このような事はこの夜一回限りだった。
この話は、親にも家族にも友人にもしたことはない。 私の秘密の冒険の一コマだから。
しかし、あれは一体なんだったのだろう?
校庭門扉の鍵を持っていたのはなんで?
私は夢を見たのか???
嫌、夢なんかなどではない。
それとも、あれは幽霊だったのか?
いや、それも違う。幽霊と生きている人間の違いは流石に直感的にわかる!
あれは、生きている人間だった。
昭和40年代後半の出来事。
小学5年生の女子には忘れられない恐怖体験だった。
・・・・・・・・・
あれから月日は流れ、
長男の大学受験の時に私も一緒について行った東京。
二泊三日の受験を終え、岐路に着く為に息子と二人で歩いていた上野公園。
行き交う人々の中、右翼らしき大勢の人々が、お揃いの濃紺の服を着て、夕方の公園内を延々と行進の練習をしている光景に遭遇した
禁止規制はかからないのか、彼らは堂々と悪びれることなく行進練習をしていた。
人々も彼らを気にすることもなく平気で歩いている
それを見た時、子ども時代の夜中の校庭で起きた一コマの映像が一気に蘇ってきた。
おおおお!
まさしくあの時の人たちにそっくりやんけ
上野の右翼らしき人たちの行進は、どこかだれ気味で怖くもなんともなかった(笑)
むしろのんびりすらしていた。
あの夜のようなきびきびした、異様な緊張感はなかった。
もしかしたら、あれは右翼さんたちの練習だったのか?
夜中だから、近所の人々を起こさないように、あんなにも静かにすばやい動きをしていたのか?
昭和時代の右翼さんたちのほうが緊張感があったのか?
秘密のルートで、校庭門扉の鍵を入手できていたのか?
などと、上野公園でぐるぐる思いをめぐらした
子ども時代の恐怖の不思議体験が、一気に色あせてしまったようにも思えた瞬間だったが、昭和40年代はまだ夜中の校庭というのは右翼の人達の行進練習として有り得る話だったのだろうか・・・
それにしては時間が短かったようにも思うし…
そういう意味では 未だにあれは謎
おわり