは圏外にならなかった)


ま、キースは弾き続けたらしい。

ゴキゲンを保ったピアニストの演奏が中盤にさしかかる頃、

ゴホンッゴホンッ。時々客席の数人が咳をするのが聞こえた。


  (テレビのクラシックコンサートの中継なんかでも、

   曲と曲の間に人がこぞって「咳」をするのをよく耳にする。

   静まりかえった大きな会場に響き渡る、あれを思い出した。)


その咳があちこちから何度か繰り返され、そして止まなかった時、

キースはぴたりと演奏をやめた。


シ~ン・・・


ピアノの前のイスから立ちあがり、
客席に向かって言った。


「エブリバディ!今、この時間に咳をしろ!」


客席はほぼ静まり返る中、
慌てて咳をする人も、

冗談かと受け止めて笑う声もあったそうである。


(おいおい冗談じゃないよ~ホントにこの人帰っちゃうんだから~)

・・・Kちゃんは気が気じゃなかったらしい。


キースは続けた。


「ワタシは伝統のないアメリカという国から来た。

ニホンにはすばらしい伝統文化があり、

あなた方はそれを理解する国で生まれ育った人達だ。

ワタシはものすごく集中して演奏をしている。

聴く方のあなたたちも集中できないだろうか。」


キースの守りたかったのは静寂、と同時に日本の和の心、であった。


そしてキースは

前半に比べると後半、ずいぶん難解な調べを奏でて

演奏を終えた。


鍵盤の右端の低い音を延々と続けたりして

Kちゃんはこりゃ難しい曲調になってるな~と感じたが

それはそれで全体的には聴き応えのあるすばらしい演奏だったそうだ。


アンコールの拍手は鳴りやまなかった。

キースは9回も舞台と袖を出たり入ったりした。

そのうち4回は演奏を披露してくれた。


Kちゃん曰く「後半は観客もすごいがんばったんだよ~。」

何千人もいるホールが一丸となって固唾をのんで聴き入ったらしかった。


ピアノの即興演奏を聴きに行ったことは今までなかったけれど

この話の現場に立ち会いたかったとも思った。

同時に、お金を払って聴きに行ったお客さんも相当疲れただろうな~。

キースさんはもっと疲れただろうからお客もそれぐらいやって当然、

と言われればそれまでではあるが。


さて。濃密な演奏を満喫したKちゃんは今日成田からNYに旅立ちました。

ジャズライブをハシゴするのである。

この人は仕事の傍らジャズシンガーでもあり、

前回は5泊で10箇所のライブを1人で聴きに回ったらしい。


「こういうのはお一人様に限るよ~。」


自分がいいと思うものをこころゆくまで楽しむには相応のエネルギーが

必要である。

ということなのかもしれないな。


※この話の後、さっそく有名なケルンコンサートのCDを買った。

繊細で美しいその中の曲を聴くと

知らなかった私もキースに対する考え方がずいぶん変わった。

人生まで変わったかどうかはわからない。


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※キース公演の話はKちゃんの話をワタシの理解で書いたので

 一部記憶違いがあるかもしれません。ですが、ま、公演後、客の1人が

居酒屋でトモダチにそういう会話をしたということでご容赦ください。