昔ながらの方法で美肌を保っているおばあちゃんを取材した。
長唄の師匠をしているKさん御年93歳!
口調も足腰も達者な江戸っ子で、
毎朝欠かさず卵白でパックとマッサージしているのだ。
ちなみに黄身は丸飲み。
パック姿を撮影しようとお願いすると、
「今朝もうやっちゃったのよね」とおっしゃる。
うーん。そこで私が「こんなカンジですかぁ~」と
慣れない手つきで頬やおでこに卵白をなで付けると、
Kさんの表情が険しくなった。
どうやらやり方が違うのだ。
「Kさん、お手本見せて頂けませんか~」
すると師匠はおもむろに卵白を手に取って勢いつけて顔にたたき付け、
力任せに顔中をなで回し始めた。
それはもうとにかくべチャべチャのズルズルに
両手で卵白の付いた顔をこすりまくったのであった。
あまりの潔さに私は圧倒されて言葉を失い、
ディレクターは声を押し殺して笑い、
カメラマンはニヤけながら師匠の顔にズームしてい行った。
当の本人はそんな周囲の様子には目もくれず、
ひたすら顔をこすり続けた。(ちょっとした地獄絵図)
実はその前に訪ねた化粧品メーカーで教わったのは、
「肌はデリケートですからやさしく扱って下さい。
決してこすってはイケマセン。」と言うことだった。
卵白マッサージと洗顔を終えるとおばあちゃんは、
日本酒に柚子の皮を漬け込んだ手作り化粧水をバシバシ付け、
すっきりしたお顔になった。
そこにはその年齢なりの美しさがあった。
ワタシが「そうですか~決まったやり方があるんだ~」と
Kさんの方法を真似すると、
「そりゃあアンタこっちは100年近くやってるからね」
とおっしゃった。
Kさんは長い間(ずいぶん長い間!)このやり方で元気に
美しさを保ってきたのだ。
化粧品メーカーの教えにもっともな根拠があるとは言え、
この人には必要ないんだな。
美顔方法にも色々あるけれど93年の凄みには及ばない。
(かと言って真似する勇気、ありませんけど~。)